菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ジャルジャルのしじゃら』(2015年12月9日)

2015年10月7日から12月23日にかけて12週連続でリリースされる、ジャルジャル自選コント集の第十弾。

 

遅刻を繰り返している新入社員に説教していた先輩が怒鳴り声をあげると、何故か即座に怒鳴り返されてしまって戸惑う『怒鳴ったらバン!』。部長にケータイを貸す素振りを見せておきながら手元のネギを渡すというボケに打って出ると、そのボケに部長がノリ始めて……『ネギ』。フィリピンの山奥から来てもらった数学の先生は喋りにクセがあるので、その説明がフィリピン語を理解している教授でもよく聞き取れない『フィリピンの数学者』。とある若手人気俳優のデビューシングルを手掛ける凄い作曲家の先生が説明する曲が、「酒」だの「盛り塩」だの、イメージとそぐわないものばかり『盛り塩』。家に帰ってきた息子を待ち構えていた父親からは揺るぎない緊張感がみなぎっていた……!『父の圧』。眠たそうに運転しているドライバーに「運転を替わろうか?」と持ち掛けてきた助手席の友人は、なんと運転席のハンドルを引っこ抜いて助手席に引っ付けてしまい……『夢であってくれ』。以上、六本のコントが収録されている。

 

『怒鳴ったらバン!』は不条理色の強いコント。説教から逃れるための行為……と捉えることも出来るが、ちょっと独特の後味が奇妙な違和感を残している。対して『ネギ』は、ボケにノリ続けることで、そのボケが日常化してしまう行程を丁寧に描いたシンプルなコントだ。いつ、どのタイミングで、ツッコミが解放されるのか、そのタイミングを期待しながら観ていた。『フィリピンの数学者』はよりシンプルで分かりやすい。全てが手探りの状態で繰り返される理解と裏切りのバカバカしさ。それは漫才のグルーヴに似ている。『盛り塩』は徹底して人の話を聞かない年配と、なかなか話に割り込めない若者の、ジェネレーションギャップ的なモノを取り入れたコント……に見えなくもない。年齢関係無く、盲目的に自分の意見を押し通してしまう人はいるけどね。『父の圧』はタイトル通りのコント。タイトルを確認した後でコントを観ると「なるほど……!」と納得できるほどに、そのままの内容となっている。個人的には本作で一番好きかも。『夢であってくれ』はシンプルなバカコント。どんどんムチャクチャになっていくにつれて、ほのかに高まっていく緊張感の果てにあるオチのユルさがたまらない。

 

これらのコントに加えて、特典映像として『フィリピンの数学者』に登場した大学教授とフィリピンの数学者の日々を追ったドキュメンタリー「教育革命 ~本場の数学を求めて~」を収録。これまでのフェイクドキュメンタリー映像に比べて、やや地味な味付けの一品となっている。福徳扮するフィリピンの数学者の裸が映し出されるところをサービスショットとして捉えられるのであれば、幾らか楽しめるかもしれないが。しかし今回、あの男がついにはっきりとカメラの前に姿を……! 一体、彼は何処へ向かったのか。

 


■本編【32分】

「怒鳴ったらバン!」「ネギ」「フィリピンの数学者」「盛り塩」「父の圧」「夢であってくれ」

 

■特典映像【12分】

「教育革命 ~本場の数学を求めて~」