菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『うしろシティ第6回単独ライブ「すごいじゃん」』(2015年9月16日)

松竹芸能所属のお笑いコンビ、うしろシティが2015年6月から7月にかけて東京・大阪・名古屋・福岡の四都市で開催した単独ライブより、6月28日・東京公演の模様を収録。回を増すごとに開催地の範囲を拡大させ、着実にライブ芸人としての道を歩んでいる彼ら。その表現力もしっかりと鍛え上げられているようで、今年開催された『キングオブコント2015』ファイナリスト十組の中にも選出された。もしかしたら、ライブタイトルの「すごいじゃん」というのは、そんな自らの進化を客観的に捉えて付けられたのかもしれない。ちなみに、うしろシティはこれまでコンテンツリーグからDVDを発売していたが、本作の発売元はTBSラジオ&コミュニケーションズに替わっている。彼らがレギュラー出演しているTBSラジオの番組『デブッタンテ』からの繋がりなのだろうか。

以前にも書いたが、うしろシティのコントは丁度良い。オーソドックスではないがマニアックでもなく、難しすぎることはないが簡単すぎることもなく、アバンギャルドではないがコンサバティブでもない、観る者のコント欲に適度に応えてくれる塩梅が実に丁度良い。設定も普遍的で共感を覚えやすく、良い意味でテレビ的な笑いを作ることの出来るコンビだと思うのだが……多少の揺り戻しが起きているとはいえ、まだまだネタ番組が少ない昨今のテレビバラエティから浮き上がってくるのは、なかなか難しそうだ。『キングオブコント2015』で頑張って結果を残してもらいたい。

そんな彼らの丁度良い塩梅のコントが、本作でも多く演じられている。高校時代の友人が開催した個展を訪れてみると、まったく理解できない不思議な絵ばかりが展示されていて、それなのに感想をしつこく求められてしまう『個展』、古道具屋で時間を止めることが出来るという不思議な時計を見つけ、試しに使ってみたのだが、店主の老人が時計の力で止まっているのか素で止まっているのかが分からない『アンティークショップ』、注文した日替わり定食を食べようとするたびに大事な電話がかかってきて、なかなかお昼ご飯にありつけない刑事の苦悶を描いた『日替わり定食』、奥で誕生日会が催されているという家にやってきた宅配ピザだったが、あるやりとりをきっかけにプツリと賑わっていた声が途絶え……『宅配ピザ』などなど、シンプルなのに捻りが利いていて、どのネタも非常に面白い。

とりわけ印象に残っているのは『ファーストフードにて』と『悪魔』。

『ファーストフードにて』は、別々の高校に進学して会う機会がなくなってしまった金子とファーストフードで再会すると、中学を卒業してから2ヶ月しか経っていないのにモヒカン刈りになっていたというコント。ただ金子がモヒカン刈りになっているというだけなのに、どうしてこんなに面白いのか。金子が童顔だからというのもあるのだろうが、それにしても違和感が物凄い。その違和感をしばらく泳がせておくから、またたまらない。ツッコミを入れず、ごくごく当たり前にお互いの現状について会話を重ねていく日常のリアリティが、金子のモヒカンの存在感を更に色濃くしていく。そして、唐突に繰り出される指摘の一発! このタイミングが実に上手い。丁寧に並べられたドミノを一気に倒してしまうような爽快感のある瞬間だ。無論、ここで終わるわけではない。ここから更に、どうして金子がモヒカン刈りになったのか、その理由までしっかりと語られるのだが……詳細は本編で確認してもらいたい。

一方の『悪魔』は、儀式によって呼び出された悪魔が寿命を代償になんでも願いを叶えてやろうと語りかけてくるコントで……聞いたところによると、『キングオブコント2015』準決勝でこのネタが披露されたらしいので、これ以上の詳細は書かないことにする。果たして『キングオブコント2015』決勝で、このネタはどんな風に編集されているのだろうか……。

ちなみに、特典映像には、ライブの幕間映像を収録。マネージャーの提案をきっかけに、ちょっとシュールに身体を張っている二人の姿が映し出されている。面白いといえば面白いのだが、正直なところ、コントは熟練されて面白くなってきているのに、こういう幕間映像では変なとがり方をしているなあ……とも。まあ、それもまた味か。


■本編【73分】

「授業中」「個展」「私の席」「アンティークショップ」「職員室」「タイムスリップ」「日替わり定食」「宅配ピザ」「ファーストフードにて」「悪魔」「出会い」

■特典映像【12分】

「エピソードトーク1」「エピソードトーク2」「エピソードトーク3」

■音声特典

うしろシティの副音声解説

「小林賢太郎テレビ3」(2012年10月17日)

小林賢太郎テレビ 3 [Blu-ray]

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2011年8月24日にBSプレミアムで放送された『小林賢太郎テレビ3 ~ポツネンと日本語~』に未放送映像を追加した特別編集版を収録。コントユニット「ラーメンズ」の頭脳であり、自作の舞台を手掛ける劇作家であり、“ポツネン氏”に扮して一人きりのステージを繰り広げるパフォーマーでもある小林賢太郎表現者としての魅力が凝縮されている。演出を手掛けるのはNHKエンタープライズチーフディレクターの小澤寛。小澤氏はこれまでの『小林賢太郎テレビ』でも演出を担当している。

番組のサブタイトルにあるように、本作のテーマは「日本語」。二人の外国人が怪しげな日本語を声に出して勉強する姿を描いたコント『日本語学校』シリーズで注目を集めた小林にとっては、永遠の課題であるといえるだろう。時に日本語を意味から解き放ち、時に日本語を分解して新たな言葉を創作し、時に日本語のニュアンスだけを抽出してきた『日本語学校』のシステムは、今もなお、小林の日本語に対するアイデンティティとして根底に存在している。そんな彼が、改めて日本語と対峙したとき、どんな笑いが生まれるのか。
オープニングアクトは『学校でアナグラム』。“黒板消し”“そろばん”“文化祭”などのように、学校と関わりの深い道具や行事の名前の文字を並べ替えて、まったく別の意味の言葉に変えてしまうパフォーマンスだ。……と、この説明だけだと、なんだか難しくて面倒臭そうに感じられるかもしれないが、その結果として生み出された言葉がバカバカしくて、なかなか面白い。分かりやすくイラストで可視化されているのも嬉しいところ。続く『そういうことではない展』も、言葉を可視化したコントである。ただ、こちらは実際に使われている言い回しが、そのまま絵や物体などのアートとして具現化している。話の種、社長の器、貧乏くじ……だからなんだと思わなくもない。でも、だからこそ、良いのである。
その後も日本語をテーマにした映像が続く。壺となった小林が日本語の釈然としない表現に平然と切り込んでいく『思う壺』、ロバート秋山の『トカクカ』を彷彿とさせる『トツカク』(もちろん発表されたのはこっちの方が先)、神社の一角でひっそりと繰り広げられる紙芝居の顛末とは?『ムゴン』、全ての言動が擬音だけで表現されている時代劇『擬音侍 小野的兵衛』……と、実に興味深いラインナップとなっている。個人的には『のりしろ』がお気に入りだ。三つの異なるシチュエーションが、それぞれの状態を表すオノマトペ(「トコトコ」「カチカチ」「カンカン」など)で不思議なつながりをみせていく。小林は似たようなコントを以前にラーメンズでもやっていた(『モーフィング』『同音異義の交錯』)が、テレビならではの凝った舞台美術とシンプルで端的な構成に魅了されてしまった。オチも美しい。
……と、ここまで本作の内容を評価してきたが……この『小林賢太郎テレビ』というシリーズ全体にいえることだが、一般的にはあまり知られていない小林の実力を視聴者に知ってもらうためなのか、番組内で彼のことをやたらと持ち上げようとするきらいがある。それが、むしろ一般の視聴者を遠ざけているような気がしないでもないのだが、実際のところはどうなのだろう。例えば、既にそれなりの知名度を得ているバカリズムがメインの『番組バカリズム』のように、何の紹介も説明もなく、唐突に番組が始まったとしたら、どういう風に受け止められるのだろうか。一度、試してもらいたい。そういう何も知らない視聴者をアッと驚かせる仕掛けこそ、小林賢太郎の真骨頂だと思うので……。


■本編【63分】
「イントロダクション」「学校でアナグラム」「そういうことではない展」「ドキュメンタリー」「思う壺」「のりしろ」「トツカク」「言葉ポーカー」「ムゴン」「ワインレストランにあるまじき風景」「思う壺」「擬音侍 小野的兵衛」「御存知!擬音侍 小野的兵衛」「お題コント制作ドキュメンタリー」「お題コント「双方向テレビ」」「学校でアナグラム

「番組バカリズム2」(2015年7月22日)

番組バカリズム2 [DVD]

番組バカリズム2 [DVD]

 

 2014年7月18日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム2』を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えて撮り下ろされた新作映像も披露された、とても充実した内容となっている。演出は前作と同様、『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)などの前作にも参加していたクリエイターたちが今回もスタッフとして名を連ねている。

本作も見どころが多い。

トーク番組で起こったビミョーな事態を描いた『歌う人生劇場』では、角田晃広東京03)演じる人生の渋みを噛み締めた熟年男性の前に、とある理由で登場するでんぱ組.incのギャップがとにかく面白い。バカリズムが作詞、前山田健一ヒャダイン)が作曲を手掛けた無駄にクオリティの高いオリジナルソングは必聴だ。一方、警察署の取調室を舞台に、とある事件の目撃者と彼から証言を得ようとする刑事のやりとりをイラストで表現した『目撃者』では、豊本明長東京03)が醸し出す独特の雰囲気が笑いに大きく貢献している。何を考えているのか分からない、得体のしれない者同士の不条理で無意味な会話が無感情で進行していく様が素晴らしい。

過去のライブからは、試合の後に開かれた陸上選手の謝罪会見の理由とは?『はやすぎた男』(from『バカリズムライブ「運命」』)、話し合いが終わった後の会議室に残った同僚の女性社員にとあるお願いを切り出す『見よ 勇者は帰りぬ』(from『バカリズムライブ「SPORTS」』)、定番として確固たる地位を築き上げている昔話『浦島太郎』の理不尽に対してバカリズムが苦言を呈する『昔話に関する案』(from「バカリズム案7」)の三本を再演。残念なことに、前作にはあった番組オリジナルの改変は見られない……が、バカリズム自身も「“裏”の代表作といっても過言ではない」と語る『見よ 勇者は帰りぬ』をNHKの番組に持ってきたという事実を噛み締め、素直にその恐るべき決断を讃えたいと思う。とにかくオチが……。

しかし、やっぱり見てもらいたいのは、俳優をゲストに迎えたショートドラマ。とりわけ、浅野忠信演じる記憶を失ってしまった男がこれまでの人生で関わってきた様々な人たちと面会することで自分が何者なのかを思い出そうとする『川崎貴俊』……も、非常に良かったのだが、私のオススメは夏帆が出演している『好き?』だ。舞台はとある駐車場。車中で恋人たちが次に何処へ行こうかと話しているのだが、彼氏(バカリズム)は携帯ゲームに夢中で彼女(夏帆)の話をまともに聞こうとしない。そんな彼氏の反応に腹を立てた彼女は、ゲームを取り上げて「私のことが好きじゃないんだ!」「じゃあ、好き? 私のこと好き?」と痴話喧嘩にありがちなことを求める。そこで、前向きではないながらも、彼女の質問に答えようとしたとき、彼氏の目はとある光景にくぎ付けになる……。

日常で遭遇するかもしれない可能性がある危機的状況の現実味を帯びた緊張感と、それを打破する衝撃的な展開が素晴らしい。この台本はオークラが担当。これはこれでいい仕事をしている。だが、この『好き?』という作品は、夏帆の演技が無ければ成り立たない。あのシーンの夏帆の演技を見てもらいたい。あの、口角を上げながら○○を××した挙句△△している夏帆を見てもらいたい。むしろ、夏帆の演技を見るためだけに、本作を鑑賞してもらいたいとすら思う。それほどに、いい表情をしているので……。

ちなみに、2015年3月に放送された『番組バカリズム3』のDVDは11月25日にリリース予定。私は放送内容を確認していないが、若林正恭(オードリー)や菜々緒をゲストに迎えたコントを繰り広げているという。楽しみだ。


■本編【59分】
「はやすぎた男」「歌う人生劇場」「ろうそくの火を消せそうな発音の人間関係ベスト3」「好き?」「見よ 勇者は帰りぬ」「目撃者」「川崎貴俊」「昔話に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説  

『シソンヌライブ[quatre(キャトル)]』(2015年9月2日)

「想像してみよう、いろんな気持ち」。テレビやラジオでたびたび流されるコマーシャルに、何を感じただろう。初めて目にしたとき、耳にしたときには、何かを感じたような気がする。だが、何度も何度も消費しているうちに、それはちょっとした雑音のように、或いは、日常にはびこる騒音のように、なんでもない背景として処理されるようになってしまった。しかし、改めて考えてみると、私たちはあまりにも多くの存在について、想像せずに生きてしまってはいないだろうか。

「強いって、どんな気持ち? なあ! 強いって、どんな気持ち?」

2015年5月から6月にかけて恵比寿・エコー劇場で、同年6月に石川教育会館で開催された『シソンヌライブ[quatre]』は、こんな問い掛けで幕を開ける。夕暮れ時の教室、机の上にノートと教科書を広げて自主勉強をしている堀内(じろう)の前にやってきた、クラスメートの長谷川の台詞だ。堀内は「長谷川くん、強いヤツに聞いてもらえるかな……」と突っぱねるが、長谷川は話を止めない。「アメリカ人って、どんな気持ち?」。話にうんざりした堀内は、とうとう我慢できなくなって、きっと長谷川を睨みつけて、唖然とする。そこに血まみれの長谷川が立っていたからだ。

センセーションなオープニングコント『聞かないでくれよ』が示すように、本作は全編を通して不穏な空気に包まれている。共同生活を始めるにあたって、彼氏が新しく買ってきたドライヤーを手にした彼女がコードを縛り上げて「しつけ」を始める『しつけ』。高校生の時はオシャレでイケていた弟が、大学で科学研究部に入部して喋り方が気持ち悪くなったことを兄が指摘する『大学デビュー』。路上で「汚い動物」について歌っている娘に動物病院を経営している父親が苦言を呈する『お父さんと美和子』。私を含めた観客は、彼ら彼女らの言動のズレを常識と照らし合わせて、無邪気に笑う。しかし、ふとした瞬間に気付かされる。果たして、これはどちらが正しいのか。もしかしたら、間違っているように見える方にも確固たる思想があって、彼らを冷めた目線で批判している方が、その本質を理解していないだけなのではないか……?

「そうか……五話目が楽しみだよ」

それらのすれ違いを経たからこそ、終盤を飾る『自由研究』『先生と野村くん』が美しい一筋の光となる。自由研究の課題発表の中にさりげなく(?)メッセージを組み込んだ野村くんと、そんな彼の気持ちを一身に受け止めた先生は、確かに気持ちを理解し合ったはずだ。思想や信念のぶつかり合いで見ず知らずの他人を言葉の暴力で殴り殴られがちな今の時代に、彼らがこういったコントを繰り広げる意味について考えてみようとも思ったが……それもまた、私の一方的な押しつけがましい感情でしかないのかもしれないと思い、止めた。

「想像して、共有しよう!」

あの日の夕焼けは、彼らにどう映ったのだろう。


■本編【82分】

「聞かないでくれよ」「しつけ」「俺の袋」「大学デビュー」「ことわれない女」「人間してる」「お父さんと美和子」「企画会議」「自由研究」「先生と野村くん」

■特典映像【26分】

「シソンヌライブ[quatre]メイキング」「シソンヌ金沢プチ観光」

「番組バカリズム」(2014年4月23日)

番組バカリズム [DVD]

番組バカリズム [DVD]

 

2013年7月14日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム』を収録。過去の単独ライブで披露されたコント・パフォーマンスにアレンジを加えて再演したり、番組のためのオリジナルソングを制作して合唱団に歌わせたり、従来のバラエティに独自のエッセンスを加えたVTRを撮影したりするなど、芸人・バカリズムの才能が存分に詰め込まれている。演出は『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)など、バカリズムと縁深いクリエイターたちが軒並み参加している。

本編は一時間に満たないが、見どころはいっぱいだ。

例えば、飯塚悟志東京03)とのユニットコント『僕らのドライブ』。飯塚からの誘いでドライブに付き合わされたバカリズムが、その計画性の無さについて順を追って批判し始める。お互いのクセの強いところが上手く台本に反映されていて、とても面白かった。二人の日常を切り取ったかのようなリアリティ。最初はバカリズムが飯塚をガンガン責め立てていたのに、ちょっとしたきっかけで立場が逆転してしまう展開もスリリング!

真木よう子をゲストに迎えたVTRコント『ポリンコピン』も良かった。真木から「実は私はポリンコピンなの」と告白されたバカリズム。しかし、ポリンコピンが何なのか分からないので詳細を訊ねるのだが、話を聞けば聞くほど答えにたどり着けない……というナンセンスな味わいがたまらない。コントを演じているとは思えないほどにシリアスな空気を纏った真木の演技も見事。最高の棒読みを見せる場面は是非とも見ていただきたい。

それから忘れてはならないのが『言葉に関する案』。バカリズムが自作の「いろは歌」を披露しているのだが、とてもクオリティが高いのに、どうしようもなくバカバカしい内容になっていて、感心したい気持ちと笑いたい気持ちがぶつかり合ってしまう。結果、笑っているんだけれど。ネタ自体は『バカリズム案6』で既に披露されたものだが、ちゃんとテレビ用に新作が用意されているので、見逃さないようにしてもらいたい。

だが、この作品の一番の見どころ(もとい「聞きどころ」)は、バカリズムによる音声解説だろう。普段の単独ライブDVDでは何も語らないバカリズムが、ネタの背景や撮影の裏話をそれなりにちゃんと語っている。個人的には『ポリンコピン』の解説が面白かった。真木よう子に出演を正式に依頼したタイミング、撮影の裏話、『ポリンコピン』というコントの出自に至るまで、非常に興味深い話が飛び出していた。まさか、あの人のあの行動が、アドリブだったとは……。

バカリズムという芸人を知るに最適な一枚。ただ、富山県の人にだけは、絶対に見せないでください。


■本編【59分】
「番組バカリズムのうた」「イケなくて…」「ボクと富山県」「休日バカリズム」「僕らのドライブ」「ワンルームだった場合 住みにくい形の都道府県ベスト3」「ポリンコピン」「心霊バカリズム」「言葉に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説

『第16回東京03単独公演「あるがままの君でいないで」』(2014年12月24日)

キングオブコント2009』王者、東京03が2014年5月から8月にかけて全国ツアーを展開した単独公演より、9月に東京は赤坂・草月ホールで開催された追加公演の模様を収録。ちょうど、某アニメ映画のテーマソングが流行っていた時期に行われた単独ライブだったので、このタイトルはてっきり狙ったものだと思い込んでいたのだが、聞いたところによると、どうも偶然似てしまったのだそうだ。運がいいのか、悪いのか。

これまで人間関係の微妙なズレを笑いへと昇華してきた彼らだが、今回は全体的にコメディの度合いが強くなっている。仕事相手に土下座した先輩の飯塚に失望したという後輩の豊本に飯塚の同僚である角田が実体験を元に土下座の必要性を説いたことで余計に話をこじらせてしまう『先輩の土下座』、妻子ある上司と女性社員が職場でラブロマンスを繰り広げているところに部下の角田がうっかり帰ってきてしまい……『終業後』、日本写真界の巨匠が周囲の人間から気を遣われる日々にウンザリして喫煙室で出会った若者と気の置けないコミュニケーションを図ろうとする『巨匠の憂鬱』など、シンプルでバカバカしいコントが揃っている。角田・豊本のボケ勢がけっこうな量のアドリブを盛り込んでいるところが、また嬉しい。角田に急な仕事が入ったために旅行が中止になってしまったことを素直に受け入れた飯塚が理不尽に怒られてしまう『旅の打ち合わせ』における、旅行が中止になってしまったことに対して怒りが収まらない豊本を角田がじっくりと鑑賞するくだりには大笑いさせられた。アドリブだからこそ許される、本当に何の意味もないシーン!

ただ、三人で立ち上げた会社の内装のイメージをそれぞれが意見を出し合って固めていく『新オフィス』は、ちょっと心に刺さるものがあった。飯塚と豊本はイメージがある程度は固まっているので二人の話はトントン拍子にまとまっていくのに対して、角田はイメージが別方向に向いているため、どんな意見を出しても受け入れてもらえない……その状況が、もう……。三人で会話しているときに、控えめなヤツが陥ってしまいがちな状況の理不尽な空気を上手く表現していた。上手く表現していたからこそ……刺さったなあ……。そんな哀しいシチュエーションを笑いに変えてしまう角田の人間力に改めて感心させられたコントでもある。哀しさに全力で立ち向かえる角田こそ、我らの光ぞ!(ハゲという意味ではない)

これだけ大笑いさせてくれた本作だが、締めくくりとなる長尺コント『センスなき故に』はちょっと引っ掛かるものがあった。居酒屋でお互いのセンスについて話し合っている三人がセンスある行動を選択し続けた結果、思わぬ騒動に巻き込まれていく様子を描いたネタなのだが、とにかく暗転は多いし、舞台上でのやりとりじゃなくて画像で説明してしまうシーンが多いし、ライブというよりも出来の悪いFLASH動画を見させられているような感覚に。副音声解説によると「ちゃんとしたコントを追加公演でやることが既に決まっていたので、ちょっと違うのをやろうということになった」らしいのだが、それにしても……。実験的なコントを否定するわけではないが、実際のライブでそれなりにお金を払って鑑賞している身としては(※岡山公演を鑑賞済)、肩透かし……という程度では収まり切れない気持ちにはなった。また、前回の公演で披露された長尺コントが、素晴らしい出来だっただけに……そこは頼むよ、オークラ氏……挑戦するなら長尺じゃなくて短いコントの中でやってくれよ……。

特典映像には、その追加公演で披露されたというコント『マカオの夜は大混乱』を収録。実際のライブでは佐藤隆太片桐仁ラーメンズ)・内村光良が日替わりゲストとして招かれており、そのうち佐藤隆太バージョンと片桐仁バージョンの映像が本作に収められている。……聞いたところによると、ウッチャンバージョンの映像も残されてはいるのだとか……海外の動画サイトに流出されないものか……。マカオ旅行の最終日、カジノでお金を散財した三人は部屋に戻ろうとするのだが、三人の同行者が上から目線でグイグイと絡んできた挙句「金を貸してくれ」と言い始めて……。こちらも本編と同様にコメディ色の強いコントで、佐藤隆太バージョンも片桐仁バージョンも非常に面白かったのだが……ウッチャン……ウッチャンが演じる同行者はどうなっていたのか……。

これだけ充実した内容なだけに、長尺コントだけがどうしても浮き彫りに。オークラのナンセンスな色合いが全開のコントだったから、あれはあれで色々と出し切った結果なんだろうけど、うーん……。


■本編【107分】

「先輩の土下座」「新オフィス」「終業後」「ドキュメンタリー番組」「旅の打ち合わせ」「巨匠の憂鬱」「センスなき故に」

■特典映像【53分】

「特別公演 マカオの夜は大混乱 佐藤隆太Ver.」

「特別公演 マカオの夜は大混乱 片桐仁ラーメンズ)Ver.」

■音声特典

三人による副音声解説

バナナマン×東京03『HANDMADE WORKS』(2013年8月7日)

バナナマン×東京03『handmade works live』 [DVD]バナナマン×東京03『handmade works live』 [DVD]
(2013/08/07)
バナナマン東京03

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2013年に結成20周年を迎えたバナナマンと、同じく2013年に結成10周年を迎えた東京03が、その素晴らしき偶然を祝してユニットコントライブを開催する。……そんな話を耳にしたとき、私はそのスペシャルな響きに打ち震えた。片や、バラエティ番組で圧倒的な人気を博しつつも年に1度の単独ライブは決して欠かさない、東京コント界の至宝。片や、ライブで全国ツアーを展開することが通例となっている、トリオコントのホームランバッター。そんな二組がタッグを組んで、コントライブを開催する。これはもはや“事件”と言っても過言ではない。

しかし、いざ蓋を開けてみると、そこには普段と変わらない彼らの姿があった。真っ白に染められたステージ、より記号的に洗練された小道具、プロジェクションマッピングを駆使した映像パフォーマンスなどなど……二組が合体してコントを演じることの特別さを物語る演出は随所に施されていたが、バナナマン東京03も、まるで通常の単独ライブを演じているかのように、ごく淡々と、それでいて確実に笑いを獲っていた。その様は、一見すると手抜きの様にも見えたが、実のところそうではない。

特別な何かが行われる時は、普段は決してやらないようなことに不用意に挑戦してしまいがちだ。その結果、例え失敗してしまったとしても、それはあくまでも特別なのだから……と、観客のナマ温かい視線でもって許されてしまうことも少なくない。だが、彼らはそれをやらなかった。彼らはバナナマン東京03のコントが自然に融合するように切磋琢磨し、決して違和感が生じない笑いの世界を生み出すことに徹したのである。これぞまさに職人芸、いぶし銀の味わいだ。

“手作り”であることの必要性について考察したオープニングコント『工房』、友情を確かめ合っていた仲間たちが良からぬ人物の参入によって良からぬ状況へと陥っていく様子を交わし合った手紙の文面だけで表現した『手紙』、養鶏場のプリンを作ろうと考えた日村がその試作品を社員たちに試食してもらうも問題点ばかりが浮き彫りになってしまう『日村養鶏場』など、どのネタも非常に面白い。ただ、お互いがお互いを尊重し合った結果なのか、両者の魅力の一つである「シニカルな笑い」が控え目になっていることが、少しばかり残念でもある。東京03のコントでよく目にする日常風景の世界にバナナマンが加わったら、どんな笑いになっていたのか……観たかったなあ。

特別な年に結成された特別なユニットの特別じゃない普遍的な笑い。その根底には、彼らのコントに対する愛と情熱が静かに燃え上がっている。これから10年後の2023年、結成30周年を迎えたバナナマンと結成20周年を迎えた東京03は、このユニットを再結成してくれるのだろうか。彼らがコントを愛し続けていてくれたなら、きっと。

あ、ところでタカちゃんって何してるひ(以下自粛)


■本編【130分】

「工房」「手紙」「何でショー」「日村養鶏場」「手作りアニメ 手作り野郎 handmade workers」「タカちゃんとバンと3人」「ストリート」「逃げ癖のある男」「ゲーム」「工房」