菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

久しぶりの友の顔

芸人のライブというのは通常、施設内で行われることが多い。シティボーイズのライブも、それまではそうだったわけで。屋外では日比谷野外音楽堂、屋内では渋谷公会堂での公演を行ってきた。しかし、なんと今回はテントを建てての公演である。おおっ。シティボーイズ史上初、特設テント公演だ! ゲストも豪華で、毎年おなじみの中村有志に加え、かつてはレギュラー出演していたいとうせいこうと、女優の銀粉蝶が参加している。ここでやはり目立つのは、いとうせいこうの存在。『ラ ハッスル きのこショー』以来の参加であり、ファンの人たち(僕を含む)は浮き足立って仕方なし。そんなわけで、非常に楽しい気持ちで鑑賞に望んだわけですが……どうでしょ。
とりあえずの感想としては、まあ安心して見られる出来だなあ、という感じ。先の公演である『だめな人の前をメザシを持って移動中』『メンタル三兄弟の恋』にも見せ始めていた、良い味を出している細川徹演出が、今回も良い感じになっていたと思う。ただ、久しぶりにいとうせいこうが参加しているということを意識したようなコントが多かった気も。特に、最終的に全てが収束するという流れは、かつていとうせいこうが三度ほど参加していた三木聡時代の脚本を意識したものだった様に思う。おかげで、細川徹らしさが薄れていたような気も。
続いて出演陣について。大竹まことは前回同様、少し壊れている。現実にも存在しうる、何処か危うい匂いを醸し出しているキャラクターを演じており、なんとなくきたろう・斉木に感化され始めているのではないかとさえ思わせられる。その一方で、ツッコミ役としての勢いが衰えてきているような。『丈夫な足場』で見せたマシンガンツッコミも、今は昔か。その点、きたろうは変わらない。相も変わらず、きたろうである。ただ、以前ほどの的外れが失われてきたような気も。年を取ると人間は自然とボケていくものだが、きたろうは少しずつマトモになっていくのだろうか。斉木しげるも同様。以前よりも真人間を演じる回数が多くなったように思う。普通の斉木しげるも嫌いではないが、狂気性を含んだ斉木しげるのほうが好きだから、ちょっと残念に思う。そんななか、“第四のシティボーイズ”と呼ばれている中村有志が絶好調。真面目キャラも、女性キャラも、筋肉キャラも、その全てが絶好調。細川演出との相性の良さが目立っていた中村有志だが、ここにきて一つの絶頂期に達したようである。良い。
その一方で、今ひとつ実力が発揮されていなかったように思うのがいとうせいこう。彼らしい、シティボーイズのふやけた面々をピシッとさせる超現実的なツッコミが繰り出されていたように思うが、それ以外のポジションが見出せていなかった様な気が。ツッコミ役としてのいとう氏も好きだけども、半狂乱なボケを繰り出すいとう氏も好きなため、そこが少し残念だったように思います。そして、今回が初参加の銀粉蝶。ここは五人のサポート役を見事に演じていたように思う。前回の公演ではのろま会が受け持っていたポジションを、一人で見事にやりきっていた。流石は女優といったところ。
結局のところ、全体的にいとうせいこうの存在に、おんぶにだっこだった様な気がする。決して面白くない公演ではなかったが、過去の公演で彼らが見せ付けたものには及ばない……と考えるのは、贅沢な話だろうか。しかし前回『メンタル三兄弟の恋』の出来を考えると、今回はもっと良いものを打ち出してもらいたかったというのが、正直な感想である。次回の公演には、期待しても良いだろうかね。良いだろうか、ねー?

「一瞬を生かす」「一家殺人事件」「人間大砲」「待っている柏木さん」「原子力発電イメージアップ運動アンケート」「生分かりに触れる」「サドルバー」「風は振り返らない」「もう一回、一瞬を生かす」