菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

解散『ぜろ』(チャイルドマシーン)

ぜろ [DVD]

ぜろ [DVD]

 2004年12月、あるコンビが密やかに解散した。
 コンビの名前はチャイルドマシーン岡山県出身樅野太紀京都府出身山本吉貴によって結成された、お笑いコンビだ。
 チャイルドマシーンといえば、まず読み物を使った漫才が思い出される。漫才の最中に樅野がポケットからノートを取り出して、その内容を朗読し、山本がそのノートに対してツッコミを入れるというスタイルの漫才だ。このスタイル自体はチャイルドマシーンの専売特許ではなく、他の漫才師も頻繁に使用していたが、彼らは特にこのスタイルの漫才を演じることが多かった。事実、若手芸人の登竜門的番組「爆笑オンエアバトル」で、彼らは十一本のネタを披露(しかも、全てオンエア)しているのだが、そのうち七本のネタがこのスタイルによるものだった。
 順風満帆とまでは言えないにしても、地方から東京進出を果たした初の移籍芸人となり、「爆笑オンエアバトル」で常連になり、全国的な知名度も上がり……芸人として着々と、その芸を鍛錬し続けていたはずだった。それなのに、彼らは2004年の年末に解散を発表した。そこにどういう理由があったのかは、未だに分からない。……本作は解散発表後に発売された、彼らの単独ライブDVD『ぜろ』である。
 本作はチャイルドマシーンにとって最初で最後の作品になるが、その内容は非常にホーム的なものになっていた。樅野の独特の言語感覚が炸裂する『補習』、ゲストととして樅野の父親が登場する『オヤコメン』、樅野のダークな部分がじわっと滲み出る『ザマミ!!〜存在確認〜』など、それなりに面白い作品が続いている。しかし、それらはあくまでも「それなりに面白い」出来であり、チャイルドマシーンの花道を飾る作品になってはいない。
 つまり、本作は単純に単独ライブとしての様相は呈している“だけ”なのである。仮にも、「爆笑オンエアバトル」では二度のチャンピオン大会に出場し、「M-1グランプリ」の準決勝にも二度進出しているコンビにおける最初で最後の作品が、この扱いというのはやや寂しいものがある。
 ファンはこれで納得できるかもしれないが、チャイルドマシーンというコンビの功績を映像に残すという意味では、この作品は不十分な出来だったように思う。確かに、最後をファン向けの公演にすることは、決して悪いことではない。ただ、チャイルドマシーンというコンビを温かく見守ってきた人間としては、どうも物足りない。本当に、これが最後で良かったのか? これを最後に、コンビの関係を「ぜろ」にして良かったのか?
 そんなことを、今更ながらに思ってしまった。

・本編(112分)
「ぜろ 〜誕生〜」「補習」「万引きGメン和子」「彼氏専門学校」「年賀状」「オヤコメン」「ザマミ!!〜存在確認〜」「ぜろ 〜友情〜」
・特典映像(15分)
「フラッシュあかんねん」「あの人は今…」