そしてペーソスだけが残った『男の生活』
- 出版社/メーカー: 株式会社GPミュージアムソフト
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: DVD
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また、板尾創路は芸人としてのみではなく、俳優としても大いに活躍している。そのジャンルは『魁!!クロマティ高校 THE★MOVIE』『大日本人』『ピューと吹く!ジャガー』の様なコメディ映画に留まらず、『ジョゼと虎と魚たち』『妖怪大戦争』『着信アリ Final』などの話題作にも出演し、その存在感をアピールし続けている。このことから、板尾氏が芸人としてのみではなく、俳優としても大いに評価されていることがお分かりいただけるのではないだろうか。
本作『男の生活』は、板尾創路が主演を務めているサラリーマン不条理コメディ作品である。中崎タツヤの漫画『男の生活』を原作としたショートショート形式になっており、全18編のストーリーが収録されている。近年『THE3名様』『やさぐれパンダ』『ラビパパ』など、ギャグ漫画がショートショート形式でDVD化される傾向にあるが、本作も同様の路線の上にあると言える。
結論から言おう。この作品は、つまらない。
例えば、一本目の作品。会社のオフィスでサラリーマンが、互いのセックスの年齢の守備範囲について話し合っている。そこへ主人公のホンダが現れ、話に加わる。ホンダは「それは、やっちゃったかどうかじゃなくて、可能かってことだろ?」と念を置いた上で、「……ヤギかヒツジまでなら、OKだな。ニワトリはちょっと……」と、こういう話が何本も続くのだ。たまにクスッとくるものもあるが、その打率は限りなく低い。
一方、役者陣にはまったく不満が無かった。主演である板尾創路の演技はとにかく非人間的であり、氏の持つ不思議な雰囲気をそれなりに活用した演技が出来ていた。脇を固める木下ほうか・三浦アキフミの演技も普通ではなく、ジワッと狂気が滲み出てくる感じが妙にコミカルだった。しかし、やはり芸歴の長さか、係長を演じる中村有志のコント的にアクが強い演技力は、特に面白かった(別に、僕がシティボーイズ好きだから贔屓目に見ている、というわけではないと思う)。
ここまでしっかりとした役者陣を揃えているにもかかわらず、本作はほとんど笑えない……が、ここで一つ発想の転換をしてみよう。これが、安易に笑いを狙った作品ではなかったとしたら。これが、実はギャグの後にジワッと沁みてくるペーソスをテーマにした作品だとしたら。そう考えてみれば、この作品は面白い(かもしれない)。笑いじゃないんだ! 哀愁こそ、この作品の見るべき点なのだ!