菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

今回、辛口です。『ジラフ』(麒麟)

ジラフ [DVD]

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 麒麟の単独ライブを観る。……なんだか、退屈だった。
 別に、面白くないというわけではない。M-1グランプリの決勝戦に常連として出演するほどの実力者なので、下手な外しかたはしない。最低でも、そこそこに笑えるネタを仕込んでいる。ただ、それゆえに退屈だ。
 単独ライブというのは、芸人が最も自由に出来る場である。どれほど面白いことをやっても、どれほど面白くないことをやっても、自由。客がどう評価しようと、とりあえずは自分のやりたいことをやれる。それが単独ライブという空間なのだ。そこを憩いの場として使うか、挑戦場として使うか、パフォーマンス場として使うか……全て、芸人次第だ。で、その単独ライブという空間を、麒麟はホーム的な意味で使用している。それがどうも、良くない。
 麒麟というコンビは、このライブが行われた時点で結成八年目に当たり、その芸歴で言えば、まだまだ若手のコンビだ。その若手のコンビが、守りに入って良いのだろうか。いや、良いわけがない。まだまだ若手なのだから、もっとムチャクチャなことにチャレンジすれば良いのだ。そのムチャクチャの中に、また活路を見出すことだって出来る筈だ。あのタカアンドトシの「欧米か!」スタイルだって、彼らがコンビ八年目の頃に見出したスタイルだということからも、そのことがよく分かる。
 それなのに、今回の単独ライブで彼らがやっていることと言えば、掃除機を操るヒーロー川島が田村の命を助けようとしたり、二人で和気藹々とドミノを倒す権利を取り合ったり(これはチュートリアルも似たようなことやってた)、某エンタの神様を皮肉たっぷりにパロったり……面白いけど、なんだか片手間にやっているかのような、物足りなさを感じるものばかりだ。それで良いのか。そんな感じで良いのか。
 その中で、妙に高い完成度を見せていたのは、本編のコントではなく、『筆尻竜王戦』という幕間VTRだった。川島と田村が、尻取り形式で面白いことを掛け軸に書き、それで互いを笑わせようという内容で、“企画”として非常に面白かった。オーソドックスだけれど、その演出手法は「ダイナマイト関西」並の可能性を感じさせられた。でも、……それじゃダメなんだなあ……。「スキャンダル」と「ホームレス中学生」のままじゃ、ダメなんだよなあ……。
 ちなみに、このライブでは一本だけ漫才が披露されている。この年のM-1の結果を知っている身としては、それほど面白くないモノを想像していたが……なかなかどうして、悪くないネタだった。川島がカッコつけたことを言い、田村がそれをツッコんでいくスタイル自体はベタではあったが、これまでの麒麟が見せていた「川島のセリフと田村の動き」とは、また一歩出たネタになっており、活路の様なモノが見えていた。でも、準決勝落ち……。

・本編(115分)
「オープニング」「コント「山小屋」」「筆尻竜王戦」「コント「ドミノ」」「「ホームレス中学生」使用方法」「コント「看守と囚人」」「スキャンダル芸人 川島明」「コント「祭り」」「麒麟の「エ○タの神様」」「漫才」「エンディング」
・特典映像(45分)
「麒麟の「エ○タの神様」ボツキャラクター集」「やなせたかし先生へのイラスト依頼電話」「コント「看守と囚人」NGKバージョン」「ジョー&プラチナの突撃商店街」
・副音声
野性爆弾川島邦裕・ロッシー)/田村 兄・姉

 ちなみに、今回最も面白いなー……と思ったのは、ダブル川島による副音声だった。過激なスパイスだよなあ、ホント。