菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『第6回 東京03単独ライブ 無駄に哀愁のある背中』

 何をやっている。ふざけやがって。どこに目ん玉つけてやがる。お前らがグズグズしている間に、東京03はどんどん高い場所に行こうとしているぞ。彼らのことを、テレビはいつまで放置しているつもりなんだ。いや、むしろ放置されているからこそ、彼らはここまで高い場所に行くことに成功したと言えるのかもしれない。第四回単独『夏下手男』、第五回単独『傘買って雨上がる』、そして今回の第六回単独『無駄に哀愁のある背中』……彼らが年に一度行っている単独ライブの完成度は、僕らが生あくびをしながらテレビを見ている間に、着実に上がっている。嫌になるなあ、本当。
 以前から、人間同士の曖昧なやりとりによって生じるイザコザを笑いにしてきた東京03その世界は極端なほどに“日常的”であり、普通の人間ならば見逃してしまいそうな“小さなストレス”をこれでもかと掘り下げるコント世界は、真の意味で「人間ドラマ」だと言えるのかもしれない。
 例えば、『メシの誘い』というコントがある。バイト終わりの三人のうち、豊本が飯塚をメシに誘う。これから何処に食べに行くかの話をしつつ、バイト先を出ようとすると、角田が一言「それさあ、俺も誘われてるの?」。豊本は誘っているわけではなかったが、飯塚は誘っているつもりだった。この時のボケは、ひたすら「誘われていたかいなかったかをハッキリさせたい卑屈な角田」である。でも、角田のボケは人間が日常の中で見逃しているだろう“小さなストレス”である為か、不思議と共感を得てしまう。この“ボケの持つ不思議な共感”こそ、今の東京03の笑いの根っことなっている。
 他のコントも同様だ。『企画会議』で調子に乗って上司の頭をポカポカ叩いてしまう飯塚にも、『陰口』で上司の陰口を当人に聞かれてしまったことを開き直ってしまう角田にも、『みみっちぃ』で半年前に豊本に貸した500円についてぐずぐず思っている角田にも、総じて見られる小市民的な感覚に、不思議と共感してしまう。そこに、非日常的な立場を取り続ける豊本の存在と、端的で鋭い飯塚のツッコミが、上手く絡み合う。ああ、面白い。
 結成五年目、東京03。これまでの実績があるとはいえ、まだ結成五年目でありながら、このクオリティの高さである。恐ろしいトリオだ。テレビ局の皆さん、どうぞ彼らのことを放ったらかしのままにしておいていただきたい。彼らがこれから何処まで伸びるのか、見ていたいから。お願いしたい。

・本編(90分)
<キャスト紹介>「企画会議」<主題歌『無駄に哀愁ハワイアン』>「メシの誘い」「陰口」「大丈夫です」<…その後>「みみっちぃ」「ビニール傘」「秋祭り」<エンディングテーマ『哀愁が生まれたよ』>

 最後に余談だけれども。今回のエンディングテーマが、あからさまに某たまのパロディだったのは、後輩のピーナッツパンの件を皮肉っているのだろうか?