菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『つゆ男』

福田転球×平田敦子÷千葉雅子「つゆ男」 [DVD]

福田転球×平田敦子÷千葉雅子「つゆ男」 [DVD]

 突然だが、僕は泥臭い舞台が好きではない。泥臭い……という表現が正しいのかどうかは分からないが、なんというか、そういうイメージなのだ。僕はこの表現を、例えば吉本新喜劇に対して用いる。商店街の人々が集まって、一つの問題を解決する、人情が絡んだベタなドラマ……という感じ。これが、僕には泥臭く感じるのだ。昔の吉本新喜劇は好きだったのだが、キャラクターの濃い人たちがいなくなった今、どうも興味が……と、話が外れてきた。戻そう。
 福田転球平田敦子による二人芝居『つゆ男』も、そういった泥臭い舞台ではないかと危惧していた。なにせ、舞台が港町である。おまけに、主人公は海女の夫であり、ストーリーはその海女とのドラマを描いたものである。……ああ、凄く泥臭そう。おまけに発売レーベルは、吉本興業傘下のYOSHIMOTO WORKSだ。まったく期待できない。期待できないが、通りすがったサイトの「面白かった!」という感想文に絆されて、ついつい手を出してしまった。ああ、迂闊。しかし……これが意外と、面白かったなあ。
 話の展開は、まあ予想通り。福田転球演じる男が、平田敦子演じる様々な人に出会って、海女である妻の知られざる姿を知っていくことになる……というもの。最終的に妻とどうなるかも、完全に予想通りだった。
 ただ、そのプロセスが面白い。舞台的と言うんだろうか。飛び出してくるボケが、いちいち捻くれて笑える。某焼酎のコマーシャルにある「にじゅーまるー!」を、「にじゅーばぶー!」と下らない感じに言い替えたり。スターバックスでスモールじゃなくてグランデを頼んだのに、何故か味が違うかの様な対応を取ってみたり。爆笑するほどではないけれど、なんとなくニヤっとしてしまうボケが幾つか見られた。
 ただ、この芝居の本当に面白いのは、出演者の出している空気なんじゃないかなあ、と。福田転球の曇天の様な胡散臭さと、平田敦子の太陽の様な明るさがもたらすギャップのおかしさ。本当、ユニットとしての良さを感じるなあ。
 爆笑できるかどうかでいうと、そこまで笑える舞台ではなかったと思うけれど、確かに、この舞台は「面白かった!」。第一弾公演『肉女』(なんつータイトルだ)もDVD化してくれないかなあ。

・本編(104分)
「海女小屋」「俺と豊子」「俺の兄ちゃん」「藤木陽子さんと」「俺たちの日々」「四郎先輩と」「ラブレターズ」「調停員田坂さんと」「俺の海」「俺の夢」
・特典映像(7分)
「福田転球平田敦子千葉雅子による振り返りトーク」

 うーん、文章ではこの舞台の面白みが伝えきれない……。