菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発』復習編

マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 [DVD]マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 [DVD]
(2008/10/29)
マシンガンズ

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2005年にリリースされた若手芸人のネタDVDに、『まめ vol.2』という作品がある。“お笑い新世代15組が集結!”と銘打った作品で、ひぐち君が召使を演じる前の髭男爵や、春日がボケ役に転身する前のオードリー、岩井ジョニ男がチョビ髭を生やす前のイワイガワのネタなどが収録されている。その面々の中に、さりげなくマシンガンズが名前を連ねている。

当時のマシンガンズのネタは、進行をジャマするほどにハイテンションな暴走を繰り広げる滝沢と、日常の理不尽に対して過剰なツッコミを爆発させる西堀の主張が、ゴッチャゴチャに絡み合った漫才。とてもじゃないが見られたものではない。こんな漫才を繰り広げていたコンビが、たった二年で現在のスタイルを確立することになるなんて、誰が想像できただろうか。……たぶん、誰にも想像できなかったんじゃないかなあ。

マシンガンズの最大の特徴と言えば、兎にも角にも「ダブルボヤキ漫才」である。通常のボヤキ漫才は、世間の小さなズレに対して愚痴をこぼし続ける“ボヤキ役”と、そのボヤキを抑えているように見せる“静止役”によって構成されている。ボヤキの間に静止の瞬間を挟むことで、間合いを測ることが出来るからだ。ところが、マシンガンズの漫才には“静止役”が存在しない。最初のボヤキが次なるボヤキに繋がり、更に別のボヤキが生じたかと思えば、ユニゾンツッコミでボヤキの大爆発を起こす。コンビ名の通り、マシンガンの様にボヤキが撃ち放たれているのである。

そんなマシンガンズがボヤキのターゲットとしているのは、主に「身の回りの一般人」である。居酒屋で騒いでいる若者、合コンで下らない冗談を飛ばしている女、砂浜でナンパに興じている青年。ありきたりな日常の中で目にしがちなハズれた行動を提示し、それらを一刀両断するのが、マシンガンズの芸風である。そのネタの内容は、何処となく「あるあるネタ」に似ている。思えば、日常のズレに対して疑問を呈する「ボヤキ漫才」と、日常の何気ない事物を再認識させる「あるあるネタ」は、その根底が近いのかもしれない。『エンタの神様』にも呼ばれるよなあ、そりゃ。

しかしながら、最近のマシンガンズは、そのボヤキの対象を「マシンガンズを批判する視聴者」に絞ることが多く、元来のボヤキ漫才とは違った、単なる自虐漫才になってしまっている感もある。それはそれで、確かに面白い。面白いのだが、どうもカンニングのことを思い出してしまうのが、なんだか妙に落ち着かない。コンビを結成してから十年以上が経過しての大ヒット、守りに入ってしまう気持ちは分からないでもないが、ここはもっと攻めていってもらいたい。事務所の先輩の有吉弘行の様になれとは言わないにしても。

間もなく、『エンタの味方!』後期に披露してきた漫才を収録した『マシンガンズ in エンタの味方! 爆笑ネタ10連発 ファイナル』をリリースする予定の彼ら。そこでは、もう少し攻めの姿勢になった、彼らのボヤキ漫才を観ることができるのだろうか。楽しみなような、不安なような。うーん……やっぱり楽しみ。