菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『兵動大樹のおしゃべり大好き。3』

兵動大樹のおしゃべり大好き。3 [DVD]兵動大樹のおしゃべり大好き。3 [DVD]
(2009/08/19)
兵動大樹

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日常の中の、さりげない事件。

矢野・兵動のネタ書きを担当している兵動大樹は、日常の中の思わぬ事件に遭遇するプロフェッショナルだ。もちろん、自主的に事件に遭遇するわけじゃない。そういう事件に巡り合える才能を持っているのである。そして兵動さんには、そういった事件を、とてもコミカルに調理する才能もある。ネタ集めの才能と、ネタまとめの才能。ベシャリ職人に必要な二つの才能を、兵動さんは兼ね備えているのである。全国の漫談家は羨ましくて仕方ないに違いない。想像。

そんな兵動さんが、沖縄に行くことになった。島唄、砂浜、サンサンと照りつける陽の光。あの、沖縄である。仕事ではない。プライベートだ。仕事が増えてきた兵動さん、どうにかして三日ばかり休みを貰うことができたので、家族や後輩の元芸人家族を引き連れて、沖縄に行くことになった。行くことになったと一言で言うのは簡単だが、実際に行くとなると話は簡単じゃない。前日から必要な荷物をまとめ、当日にはレンタカーを借りて水族館に出向き、二日目には海でスキューバーダイビング、三日目に家に帰る。省略するのは簡単だが、それを実行するのは簡単じゃない。

まず、出かけの準備。前日に準備を始めるが、準備中に昔購入したCDを発見し、ついつい再生してしまう。この話だけで、数分。準備の話だけで、数分。ただ、昔のCDを発見して、懐かしくなって昔のことを思い出したという話で、兵動さんは数分持たせる。続いて当日、レンタカーを借りると決めたのは良いが、レンタカー屋までバスで移動しなくちゃならない。しかも、バスは他のレンタカーの客も乗せなくちゃならないので、乗車してからもしばらく待たされる。待ってみて、やってきたのは半ズボンにソックスという服装のサラリーマン集団。それらが兵動さんの周りに座り込む。同じく半ズボンの兵動さんは、そのサラリーマン集団とすね毛をこすり合わせ、「こういう日常を忘れたいから、沖縄に来たのに…」と落としてみせる。

今回の『兵動大樹のおしゃべり大好き。3』には、兵動さんが沖縄旅行で体験した事を、ノンストップで一時間半ばかり語り下ろしている様子が収録されている。一つのテーマで一時間半の話となると、途中で飽きてしまってもおかしくないところだが、兵動さんの漫談は話の流れが美しく、まるでダレない、飽きさせない。これまでブツ切りにされていた漫談の本当の凄さを、今回の作品では見せつけられたように思う。

なお、特典映像には、兵動さんが今回のライブで披露した沖縄話の舞台となった場所に、再び出向いている姿が映し出されている。面白さという点では、前作『兵動大樹のおしゃべり大好き。2』に比べると少し弱いが、完成された漫談の素晴らしさを見るという点では、最高の作。ただ、ライブの最後部分がカットされているので、そこには不満が残った。そこに大した話が無かったとても、ちゃんと最後まで収録してもらいたかったなあ……。


・本編(92分)

『兵動家の沖縄旅行編』

・特典映像(27分)

兵動大樹 沖縄の還る! ジンベイちゃんもあの人もみんな出てくるさ~SP」