菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ラストベストロッチ』

ロッチ ラストベストロッチ [DVD]ロッチ ラストベストロッチ [DVD]
(2009/08/21)
ロッチ

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ロッチのベストコントを収録した『ラストベストロッチ』を観賞した。タイトルには“ラスト”と掲げられているが、別にこれが最後のベストライブだというわけではなく、ただ単に「今、見せられるベストネタはすべて見せた」という、現時点でのラストだという意味なのだそうだ。相変わらず、真面目に考えているのか考えていないのか、よく分からないことをするコンビである。

本編の収録時間は50分。お笑いのDVDとしては、ちょっと短いかもしれない。その収録時間の中で披露されているコントは、全部で11本。多い。オープニング・エンディングの時間をカットすると、一本に対する収録時間はかなり短くなる。実際に鑑賞してみて、全体的にかなり短いコントが続いている印象を受けた。彼らから本格的なコント師としてのカリスマ性を感じられないのは、こういうネタの短さが影響しているのかもしれない。

そんなロッチのコントは、人間の性をコミカルに描き出している……ということは、前作「バナナチェリー」の感想の時に書いた。それは今作でも変わらない。

自転車で日本一周に挑戦中の若者が、その自転車を盗まれてしまったために他人の自転車を盗もうとする(『自転車日本一周少年』)。釣りに詳しくない若者に釣りの作法を指南しようとするおっさんの言うことが、何故か次々に裏目に出てしまう。それでも、おっさんは指南を止めない(『釣りのおっさん』)。二十枚の福引券を持って、福引に臨む青年。でも、ハズレのポケットティッシュばっかり引いてしまう。そのうち、福引所の係の人間も、またティッシュを引くんだろうという目で青年を見るようになる。それでも、一抹の希望に期待して、青年はティッシュを引き続ける(『福引』)。

ロッチのコントが描き出しているのは、そんな人間の性が根底にある笑いだ。だから僕たちは、彼らのコントに爆笑しつつも、その情けない姿に少なからず同情してしまう。おかしくも、なんだか哀しい人間模様。それがロッチのコントなのである。とはいえ、これは誰が演じてみせても成立するというものではないだろう。二人が、現在の地位を獲得するまでに経験してきた数々の苦労が、長い時間をかけて笑いとしての形に成ったからこそ、彼らのコントは笑えるのである。

長きに渡る低空飛行から、徐々に徐々に高みを目指し始められる位置まで上昇してきたロッチ。キングオブコントの決勝戦に進出することまで決定し、今まさに脂が乗っているコント師の一組となった彼らの明日は、どうなる?


・本編(50分)

『UFO』『自転車日本一少年』『カツ丼』『釣りのおっさん』『砂漠』『巨乳かメガネか』『路上詩人(取り調べver.)』『十文字アキラ』『福引』『ドッキリ』『こんにちは根岸』

・特典映像(28分)

「おはようございます根岸vs十文字アキラ」

「ロッチコカド釣りに挑戦」

・副音声

「ロッチによる全編副音声コメンタリー」