菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『よゐこと一緒にコントライヴ ~カッちゃんテッちゃん千秋ちゃん。ついでに来たのがTKO~』

よゐこと一緒にコントライヴ ~カッちゃんテッちゃん千秋ちゃん。ついでに来たのがTKO~ [DVD]よゐこと一緒にコントライヴ ~カッちゃんテッちゃん千秋ちゃん。ついでに来たのがTKO~ [DVD]
(2010/02/24)
よゐこ

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よゐこと一緒にコントライヴ ~カッちゃんテッちゃん千秋ちゃん。ついでに来たのがTKO~』を観た。よゐこのコントに勝俣州和・千秋・出川哲朗・TKOの五名が客演する、というコンセプトの合同ライブを収録した作品である。披露されているコントの大半は、過去によゐこがライブで披露してきた古いネタばかり。つまり、コント師としてのよゐこが培ってきたコントの数々を、タレントとしてのよゐこの人脈によって集められた人々が演じているというわけだ……と、考えてみると、なかなか興味深い。そうでなくとも、日頃はテレビを中心に活動している人々が舞台に上がる、ただそれだけでも興味深い。とにもかくにも、興味は深まるばかりである。

通常、ユニットコントといえば、それぞれ違った個性を持つ者同士のぶつかり合いによって生み出される化学反応に期待が寄せられるものだ。例えば、バナナマンおぎやはぎによって結成された“宇田川フリーコースターズ”、エレキコミック片桐仁ラーメンズ)によって結成された“エレ片”、椿鬼奴くまだまさしといった個性派によって結成された“キュートン”などは、そんな期待に応えるかのような化学反応を生み出してきた。そして、今回の作品にも、同様の化学反応を期待していたのだが、今回はあくまでもよゐこのソロライブという名目であったためか、客演による演技は非常によゐこのコントに忠実なものばかりであった。

そんな中、自己主張の強い“演技”を見せていたのが、出川哲朗である。出川は今回、よゐこの代表的なコントの一つ『キン肉マンのマネージャー』に出演した。このコントは、試合前にキン肉マンのマネージャーがマスクを忘れてきてしまったことが発覚し、キン肉マンに延々と説教されるというもの。通常ならば、キン肉マンの役を濱口が、マネージャーの役を有野が演じているのだが、今回はキン肉マンを出川が、キン肉マンのマネージャーをよゐこの二人が先輩マネージャーと後輩マネージャーとして演じている。

元のコントがそうであったように、今回の特別なコントにおいても、有野マネージャーは失礼な態度を取り続ける。それに対し、出川キン肉マンは怒りを隠さない。徹底的に怒りの態度を表し続け、気付けばそれは出川本来の天然を浮き彫りにしていく。そんな出川の天然を、よゐこの二人は反省の態度を見せているフリをしながら、どんどんイジリ倒す。それはまさに、テレビで何度も観てきた、よゐこによる出川イジリそのものであった。どこまでが台本でどこからがアドリブなのかも分からない三人による怒涛のやりとりは、コント本来の面白さを超越し、単なる“出川イジリ“として昇華していったのである。というか、単に出川をイジリたかっただけか君ら。

あと、個人的に、TKOのコント師としての技術力の高さには、些か驚かされた。木本のツッコミも木下のボケも、バラエティ番組ではそれほど活かされていないように思うが、こうして台本の存在する舞台の上で披露されると、やはりその技術は卓越されている。キングオブコント2008決勝進出は伊達ではないのだと、改めて考えさせられる演技だった(木下のコント師としての演技力の高さは、最後の集団コント『葬儀屋』では、少しばかりジャマになってしまっていた気もするが……)。

ジャケット写真が修学旅行を模していることが意味しているように、今作はとにかく皆で楽しくライブをやっているという、ただそれだけの作品に仕上がっていた。それ故に、よゐこのコント本来の面白さを楽しみたいという人には、不満の残る内容になっていたといえるだろう。こういう作品もたまには楽しくていいのだが、次回はきっちりとしたコントも観たいような気もする。次回作に期待。


・本編(123分)

「オープニング」「主任」「ゾンビ」「キン肉マンのマネージャー」「銃社会200X」「葬儀屋」「エンディング」

・特典映像(50分)

「リハーサル風景」「本番終了後 打ち上げ」「出川哲朗のイイ話」