菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ザ・プラン9『ジンジャーエールはない! ~ネタツアー~』

ジンジャーエールはない!~ネタツアー~[DVD]ジンジャーエールはない!~ネタツアー~[DVD]
(2010/08/25)
ザ・プラン9なだぎ武

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ザ・プラン9は2001年に結成された多人数お笑いユニットだ。メンバーはお~い!久馬、なだぎ武ヤナギブソン浅越ゴエの四人だ。彼らはそれぞれまったく違ったコンビとして活動していたが、それぞれがそれぞれの理由により解散。当初は久馬と浅越、それから現在はユニットを脱退して個人で活動している鈴木つかさの三人によって結成され、後になだぎ、ギブソンが加わり、五人組となった。関西のお笑い事情に詳しくない人のために分かりやすく説明すると、要するにロックンロールも叫ばなければロックンロールコントもやらない超新塾だと考えてもらって構わない。構うけど。その後、2008年に鈴木つかさが脱退し、現在の形となった。脱退の理由は「方向性の違い」。ロックバンドみたいな理由だが、やっぱりロックンロールコントはやらない。ちなみに、浅越と超新塾DRAGONタカヤマはかつてコンビだったという。……まあ、割とどうでもいい話か。

M-1グランプリ決勝の舞台にも立ったことがあるザ・プラン9の本芸は、長尺の芝居だ。ストーリー性を含んでいるものの、笑わせるところはきちんと笑わせる舞台を、彼らは大事にしている。そう考えると、ザ・プラン9はお笑いユニットというよりも、喜劇集団と呼ぶべきなのかもしれない。漫才も出来るしコントも出来る喜劇集団。実に器用だ。ライバルはやはり、同じくよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の喜劇集団、後藤ひろひと率いるPiperなのだろうか。

そんな彼らも、たまにお芝居以外のライブを打つことがある。寸劇を披露する、いわゆるコントライブだ。かつて彼らは“The PLANET9 Earth”と銘打ったコントライブを行っていた。メンバーがそれぞれに惑星を担当し、地球上の出来事をコントとして演じる……という、なんだか中学生っぽいノリのことをやっていたのである。今となってはいい思い出……か? なお、鈴木つかさが脱退して四人組になってからは、このシステムは廃止。良かったね。四人になってからはごくフツーのコントライブを行っている。ちなみに鈴木が担当していた惑星は天王星。……そこは冥王星であってもらいたかった(冥王星は久馬が担当)。

今作『ジンジャーエールはない! ~ネタツアー~』は、ザ・プラン9が四人になってから行われた、二度目のコントライブを収録した作品だ。前作『ウルグアイから来た男』において、彼らは五人だった頃のコントライブで見せていたキャラクターやフォーマットを全て舞台から排除し、コント師として確かに新しい第一歩を踏み出していた。コントの出来もそこそこに良く、今後の展開に期待できる内容だった……筈なのだが。今回の公演、あまり芳しい印象を与えられるものではなかった。無論、それぞれの芸に定評のある彼らが演じるのだから、それなりには面白かったのだが。例えば、某有名ドラマのキャラクターをモデルにした登場人物たちが暴れまわる混沌さがたまらない『ひろしカンタービレ』、船渡しゲームをそのままコントに見立ててみた『そして船は行く』、テレビ番組に対するクレームに応える形で軟化する罰ゲームを皮肉った『罰』などのネタは、割と印象に残っているのも事実。

ただ、今回のコントライブ、全体的にちょっとバカ騒ぎの度合いが強すぎる様に感じた。そういうコントを否定するわけではない。バカなコントは好きだ。ただ、そういうタイプのコントばかりを集められても、こちらは胃もたれを起こすだけである。正直言うと、もうちょっと落ち着いたコントも見せてもらいたかった。特典映像に収録されている『新入りスパイ』(彼らが『爆笑レッドシアター』で披露していたネタ)が本編に収録されていたら、もっと全体が締まったと思うんだけどなあ。ちょっと残念。

……どうでもいいけど、今回妙に女装ネタが多かったような……。


・本編(122分)

「寝る人」「ひろしカンタービレ」「そして船は行く」「ショートなコント集」「OH!ギャル」「罰」「ジンジャーエールはない!」

・特典映像(9分)

「新入りスパイ」「職○見学」