菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

バカリズムライブ『SPORTS』

バカリズムライブ「SPORTS」 [DVD]バカリズムライブ「SPORTS」 [DVD]
(2012/03/21)
バカリズム

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2011年11月20日収録。ピン芸人になったバカリズムによる13枚目の単独作品。年に3回~4回のペースでライブを開催しているだけあって、そのDVD作品の数もタイヘンなことになっている。この調子だと、近いうちにラーメンズバナナマンのライブDVD作品数を超えてしまうのではないだろうか。その仕事の速さには、眼を見張らずにはいられない。それでいて、常にクオリティは下がっていないのだから、ほとほと感心させられる。仕事人はかくあるべきだろう。ツメのアカを煎じて飲みたくなる。ただ、本作で披露されているネタは、以前の公演で観たネタと比べると、少しばかりツメが甘い。

発想に関しては、相変わらずの面白さだ。コンビ時代の代表作『屋上』を彷彿とさせる日本語崩壊コント『選手宣誓』を初めとして、印籠を出すときに口にするお馴染みの言葉を出させてもらえずにやきもきする『心得る人々』、ある有名人と無名の一般人の身体が入れ替わってしまう『Change』、部屋中の物と挨拶を交わすたびにミュージカルが始める『汚はよう』など、どれもこれも実にバカバカしい。ただ、そのバカバカしさに、深みがまったく感じられない。まるで殆ど味付けせず丸焼きにされた素材を料理として出されたような気分である。それでも、それなりに食べられるし、美味い……のだが。『トツギーノ』の衝撃に面食らい、『総合刑事』の展開に笑い転げ、『正直村と嘘つき村』の密度に感心した経験を持つ身としては、とても満足できない。テレビの仕事が増えて忙しくなってきたからなのか、それともライブの予定を決めてからネタを作り始めたのか。その事情はまったく分からないが、「こんなものじゃないだろう!」と声を上げたくなった。BOSEスチャダラパー)が歌うテーマソングはやたらとクールでカッコよかったんだけどなあ。

そんな中、最も印象に残っているネタが『見よ 勇者は帰りぬ』。その内容は至ってシンプルで、会議の後片付けをしている男性社員が、同じく後片付けをしている同僚の女性社員に「今週、どっかのタイミングでおっぱい触らせてくれない?」とお願いする、というもの。無論、女性社員はその申し出を断るのだが、男は「ダメな理由を教えてくれないかな?」と食い下がる。徹底的に、食い下がる。女性が何か言葉を口にするたびに、その発言を覆し、更に新たな理由を提示させていく。それはまさに、圧迫面接のそれだ。おっぱいを圧迫面接……なにやらよからぬ妄想を繰り広げれてしまうが、残念なことに(?)、物理的に男がおっぱいを圧迫する場面が演じられることはない。しかし、精神的には圧迫する。とにかく圧迫し続ける。おっぱいを圧迫し続ける。そして訪れるエンディング、と同時に明らかになるタイトルの意味。下らない。もう、とにかく下らない。行程を楽しむネタなので、何度も何度も繰り返して観ようと思うことはないが、とてつもないインパクトのあるネタだった。


・本編(76分)

「プロローグ「選手宣誓」」「オープニング」「ルール」「心得る人々」「がNBAる」「Change」「汚はよう」「見よ 勇者は帰りぬ」「未来へシュート!」「エンディング」

・特典映像(16分)

「漫画で読むバカリズム