菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「番組バカリズム2」(2015年7月22日)

番組バカリズム2 [DVD]

番組バカリズム2 [DVD]

 

 2014年7月18日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組『番組バカリズム2』を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えて撮り下ろされた新作映像も披露された、とても充実した内容となっている。演出は前作と同様、『バカリズムマン対怪人ボーズ』を手掛けた住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)などの前作にも参加していたクリエイターたちが今回もスタッフとして名を連ねている。

本作も見どころが多い。

トーク番組で起こったビミョーな事態を描いた『歌う人生劇場』では、角田晃広東京03)演じる人生の渋みを噛み締めた熟年男性の前に、とある理由で登場するでんぱ組.incのギャップがとにかく面白い。バカリズムが作詞、前山田健一ヒャダイン)が作曲を手掛けた無駄にクオリティの高いオリジナルソングは必聴だ。一方、警察署の取調室を舞台に、とある事件の目撃者と彼から証言を得ようとする刑事のやりとりをイラストで表現した『目撃者』では、豊本明長東京03)が醸し出す独特の雰囲気が笑いに大きく貢献している。何を考えているのか分からない、得体のしれない者同士の不条理で無意味な会話が無感情で進行していく様が素晴らしい。

過去のライブからは、試合の後に開かれた陸上選手の謝罪会見の理由とは?『はやすぎた男』(from『バカリズムライブ「運命」』)、話し合いが終わった後の会議室に残った同僚の女性社員にとあるお願いを切り出す『見よ 勇者は帰りぬ』(from『バカリズムライブ「SPORTS」』)、定番として確固たる地位を築き上げている昔話『浦島太郎』の理不尽に対してバカリズムが苦言を呈する『昔話に関する案』(from「バカリズム案7」)の三本を再演。残念なことに、前作にはあった番組オリジナルの改変は見られない……が、バカリズム自身も「“裏”の代表作といっても過言ではない」と語る『見よ 勇者は帰りぬ』をNHKの番組に持ってきたという事実を噛み締め、素直にその恐るべき決断を讃えたいと思う。とにかくオチが……。

しかし、やっぱり見てもらいたいのは、俳優をゲストに迎えたショートドラマ。とりわけ、浅野忠信演じる記憶を失ってしまった男がこれまでの人生で関わってきた様々な人たちと面会することで自分が何者なのかを思い出そうとする『川崎貴俊』……も、非常に良かったのだが、私のオススメは夏帆が出演している『好き?』だ。舞台はとある駐車場。車中で恋人たちが次に何処へ行こうかと話しているのだが、彼氏(バカリズム)は携帯ゲームに夢中で彼女(夏帆)の話をまともに聞こうとしない。そんな彼氏の反応に腹を立てた彼女は、ゲームを取り上げて「私のことが好きじゃないんだ!」「じゃあ、好き? 私のこと好き?」と痴話喧嘩にありがちなことを求める。そこで、前向きではないながらも、彼女の質問に答えようとしたとき、彼氏の目はとある光景にくぎ付けになる……。

日常で遭遇するかもしれない可能性がある危機的状況の現実味を帯びた緊張感と、それを打破する衝撃的な展開が素晴らしい。この台本はオークラが担当。これはこれでいい仕事をしている。だが、この『好き?』という作品は、夏帆の演技が無ければ成り立たない。あのシーンの夏帆の演技を見てもらいたい。あの、口角を上げながら○○を××した挙句△△している夏帆を見てもらいたい。むしろ、夏帆の演技を見るためだけに、本作を鑑賞してもらいたいとすら思う。それほどに、いい表情をしているので……。

ちなみに、2015年3月に放送された『番組バカリズム3』のDVDは11月25日にリリース予定。私は放送内容を確認していないが、若林正恭(オードリー)や菜々緒をゲストに迎えたコントを繰り広げているという。楽しみだ。


■本編【59分】
「はやすぎた男」「歌う人生劇場」「ろうそくの火を消せそうな発音の人間関係ベスト3」「好き?」「見よ 勇者は帰りぬ」「目撃者」「川崎貴俊」「昔話に関する案」

■音声特典
バカリズムによる音声解説