菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ジャルジャルのこじゃら』(2015年11月25日)

2015年10月7日から12月23日にかけて12週連続でリリースされる、ジャルジャル自選コント集の第八弾。

 

一緒に居酒屋で飲んでいた会社の先輩が、何の前触れもなく奇声を発し始める『くしゃみとゲップとあくび』。新しいマネージャーがやってきたが、事前に説明を受けていなかったので、「本当に新しいマネージャー?」と何回も何回も確認する俳優の疑りが止まらない『何回も確認する奴』。間もなく天寿を全うしようとしている老人の元へ、彼が幼いころから一緒に遊んでいた座敷わらしがやってきて……『座敷わらしとおじいちゃん』。友人ではない別の知り合いが待ち合わせ場所にやってきて困惑する『ちゃう奴呼んでもた』。様々なミュージシャンたちの楽曲を感謝の気持ちを込めてカバーする男たちのライブ風景を描いた『うろ覚えバンド』。以上、五本のコントを収録している。

 

『くしゃみとゲップとあくび』はキングオブコントの決勝戦で披露されたコント。時間に余裕があるためか、当時よりもかなりやりたい放題にやっている印象を受けた。そして、そういう状態にしている方が、このネタは笑える。最初は生理現象の過剰な表現で笑わせられるのだが、一度それらが理由付けされることで、一見するとムチャクチャなのに演者からは放置される(=ツッコミが入らない)という奔放な状況がたまらない。『何回も確認する奴』はジャルジャルのコントに対する固定概念を逆手に取ったネタ。あまり詳細を書くとネタバレになってしまうので避けるが、後半の展開はスリリングでとても面白かった。「人の死」をテーマにした『座敷わらしとおじいちゃん』は、その生と死をシステム的に表現しているコント。座敷わらしの都合で無理矢理生き返らされるおじいちゃんの姿は笑えるが、二人のやりとりを、心肺停止と蘇生の繰り返しを描いていると考えてみると……なかなか重たいテーマを背負っているようにも思う。『ちゃう奴呼んでもた』はタイトルのまま。絶望的である。『うろ覚えバンド』もタイトルのまま。同じようなコントをTKOがやっていたが、TKOの場合は木本がちゃんとツッコミとして機能していたのに対し、こちらは二人がともにしれっとした顔でやってのけている。低レベルのクオリティでライブやイベントを開催してしまう、ある種のエンターテイナーの軽率で愚鈍な態度に対する批判的な思いが……って、流石にそれは深読みが過ぎるか。ところで、彼らがうろ覚えな楽曲が、本当にメジャーな版権曲を使用していることに驚いた。ちゃんと許可を得たのだろう。……あのよしもとが?

 

これらのコントに加え、『座敷わらしとおじいちゃん』に登場する老人・嶺井一男氏の死に関する謎に迫るドキュメンタリー『奇跡の老人 ~私は何度も生き返る~』を特典映像として収録。心肺停止を確認された後、カメラが部屋からいなくなるたびに復活してしまうベタベタなやりとりが印象に残っている。ところで、今回“彼”の姿は見当たらなかったが、一体何が……?

 

追記。いた(コメント参照)。しかし、何故あんな場所に……?

 


■本編【28分】

「くしゃみとゲップとあくび」「何回も確認する奴」「座敷わらしとおじいちゃん」「ちゃう奴呼んでもた」「うろ覚えバンド」

 

■特典映像【14分】

「奇跡の老人~私は何度も生き返る~」