菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

「ATOM」(ラーメンズ第12回公演)

ラーメンズ第12回公演『ATOM』 [DVD]

ラーメンズ第12回公演『ATOM』 [DVD]

 

 ●「上下関係」
偉い人、片桐。偉くない人、小林。最初は偉そうにしている片桐だったが、少しずつ小林の実力を意識し始める。初期のラーメンズを彷彿とさせなくも無いけれど、そこに人間関係の嫌らしさというか、そんな感じのものが加わった感じのコントに仕上がっています。オチの後味のことを考えると、「こういうネタを一本目に持ってきて良いのか?」とか思わなくもない。どろどろ。

 

●「新噺」
一人で落語を始める小林。枕部分が終わって二人の人間による会話が始まると、後ろから片桐が現れて本当に二人で会話してしまう。漫才のパロディのようなコントは数多くありますが、こういう落語をパロディするコントは珍しいような気がします。小林賢太郎の喋りは、相変わらず達者です。面白い、というよりは巧みの技を堪能できます。

●「アトム」
コールドスリープされていた片桐。目が覚めて、未来を楽しもうとするのだが、その未来は彼の想像した未来ではなかった。とにかくドラマ性の高いコントで、始まりから終わりまで、ずっと目を引かれてしまいます。ああ、恐ろしい。未来に対する希望と、それを突然失った片桐の嘆きっぷりが切なく苦しい。こういうコントを作らせたら日本一だねェ。

●「路上のギリジン
ギリジンが竹馬持って路上ライブ。ギリジン第二弾。あの歌が更に深まって、ギリジン自体の日常も垣間見える不思議な世界。ただ単純に笑えるといえば笑えるけど、どこか全体的に重々しい雰囲気の本公演の中では浮いているようにも思えなくないです。でも、案外嫌いではありません。なんともかんとも。扱いが難しい。

●「採集」
夜の体育館で、かつての友人ジャック(片桐)と落ち合うプリマ(小林)。今日はジャックが、かつての学校のマドンナに会えるということで、ワクワクしているのだが……。前公演の「小説家らしき存在」も怖い作品でしたが、これはもっと怖い。どのくらい怖いのかと言うと、この次のコントまで空気を引っ張ってしまうくらいに怖い。そんな怖い内容ですが、色々な意味で面白い。でも、やっぱり怖い。

●「アトムより」
変な喋り方をする男と友人のコント。それ以上は語りたくないし、語れない。とにかく、二人のノホホンとしつつも何処か変な空気の会話の世界が堪能できます。そして最後に訪れる、少し不思議なオチ。これまでの重々しい世界のコントが浄化されていくような、そんな不思議な感じのコントです。感動とかそういうんじゃなくて、なんか泣けます

●総評
『濃厚』という評判どおり、とにかく濃い味。こんなの最初に観たら大変ですよ。他のラーメンズ公演が物足りなく感じるかもしれない。ああ、濃いい。過去最高に濃度が高い。それぞれのネタが少し長めに作られていて、なんだか一つ一つのネタがガツンガツンとボディに食い込んできます。この公演が終われば、次は『史上最バカ』な「CLASSIC」が待っているわけですが。そっちは逆の意味で濃厚です。ああ、面白い。