菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

ベスト・オブ・イッセー尾形

イッセー尾形 寄席山藤亭 [DVD]

イッセー尾形 寄席山藤亭 [DVD]

  • イッセー尾形(1980年、一人舞台デビュー)
    • 尾形一成
    • 収録時間:約89分
    • 2006年5月29日、新宿紀伊国屋ホールにて収録

似顔絵でおなじみの山藤章二の奥さん、山藤米子が嫌がるイッセー尾形を説得することによって成り立った寄席山藤亭でのライブを収録。イッセー尾形の初期作品から、近年の作品などをセレクションしたライブになっており、イッセー尾形のライヴの空気を知るためにも丁度良い作品になっているのではないか、と思われる。
ところで僕は、最近のイッセー尾形しか知らない。最も古い公演でも、『熊の清次郎』(2000年)で、それ以前の公演はあまり詳しくないというか、殆ど知らないに等しい。そういうことがあるためか、このDVDを見て非常に驚いた。今の作品と比べてみて、昔の作品(本作で言う「英語教師」「医者の新築」)は、非常にリアリティに徹している。「英語教師」は「英語教師」でしかないし、「医者の新築」は「医者の新築」でしかない。そこで起きる事件は非現実を越えることはない。そこが、今ほどに柔軟に見えなかった理由なのかもしれない。その一方で、「ピラミッド」は非常に幻想的な作品だったが。「ピラミッド」は、非常に現実と幻想の間をフラフラしているかのような作品で、実に面白かった。それがSFにまで達したものが「脳コントロール」となるのか、な。「脳コントロール」は、これまでに見たイッセー尾形のどのコントとも違った作品になっていた。なにせ設定がオカシイのだ。イッセーの身体中の部分が独立しており、それを脳が口頭で各部分に命令している、というコントなのである。実に不思議。これを見るためだけに、これを買っても良いと言えるほどに衝撃的なコントだった。そして、リアリズムとファンタジーの間である「電器屋」「ピザ屋」「チェロ」の世界へ……そう考えると、非常に素晴らしい作品集であったように思う。ピン芸人を志している人は、ちょっと観てみるべき作品。このコント世界は、勉強になる。昨今の分かりやすい笑いに、鉄槌を下す作品集。集中せよ。

「英語教師」(初期作品)
「医者の新築」(初期作品)
「ピラミッド」(from1997)
「電器屋」(from2002)
「ピザ屋」(from2005)
「チェロ」(from2004)
「脳コントロール」(from1993)