菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

バナナマン、奮起す。『Spicy Flower』

BANANAMAN LIVE SPICY FLOWER [DVD]

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このところ、バナナマンのライブはどうも調子が悪かった。……何が悪かったかと言われると困るんだけれども。なんていうんだろう。それなりに面白いんだけれど、昔ほどにカチッとハマらないというか。昔のバナナマンのコントは、今よりもずっとアンダーグラウンド色が強く、大衆にウケなくても、一部のファンにウケれば良いという開き直りが見られたのだ。しかし、最近のバナナマンは大衆ウケを考えるようになったようで、以前よりも笑いの質がライトになった。それを悪いことだとは思わなかった。実際、その傾向が見られ始めた「SugarSpot」に収録されているコントは、爆笑できるものが多く、公演全体のクオリティも決して低くない。ただ、それからが良くなかった。その後の公演でもバナナマンのコントは大衆向けの分かりやすいものになっていたが、その形はどこか歪なものになっていた。確かに笑える、それなりに面白い。でも、それでは駄目だ。バナナマンがこれまで作り出してきたコントと同等、或いはそれ以上のものが、彼らには当然のように求められた。そして、今回のライブ「Spicy Flower」で、彼らはその期待にある程度は応えられたのではないかと思う。
今回のライブで披露されているコントには、過去のライブで披露されたコントを思わせる作品が幾つかある。例えば『SKYDIVING』に登場する二人のヤンキーは、『punks』(from「good Hi」)に登場する二人のヤンキーと同一人物だ。それから『ギリギリセーフ』に登場する二人も、『ドッキリ』(from「SugarSpot」)・『a little weird』(from「good Hi」)に登場する二人に類似している。極め付けが、『No clue』に出てくる編集者と小説家のストーリーだ。このコントはバナナマンのロングコントでも傑作中の傑作『思い出の価値』(from「ペポカボチャ」)と同様、二人がやりとりのなかで作品を作り上げていくという構成が、そのまま用いられている。……これだけを観ると、このライブは単なる焼き直しライブであるように見える。だが、重要なのはそれらのコントではなく、それ以外のコントだ。
まず、オープニングコント『uneducated』。コントの大半を日村さんの独白で占めるという、これまでのバナナマンのコントでも珍しいコントで、今後の新しい方向性になるのではないか、と感じた。そして、二本目の『a shocking move』。引っ越し先で様々なトラブルに巻き込まれて戸惑い続ける二人の様子を描いたこのコントは、バナナマンブラックな面を大衆向けに開花させた秀作で、やはりバナナマンの今後の方向性を感じさせるものになっていた。
つまるところ、この「Spicy Flower」はバナナマンが方向性を変え始めてからのライブの中では、最高のライブだったように思う。しかし、これで満足してはいけない。今回のライブは確かに秀作だったが、まだバナナマンの全盛期には届く出来ではない。かつての彼らは、もっと高い場所にいた。山の頂上の八合目くらいのところにいた。今の彼らは、別の山の六合目くらいにいる。次のライブで、山の何処まで登ることが出来るのか。そこに期待したい。

・本編(116分)
『uneducated』『a shocking move』『ギリギリセーフ』『SKYDIVING』『赤えんぴつ』『No clue』
・特典(25分)
『赤白旗あげゲーム』『5回言って面白くなる言葉』『目隠しクッキング』

ところで、バナナマンのライブといえば、その音楽センスの高さも評価せざるを得ないところだと思う。今回のライブのオープニングはSAKEROCKが担当し、エンディングテーマには泉谷しげるの『懐かしい人』を用いている。実に良い。オークラの趣味だろうか?
追記。読み返すと、なんだか酷い文章で笑ってしまった……無理に感想を上げるものではないと痛感した次第であります。……いや、それは置いといて。以前から思ったことですが、バナナマンのコントはここ数年で、ちょっとボケ・ツッコミが明確になってきている感があります。以前はもうちょっとボケ・ツッコミが曖昧でした。そして、今回のライブは、その傾向が特に強く出ていたような気がします。気がするだけかもしれませんが。