菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『妄想挌闘家 関根勤の妄想力 東へ』

関根勤の妄想力 東へ関根勤の妄想力 東へ
(2008/07/16)
関根 勤

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最近、いわゆる“タレント”と呼ばれている人たちが、よくDVDを発売している。特に高田純次ルー大柴の二人が再評価されるようになって以後、その傾向が顕著に表れている。ただ、昔はそういうDVDって、もうちょっと趣味方面というか、タレントの私的な一面を見せる作品が多かった気がするのだけれど、このところはテレビ芸を改めて収録しているようなところがある。ダダ漏らしだったテレビ芸を、DVDという風呂に溜め込んでいる感じか。

それでちょっと面白いのが、タレントのテレビ芸がDVDに収録されるとき、往々にしてテレビ以上の濃度になってしまうというか。そもそも、テレビなんて出来るかぎり大衆向けのものを放送しているわけだから、元々が薄いのであって。それをDVDに収録すれば、少なからず濃厚なものになってしまうのは、至極当然と言えるのかもしれない。若手芸人のDVDが“進化”を求められるのなら、タレントのDVDは“深化”を求められていると言えるのかも。

で、関根勤だ。関根もまた、テレビ芸が高く評価されている芸人だ。特に番組でさりげなく披露しているモノマネに対する評価が高く、それらを収録した『カマキリ伝説』シリーズも何本か発売されている。そんなに似ているわけではないのだけれど、なんか笑っちゃう。視点が良いんだろうな、たぶん。ただ、近年の関根勤は、モノマネ師というイメージが希薄だ。どっちかというと、ちょっとヘンテコなことを考えている人というか、妄言的なことを漏らす人として見られている。本作『妄想挌闘家 関根勤の妄想力 東へ』は、そんな関根の妄言……というか、妄想を収録した作品になっている。

関根勤の妄想を収録する”というだけでも異色作の臭いがプンプンしているけれど、本作は更にCGアーティストによって、関根の妄想を映像化しているという……なんだそれは。いやいや、考えてもみれば、関根勤の妄想語りをそのままDVD化するよりは、それを映像化したものを収録したほうが、視聴者には良いのかもしれないけれど。結果、かなり混沌とした作品になってしまったことは、否めない。うーん。実にこってり。

というか、まず関根が語る“妄想”のテーマが凄い。「人間は動物界で何番目に強いか?」みたいなベタなのから始まって、「一週間のベスト・デート」みたいな性的妄想を経由し、最終的に「宮里藍ちゃんのバナナ」に至るという。どんな凄い妄想が飛び出ても驚かないつもりだったけれど、この「宮里藍ちゃんのバナナ」には度肝を抜かされた。なんだ、この妄想界のジャック・マイヨールは!

一方で、その場でお題を出されて即座に妄想する「即妄想」も、実に素晴らしかった。『黒船』では「ドサクサに紛れてセックスした人が絶対いる」、『スイカ』では「スイカにはなりたくないよ、割られるから」、『あしたのジョー』では「会長のお嬢さんは(ジョーが死んでいたとすれば)五年は恋愛できない。ジョーを引きずるね」と、じゃんじゃん語る。ここだけCGを使っていないのも良い。おかげで、純粋に関根の妄想芸を堪能することが出来た。

恐らく、現存するお笑い関連のDVDの中で、最も存在意義の分からない作品だっただろう本作。何処のバカが作ったのかと調べてみると、お笑い界の鬼才こと倉本美津留が企画していた。なるほど。バカじゃなくて、仏の所業だったか……。


・本編(93分)

○本妄想

井川遥ちゃんとモルディブデート」「人間は動物界で何番目に強いか?」

「一週間のベスト・デート」「紅鮭を尊敬する」「もしもピアニストだったら」

○'S妄想

「優香ちゃんのブラジャー」「宮里藍ちゃんのバナナ」

ユマ・サーマンキャメロン・ディアスの犬」

○即妄想

○顔妄想