菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『COWCOW CONTE LIVE1』

COWCOWコントライブ 1COWCOWコントライブ 1
(2008/08/13)
COWCOW

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 実は、僕はこれまでCOWCOWのネタで笑ったことがなかった。嫌いだったわけじゃない。ただ、何故だか分からないのだけれど、イマイチそのオモシロさを受け止められなかったのだ。

 これは僕にとって、物凄く衝撃的なことだった。なにせ、COWCOWに出会うまでの間、僕は一度もそんなことを経験したことがなかったから。他の某コンビのコントを観ていて、「これは面白くないなあ」と思ったことはあった。ただCOWCOWに関しては、そういう次元じゃなかったのだ。かなり下らないネタをやってて、面白そうなのだ。面白そうだとは思うのだけれど、どういうわけだか全く笑いのツボにハマらない。

 だからもう、恐いよね。客は笑っているけど、一人だけ笑えない状態だから。お客さんと一緒に笑いたいのに、面白そうなのに、楽しそうなのに、まったく口角が上がらない。何がなんだか、まったく分からない。なにせ、「これ、面白いだろうなあ」と思っているのに、笑えないのだ。これを恐怖を言わずして、何を恐怖と言うのだろうか! 皆が公園で楽しそうに遊んでいるのに、一人だけ入れさせてもらえない様な、そんな感じだった。

 それが何故か、この単独ライブDVDを観たら物凄く面白かった。これまでテレビで観たことがある小ネタがたくさん盛り込まれていたのに、全部面白かった。腹を抱えて…とまではいかないけれど、ちゃんとネタとして笑うことが出来た。懐古的あるあるを「こんな人見ませんでした?」と問いかけて繰り出し続ける『あの日の君を探しに』、多田さんのギャグが終始披露され続ける『研究室』、ツッコミの山田さんが某北の国からの人に扮する『五郎さんの英会話教室』…どれも、ちゃんと笑えた。やってることはそれまでに見たものと大して変わらない筈なのに。

 上手く説明できないんだけれど、なんとなくCOWCOWのネタって今のお笑いブームのネタの傾向とは違う傾向にあると思う。だから、他のネタと並んで披露されるときに、COWCOWの時だけ弱冠のズレが生じる。そのズレに対して、僕の脳味噌は上手く切り替えられていなかったのだ。じゃあ、その傾向の違いって何なのかというと、それは多分、ネタの熱量なんじゃないだろうか、と僕は思う。

 最近の芸人さんのネタの持つ熱量っていうのは、もう物凄いんだよね。熱くて熱くて、たまらない。笑わせるということに真剣すぎるのかもしれない。自分が面白いと信じて送り込んだネタを、客に楽しんでもらうために全力で演じている感じ。COWCOWはその逆。客に楽しんでもらうんじゃなくて、自分が楽しければいいと思ってる。もちろん、当人たちにはそんな意識はないと思うけど、僕にはそう見える(二人とも終始ニヤケなのが関係しているのかもしれない)。

 しかも、彼らのネタはものすごーくユルい。あえてユルくしているコントはあるけど、そんなのじゃなくて、もう根っこからユルい。漫才もコントも、ひたすらユルい。だから、他の芸人と比べて、どうしようもないくらいに熱量が弱い。ぬるま湯に浸かってる感じ。悪い意味じゃないよ。そのぬるま湯さが心地良くて、尚且つ面白いわけだから。

 まあ、なんにしても、それまで面白さが分からなかった芸人さんのネタを面白いと感じることが出来たのは、喜ばしいことである。今夜は気持ちよく眠れそうだ!(いや、そこまででもないけれど)


・本編(69分)

「あの日の君を探しに」「世界一対決」「ある日の昼下がり」「C」「ヤクザの息子の反抗期」「キードンバン」「キードンバン その後(ブリッジ映像)」「漫才」「スパゲッ亭ゆでた郎」「研究室」「五郎さんの英会話教室」「漫才」

・特典映像(82分)

「裏COWCOW CONTE LIVE」「多田語」