菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ジャルジャルの戯(あじゃら) 1』

ジャルジャルの戯(あじゃら) 1ジャルジャルの戯(あじゃら) 1
(2008/10/22)
ジャルジャル後藤淳平

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ジャルジャルを観ていると、バカリズムを思い出す。ジャルジャルバカリズムも、ともに素材の良さを出来るかぎり活かしたコントを作るからだ。そこには、余計なものはない。必要とされていない。そういう意味では、彼らはラーメンズシティボーイズとは対極の存在と言えるのかもしれない(舞台や衣装のシンプルさは、なんとなくラーメンズっぽさを感じるけれど)。

ただ、ジャルジャルバカリズムには明確な相違点がある。バカリズムは、素材の良さを活かすための調理法を熟知している。その笑いを観客に提示できるレベルにするためにすべき演出法を知っている。とどのつまり、コント観が理知的なのだ。しかし、一方のジャルジャルは、その素材の良さを活かそうと、素材自体の味をこれでもかと強調する。

本作のオープニングコント『人間シュレッダー』は、そんなジャルジャルの調理法が分かりやすく伝わってくるコントだ。二人のサラリーマンが契約を交わすまでの様子を描いたこのコントにおける笑いの素材は「破壊」だ。コントのタイトルを見ても分かるように、彼らは手にした紙という紙を全て破り捨ててしまう。手始めに新聞紙が真っ二つに破壊される。続けて、交換し合った名刺も破り捨てられる。サラリーマンが薦めてくる洗濯機のパンフレットも破られるし、その洗濯機の配置場所を考えるための店内地図も破られる。全て、破壊なのだ。

この一辺倒な展開は、他のコントにおいても変わらない。同じギャグを繰り返して練習させられる『変なキャラ練習させられてる奴』、サラリと繰り出される強引な設定によって、単なる遊戯が異常な展開に盛り上がっていく『しりとり』、野球を知らない男が徹底的に野球を理解することが出来ない『理解不能者 ~野球部入部~』など……どれもこれも、一つの素材をこれでもかと膨らませるだけ膨らませたものばかりだ。

そんな彼らのスタイルは、斬新だと言われている。確かに、これまでそこそこに近年のコントを観てきた僕も、彼らの様なスタイルのコント師は見たことがなかった。ただ、彼らのスタイルは斬新ではない。恐らく、過去に彼らが今やっている様なコントをやろうと試みた芸人は、少なからず存在した筈だ。ただ、それを演じられる能力を持つ芸人が、これまでに存在しなかったのだ。『ネタがイマイチの漫才師』を観たら分かるけど、彼らの演技力はハンパじゃない。

本作が初の単独DVDとなるジャルジャル。そのあまりにも大きすぎる第一歩は、これからのお笑い界にどれほどの影響を与えることになるのか。或いは、どれほどの影響を与えないのか。どっちにしても、期待せざるを得ない。いやー……ネタは以前からちょこちょこ拝見していたけれど、やっぱ凄いなあ。


・本編(65分)

『人間シュレッダー』『変装』『変なキャラ練習させられてる奴』『しりとり』『水泳部部活紹介1995』『理解不能者 ~野球部入部~』『ネタがイマイチな漫才師』『腕相撲』『葬式』

・特典

特典映像『アルバム「そうじゃないよ絶対」レコーディング風景』(12分)

副音声ネタ解説

CDアルバム『そうじゃないよ絶対』(10分)