『U字工事 北関東ナンバーワン!!』

U字工事/北関東ナンバーワン! (2008/10/22) U字工事 商品詳細を見る

「爆笑オンエアバトル」で連敗の常連になりそうだった彼らも、今では「爆笑レッドカーペット」に出演するようになっちゃって、しかも今年のM-1グランプリ有力候補の一組に数えられるようになったってんだから、芸の世界は本当に分からない。いや、確かに元々べしゃりの能力値は高いコンビなのである。

　それにしても、今年に入ってからのU字工事の躍進っぷりは、目を見張るものがある。いや、具体的に何か賞を獲ったとかいうことはないんだけれど。ただ、その芸の向上ぶりの凄まじさは、見るだけですぐに分かるほど。

　以前のU字工事は、様々な事象に田舎的ノスタルジィなアレンジを加えるスタイルを取っていた。例えば“最近の子どもは部屋に引きこもる”という話に「部屋でかいわれ大根の実験をしている」というボケを挟み込んだり、“デパートに洗濯機を買いに行く”という話に「ジャガイモの泥落とし機能がついている」というボケを挟み込んでいたりしていた。

（この当時のU字工事のネタは現在、笑殺者シリーズ『この先 U字工事』で確認することが出来る。余談になるけど、この笑殺者シリーズは五人組時代のカンカラや、解散前の南の風（風力3）、ナベプロ移籍前の超新塾のネタをソフト化していて、実に良い仕事をしていた）

　ところが、今年に入ってから、U字工事は漫才のスタイルを一新した。ネタの基盤からは、相変わらず田舎臭さを匂わせてはいたが、いわゆるノスタルジィを誘うギャグは排除されていた。代わりに彼らが武器にしたのは、彼らの地元である栃木県民が持つコンプレックスだった。

　一般的に、田舎の人間は心が広くて優しいと思われている気があるが、一方で、閉鎖的で他人の腹を探るような陰険な部分を持ち合わせていることもまた、密かに知られている。しかし、そういった部分はあまり表沙汰にされることはない。理由は不明だが、都市部の人間にそう思わせておいたほうが都合が良いナニカがあったのかもしれない。しかしU字工事は、その陰の部分を物の見事に叩き割った。しかも、笑いというカタチで。

　そんな折、U字工事が単独ライブを行った。なんでも、初めての単独ライブだったらしい。その芸の安定さから、てっきり何度か単独ライブ経験があるものだと思っていたのだけれども……なんだか意外だ。

　単独ライブといえば、テレビなどで見せるときに披露する“ネタ見せ用の本ネタ”とは別に、その芸人がやりたいことを自由に演じる場とも言えるんだけれど、U字工事は初めての単独ライブということがあってか、あまり自由に出来ていなかった気がした。カタいというか。借りてきたネコって感じで、なんだかとっても初々しい。

　だから、アソビのネタもそこそこマジメにこなしている。近況を伝えていると、だんだん父親のダメな部分が姿を現し始めるコント『ビデオレター』、イマドキの若者風に漫才をやってみる『東京弁漫才』、漫才中に栃木県の名物・企業名を詰め込んだ『スポンサー漫才』など、アソビ以上・本ネタ未満なネタが並んでいた印象が強い。

　一方で、本ネタの漫才はしっかりと……ただ、今回披露されていた漫才は、まだ田舎的ノスタルジィを押し出しており、この時期はまだ進化前だったのかと、ちょっと残念に思ったり。でも、「茨城を徹底的に潰します！」とか言ってるあたり、片鱗は見えた。

　また特典映像には、ボケ役の益子さんがソロで発売したシングル『男星』のプロモーションビデオ、後輩のヴィレッジを連れて茨城を旅する『茨城をぶっつぶせ!!』など、五本の映像作品が収録されている。五本というとそんなでもないような感じがするけれど、収録時間は本編よりも長い55分。く……くどい！（笑）

　オリエンタルラジオ『才』とはまた違った、青さを感じさせられるDVDですた。良作。

　しかし、もうちょっと音質がどうにかならんかったのか。

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・本編（53分）

『漫才（栃木）』『ビデオレター』『東京弁漫才』『スポンサー漫才』『のど自慢』『漫才（県知事）』

・特典映像（55分）

『男星』『ササモリさん』『茨城をぶっつぶせ!!』『U字工事 in栃木県庁』『北関東ナンバーワンができるまで』