菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『漫才 爆笑問題のツーショット 20周年記念エディション』

2008 漫才 爆笑問題のツーショット 20周年記念エディション(初回生産限定)2008 漫才 爆笑問題のツーショット 20周年記念エディション(初回生産限定)
(2008/10/31)
爆笑問題

商品詳細を見る

 もはや恒例行事と化している、爆笑問題の漫才ネタDVD『爆笑問題のツーショット』が、今年もしっかりと発売された。今回はコンビ結成20周年を意識し、いつもの「ブルーバック+スタッフ笑い」という形式ではなく、スタジオに観客を入れた「ライブステージ」の形式を採用。また、これまでは漫才の幕間映像に挟み込まれていた山中秀樹のニュース解説を全カット(但し、本編とは別に収録されている)。結果、一時間強の収録時間が丸々、爆笑問題のノンストップ時事漫才で占められるという、なんだか挑戦的な仕上がりを見せることとなった。

 十月始めに起こった福田総理の辞任から始まった、今回のライブ。いつもなら時系列にネタを展開させているところを、ノンストップという形式のためか、今年話題になった事件を徹底的に転がしたボケが矢継ぎ早に繰り出されていて、なんともいえない開放感を覚えた。特に太田さんは、いつもよりも無駄な動きが多く、なにやら活き活きしていた。やはり漫才師は、観客の前でネタをやったほうが良いのだろう。水を得た魚の様だった。

 ボケの質にも、弱冠の変化が。ここ数年の、爆笑問題の漫才における太田さんのボケは、バラエティにおけるスタンスと同様、単純さ・不謹慎さを売りにしたものが多かった。今回もそういうボケが多く、例えば“北島康介がオリンピックで金二つ!”という話題に「(田中を見ながら)金二つ! 二つがポイントですネ」と茶化したり、“ヤワラちゃん惜しくも銅メダル!”という話題に「銅取ったときに心なしか綺麗に見えました」「谷の気持ちが一瞬分かった気がしないでもないような」とか言ったりしている。ただ今回は、太田さんの一人妄想芝居が妙にツボった。前からやってたっけ? あんまり記憶に残ってないけど、ひょっとしたら前からやってたのかもしれないけれど、なんか衝撃的に面白かった。

 以下、そのシーンをテキスト化してみる。

(パンダのリンリンが死んだ件を受けて、パンダブーム時の話)

太田「「パンダすげえな」「パンダ違うな」なんつって。そいつ、よく聞いてみたら動物園来ること自体が初めてなの。パンダより、その後のゾウとかキリンの方が驚いてんの。「パンダはやっぱり違うよ!」その後ゾウの前では平静を装って、(緊張を隠せない笑顔を浮かべ)「……ゾウか」」

田中「「ゾウか」じゃねえよ!」

太田「「なんだよこれ、えへへへへ……んー、むしろ鼻短いよな」」

田中「そんなわけねえよ! 素直に驚きゃ良いだろ!」

太田「「これがキリンかよ……長いっちゃ長いけどな、首はな。でも、キリンの首が長いっつうのはね、意味は、あまり……」」

田中「なんだそいつは! 素直に喜べよ!」

 久しぶりに爆笑問題の漫才を観ていて身悶えた。ちょっと、昔の爆笑問題がやってたナンセンスさが、ちょっとだけ見えた気がした。ホントにちょっとだけ、だけど。

 特典ディスクには、爆笑問題の舞台裏を収録。タイタンライブの裏側が撮影されていたり、『爆笑問題のニッポンの教養』『爆笑問題カーボーイ』の歴史についての語りがあったり、爆笑問題の過去を知る人たち(名倉潤松村邦洋ブッチャーブラザーズますだおかだの四組。コンテンツリーグ内でまとめてますな)のコメントがあったり。“20周年記念”と銘打っている割には、爆笑問題の歴史を振り返る映像が少なく、ちょっと物足りなかった。20周年という言葉の特別さを堪能したいのであれば、『QJ vol.76 特集:爆笑問題』を読んだほうが良いかもしれない。

 それでも、過去の「爆笑問題のツーショット」シリーズの中では、最も良い出来映えだったな。爆笑問題は客前で活き活きと漫才をやってたし、ネタも面白かったし、なんだかんだで特典ディスクも楽しかったし。ああ、満足できたなあ。


・本編ディスク(約64分)

『漫才』『山中秀樹のニュースコーナー2008』

・特典ディスク(約37分)

『20周年記念! 舞台裏の爆笑問題!!』

・封入特典:2008年 事件簿