菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

笑魂『ばか処』(禅)

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(2008/12/03)


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九十年代後半から現在にかけて、ショートコントというスタイルを追求するコンビは、不思議と後を絶たない。その基本形とも言える江戸むらさきのショートコント以後、さくらんぼブービーモジモジハンター(現在は解散)、アンガールズイシバシハザマなど、多くの芸人たちが己のショートコントの新基軸を築いている。

ナベプロ所属のロックンロールコント集団“超新塾”から飛び出したユニット「禅」もまた、ショートコントを専門としたコンビである。ネタを考えるのは、超新塾のリーダーでもある新塾イーグルで、そのネタを体当たりで演じるのは、超新塾のグラサンこと新塾タイガーだ。

彼らは自身のネタを「空想ショートコント」と称している。「空想」とは、現実から掛け離れているという意味だ、そうだ(新明解調べ)。つまり、彼らのショートコントは、現実から掛け離れているショートコントだ、ということである。しかし、その理屈で言うならば、たいていのショートコントは空想に当てはまる気がする。……まあ、そこまで深く考えてつけられたタイトルではない、ということなのだろう。たぶん。

実際に彼らのショートコントを観てみると、確かに空想的なネタは少なくない。『握手した時の静電気で感電死』『背骨で剣道』『タモさんがアシスタントに頼むポスターが活きのいいヒラメ』など、あまりにも現実離れしたシチュエーションのショートコント郡は、空想という表現が相応しいように思えなくもない。しかし、あえてタイトルに「空想」と付けなくてはならないほどに、特別に空想的なコントばかりという印象は無い。むしろ、その発想は他のショートコント師たちと大差が無いように思う。

禅の「空想ショートコント」には、そもそもオチが存在しない。そのショートコントのタイトルに挙げた事象を、そのまま再現することで笑いにしている。それ故に、その事象がどれほどに独創的なものであるかどうかで、笑いの量も決定する。しかし、今作に収録されている「空想ショートコント」の多くが、そこまで飛びぬけた発想のものではないためか、いまいち面白味に欠ける。あくまでも、超新塾という五人組から飛び出したユニットとしてならば、これでも良いのかもしれない。ただ、これを単独作品として発表するのであれば、もうちょっと磨かれたものを送り出してもらいたかったなあ……と思わなくもない。

ちなみに、この「空想ショートコント」の原型とも言えるネタが、超新塾『ロックンロール劇場』に「空想モノマネ」として収録されている。そちらで披露されているショートコントは、多少の厳選はされているのだろうが、かなりクオリティが高い。ナンセンスで下らない「空想」が、そこでは繰り広げられている。……ひょっとしたら、単にネタを某番組出演のために量産したことで、一つ一つのクオリティが格段に下がってしまったのかもしれない。まあ、それも言い訳に過ぎないが。うーん。


・本編(39分)

『空想ショートコント1』『バクテンカジノ』『空想ショートコント2』『ワンナーガママ』『映像:禅のルーツを探した夏』