菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『志の輔らくごのおもちかえりDVD2 ガラガラ』

皆さんは“ガラガラ”を御存知だろうか。ガラガラというと、その音の印象から「赤ん坊をあやすために使用する玩具」を思い出してしまうが、今回のガラガラはそれではない。今回のガラガラは、くじ引きだとか抽選会だとかに使用されるほうのガラガラである。このガラガラという呼びかた、実は関東特有の呼び方で、関西では“ガラポン”と呼ばれている。ちなみに正式名称は“新井式回転抽選器”というそうだ。
立川志の輔による創作落語DVDシリーズ、第二巻は『ガラガラ』である。ガラガラといえば景品。この噺はガラガラの景品を大喜利的にネタにした演目……と想像してしまいそうになるが、この噺の主な登場人物は客ではなく主催者側の人間だ。抽選に参加する人間にもドラマはあるだろうが、その景品を準備する側にもドラマがあるのである。以下、ジャケ裏のストーリーを引用。

客足の遠のいた小さな商店街。一念発起で実施することになった福引大会のガラガラ機に特賞の世界一周を7つも入れてしまったことがわかり大騒動! 追い詰められた商店街の人々の行動が、爆笑につぐ爆笑を呼ぶジェットコースター喜劇。

これまで志の輔師匠の創作落語はDVDで四本ほど鑑賞しているが、この『ガラガラ』の様なタイプの落語はこれまでに観たことがない。志の輔師匠の作る落語というのは、基本的にヒューマニティーに富んだものだ。家族内で起こるちょっとした諍いのような小市民的な状況をコミカルに描いたような、そういう作品こそが志の輔師の芸風だと思っていた。
ところが、この『ガラガラ』という噺はそういった芸風とは明らかに違う。ストーリーを重視せず、ギャグに徹底しているのだ。そもそも「1等をうっかり7つ入れてしまう」という設定自体が、ギャグテイストの強いものと言えるが……その設定からの展開が凄まじい。1等が7つも入っている。でも、それをどうこう出来る金は商店街には無い。無い袖は振れない。振れないものは仕方ないから、1等が7つ入っていることを客に知らせて謝罪する。しかし、そこから更に事態が……と、こっから先は流石に書けない。ここから先の展開は、実際に見てもらいたいのだ。あの、志の輔師匠の喋りが勢いづいてからの展開には、一見の価値がある。あと、オチの爽快さは実に宜しい。まさか真心ブラザーズを持ってくるとは……。

本編:約49分