菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『THE GEESE「Dr.バードと優しい機械」』

THE GEESE 1st DVD Dr.バードと優しい機械THE GEESE 1st DVD Dr.バードと優しい機械
(2009/08/26)
THE GEESEザ・ギース

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最近の芸人さんには、オシャレな人が多い。といっても、別にファッションセンスがあるとかいう話ではない。芸人の私服が如何にファッショナブルであろうと、視聴者には割とどうでもいい話である。好きなだけ着飾れば良い。そうじゃなくて、そのネタがオシャレなのである。芸人のネタがオシャレ。その言葉が示すところは、要するに「ネタの中にカッコつけ要素が含まれている」ということだ。

「カッコつけ要素」。言葉にすると批判的に見えるが、実際のところ、これの効果はナメたものじゃない。もちろん、ただ芸人がカッコつけているだけでは、面白くもなんともない。ちゃんと観客を惹きつけるだけの魅力と実力を兼ね備えつつ、そこに「カッコつけ要素」を少しばかり加えておく。すると、観客はその「カッコつけ要素」に惹かれて、その芸人のライブに足しげく通うようになるのである。してやったり。

THE GEESEもまた、そういった「カッコつけ要素」を意識したコントを披露しているコンビの一組だ。そのことは、今回のライブタイトルを見ても分かる。『Dr.バードと優しい機械』。どう見てもオシャレである。東京芸人特有の、力の抜けたオシャレ感とでも言うのだろうか。冷静になって考えると、かなり凄いタイトルなのだが。なんだよ、“Dr.バード”って。博士号も持ってないくせに(間違った批判)。

披露されているコントも、飛行機のパイロット二人が退屈しのぎにしりとりを始める『退屈なフライト』、本来の意味とは逆の意味で受け取り続けてしまう『逆(さかしま)』、易者なのに医者の様な立ち振る舞いをする『易医者』と、ちょっと大人なオシャレを感じさせるネタばかり。しかし一方で、尾関さんの一発ギャグが堪能できる『レコーディング』や、二人の着ぐるみ姿がちょっと可愛い『むかしむかし詐欺』など、ちょっと余裕を見せるようなネタもチラホラと。大人のオシャレと大人の余裕を振り撒くように、THE GEESEはその笑いを生み出していくのである。

ただ、残念なことに、そのオシャレな空気に反して、彼らのネタはあまり完成されていない。いや、完成され過ぎているというべきか。独創的な発想はあるのだが、その発想を遊ばせられていないという感じ。一つの発想に対して、あまりにもマジメになりすぎているとでも言えば良いのだろうか。言うまでもないが、お笑い芸人がネタの中でマジメな雰囲気を出してしまうというのは、そういう演出で無いかぎり、あまり良いこととは言えない。もっと力を抜いて、その発想を面白く転がす余裕が必要となってくる。

奇跡のナンセンスコント職人、シティボーイズに憧れて芸人になったというTHE GEESE。マジメにフマジメな世界観の笑いを構築する彼らの世界に、果たしてTHE GEESEは辿りつくことができるのだろうか。とりあえず、新メンバーに夙川アトムを加えて、トリオで活動すれば良いんじゃないかな?(人数の問題かよ)


・本編(83分)

『退屈なフライト』『逆(さかしま)』『易医者』『レコーディング』『むかしむかし詐欺』『道案内』『入社試験』『おしゃれ強盗』

・特典映像

「静止画コント」「カーテンコール」