菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『爆笑オンエアバトル トータルテンボス』

爆笑オンエアバトル トータルテンボス [DVD]爆笑オンエアバトル トータルテンボス [DVD]
(2009/12/02)
トータルテンボス

商品詳細を見る

2007年12月、敗者復活を勝ち上がってきたサンドウィッチマンの奇襲攻撃によって、殆ど決められていたと言っても過言ではなかった「M-1グランプリ優勝」という栄光を獲り逃してしまったコンビ、トータルテンボス。その年がラストイヤーだったために、その後の大会には出場できなかったので、なんとなくサンドの優勝のお膳立てをして終わったコンビというイメージを持っている人も少なくないのではないだろうか。いや、それどころか、そもそも彼らがM-1グランプリの決勝戦に進出していたことすら、覚えていない人もいるかもしれない。なにせ、あの最終決戦で、敗者復活戦を制したサンドウィッチマンと、 2001年大会以来の決勝進出となったキングコングという、話題性という意味では非常に濃度の高いコンビに挟まれていたわけだから。覚えられていなくても仕方がないといえば仕方がない。

しかし、M-1グランプリ優勝という栄光を逃した翌2008年、トータルテンボスは「爆笑オンエアバトル 10代目チャンピオン」という結果を残す。バラエティ的にはそれほど大きな影響を与えない優勝ではあったが、これまでお笑いの賞レースで結果を残したことのなかった彼らにとって、この優勝が大きな励みとなったことは想像に難くない。更にその翌年の2009年に行われたチャンピオン大会で、彼らはルート 33、タカアンドトシに続く史上三組目となるチャンピオン防衛を成し遂げる。M-1グランプリで優勝を果たせなかった彼らだが、漫才師としてはその後も着実に成長を遂げていたということを、この瞬間は証明していた。

そんなトータルテンボスが「爆笑オンエアバトル」で歩んできた道のりが、 DVDになってリリースされた。このDVDには、彼らが番組で披露してきた数々のネタが収録されている。そこで、せっかくなので今回も、今作に収録されているネタを振り返りながら、トータルテンボスのネタの変化を辿って行きたいと思う。

爆笑オンエアバトル」で初めてトータルテンボスのネタがオンエアされたのは、2004年2月のことになる。結果は389kb。オンエア五組中五位というあまり芳しくない結果だった。披露しているネタは、ギャップのある男について語った漫才。当時の彼らは、現在の漫才コントのスタイルではなく、しゃべくり漫才のスタイルをとっていた。ちなみに、この頃は“今日のネタのハイライト”というのをやっていた。これは漫才が終わった後で、漫才中にあったやりとりを二人が再演するというもの。ちょっとでも印象に残るために生み出した苦肉の策だったのだろう。

そんな彼らが初めてオーバー500を記録したネタは、2005年5月に披露した漫才だった。修学旅行の夜をテーマにしたしゃべくり漫才と高級レストランを舞台にした漫才コントを合体させるという、構成だけを見ると非常に残念な内容だったが、高級レストランの漫才コントに突入した途端、畳み掛けるように笑いが生み出されていたことにより、この結果になったみたい。この頃から、藤田さんの個性的なツッコミよりも、大村さんのボケが強く主張し始めた気がする。あと、この回から“今日のネタのハイライト”が無くなったのも見逃せない。この頃から、彼らは自信を持って漫才が出来るコンビになったということなんだろう。うん。

ところで、初期のトータルテンボスは「爆笑オンエアバトル」でコントを披露したこともあった。特に大事な局面にコントを持ってくることが多く、オンエアされた四本のコントのうち三本はチャンピオン大会で披露されている。彼らが最後にオンエアしたコントは、第8回チャンピオン大会ファイナルで披露された『空き巣』。かなり堅実なネタを作っているイメージの強い彼らには似つかわしくない、とてつもなくやりたいことをやった感の強いコントだった。どうして彼らがそんな暴挙に出たのか……今でも不思議で仕方ない。

話を戻す。トータルテンボスが現在の漫才コントのスタイルを確立したのは、2007年1月にオンエアされたグルメレポーターのネタから。このネタはM-1グランプリ2006決勝でも披露された、彼らの自信作。これ以後、トータルテンボスは『服屋の店員』『ホテルノフロントマン』『不登校の生徒を説得』などの傑作漫才コントを次々と生み出していく。それなのに、チャンピオンになったときのネタは漫才コントじゃなく、プロポーズをテーマにした彼らの原点であるしゃべくり漫才だった。……こうして考えてみると、トータルテンボスって実は凄いコンビなのかもしれない。しゃべくり漫才も漫才コントもギッチリ出来るコンビのことを、僕は他にあんまり知らない。

2010年3月、トータルテンボスは史上初となる三度目のチャンピオン防衛をかけて、第12回チャンピオン大会に臨む。今年、一度も通常回に出場していない彼ら(但しオンバトプレミアムのコーナーに一度だけ出演)が、三度目の防衛を賭けて披露するネタは、果たして何なのか。……意外とコントとかやってくれたら、ちょっと面白いかもしれない。


・本編(125分)

・特典映像(19分)

「ハンパねぇ瞬間ランキング」