菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『爆笑オンエアバトル 我が家』

爆笑オンエアバトル 我が家爆笑オンエアバトル 我が家
(2010/06/23)
我が家

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爆笑レッドシアター』などで活躍中の若手お笑いトリオ、我が家が結成されたのは、今からおよそ七年前の2003年9月のことだった。小学生の頃からの知り合いである杉山裕之谷田部俊によって結成されていたコンビ“ルーキーズ”に、俳優志望だった坪倉俊之が加入する形で結成された。ユニット名の“我が家”は、結成時に三人がいた居酒屋の名前が由来となっている。

そんな彼らが『爆笑オンエアバトル』に初めて挑戦したのは、2005年のことだ。当時の彼らはまったく無名の若手芸人で、お笑いファンの間でもそれほど知られていない存在だった。それにも関わらず、彼らは初挑戦で初オンエアを果たす。但し、その時の彼らのネタが獲得したキロバトル数は289kbと、かなりの低得点だった。ちなみに、200kb台のネタがオンエアされたのは、2003年12月に293kbを獲得した5番6番以来。はっきり言って、運が良かったのである。

その時、我が家が披露したネタは『レストラン』。客の杉山が失礼な店員の谷田部と坪倉に振り回されるコントだ。キロバトル数の通り、面白いネタではない。ボケは薄いしテンポは悪い。その上、ツッコミはクドすぎる。というか、テンポが悪いのはツッコミのクドさが原因なのだが。薄いボケに対するツッコミがいちいちクドいから、テンポ良く進行しないのである(そのくせ、緊張していたのか、コント冒頭の説明を雑に省いてしまうという大失態を見せているのだから、たまらない)。これは大きな問題だった。勿論、谷田部と坪倉のボケが薄かったことも少なからず問題ではあったのだが、杉山の“クドすぎるツッコミ”問題は、それ以上に大きかった。

やがて、谷田部は中ボケという立ち位置を利用し、何を考えているのか分からない自由で不思議なキャラクターを身につけていき、一方の坪倉も、俳優志望だった頃に会得した演技力を駆使し、演技でボケを見せていくようになる。ボケ役の二人がそれぞれ違ったボケを引き出すことで、以前には見られなかった味わいが感じられるようになったのだ。しかし、杉山のクドすぎるツッコミは、なかなか解決されなかった。僅かながらに見せ方が上手くなってはいたものの、それでも相変わらずクドかった(2006年10月にオンエアされた『自動車教習』のコントでは、杉山の代名詞でもある「言わせねえよ!」に類似したツッコミが口にされているが、まったく効果的に使われていない)。

そんな杉山のツッコミから半ば強引にクドさを失くしたネタが、彼らの代表作“ローテーション漫才”である。三人がそれぞれフリ役・ボケ役・ツッコミ役を入れ替わるローテーション漫才は、その内容自体は決して斬新ではないため、とにかくテンポの良さで観客の視線をグイグイ引き付ける必要のあるスタイルのネタだ。これを正しく面白いネタにするためには、杉山はどうしてもツッコミの言葉を削る必要があり、その結果、クドさは失われて面白さが残るようになったのである。『爆笑オンエアバトル』でこのローテーション漫才がオンエアされたのは2007年6月のこと。その舞台で彼らは、これまでの自己最高キロバトルである457kbを大幅に更新、529kbという大台を叩き出した。これで勢いがついたのか、コントも高く評価されるようになり、2008年10月にオンエアされたコント『迷子センター』では、525kbという自己最高に近い数字を記録した。薄いボケにクドすぎるツッコミというどうしようもないトリオだった我が家は、三年を費やして立派なネタ職人に成長したのである。

しかし、一方で彼らのスタイルには限界が生じていた。我が家のネタは基本的にシチュエーションコントのスタイルを取っていたが、そこで演じられるキャラクターは三人とも殆ど同じだったのである。それがどんなに面白いキャラクターであったとしても、そればかりを見せつけられていれば、食傷気味になっても仕方がない。

そこで彼らは、これまでに培ってきた三者三様の個性を継続しつつ、シチュエーションをドラマチックに仕立てることで、我が家のコントに新しい世界観を見出そうとしたのである。そして、その結果が第11回チャンピオン大会ファイナルで披露されたコント『野球拳』だった。その内容は「会社の飲み会で、コンパニオンと野球拳をすることになった部長が、その途中でコンパニオンが数年前に家出した実の娘だということを知る」という、かなりドラマチックなもの。その思わぬ展開に感動を覚えた観客もいたが、笑いの数は圧倒的に少なく、結果は350kb(/1080kb)とかなりの低記録だった。しかし、その後の我が家のコントに見られる傾向を考えると、彼らにとってのこのコントはとても重要だったと言えるだろう。

現在の我が家は、ロッチとともに事務所の最注目若手芸人として活躍中だ。但し、その活動状況は、はっきり言って芳しくない。コントだからこそ成立していたコミカルなやりとりが、バラエティ番組では通用しないためだろう。どちらかというと、このユニットはバラエティ番組よりも芝居に向いているように思う。俳優志望だった坪倉は言わずもがな、独特の味がある谷田部も意外と芝居に向いているのではないか。唯一、杉山の演技力が気になるところではあるが、それもいずれマシになっていくことだろう。ひょっとしたら、彼らは今後シティボーイズの様なスタイルで活動していくべきなのかもしれない。あくまで「かもしれない」だが。


・本編(70分)

2005年6月の初オンエアから、2009年3月の第11回チャンピオン大会までに我が家が披露してきたネタ全18本のうち17本のネタ(第9回チャンピオン大会セミファイナルで披露されたネタを除いた全ネタ)を収録

・特典映像(34分)

爆笑オンエアバトル』への熱い思いを語るトークと、いろいろなテーマについて我が家のなかでランク付けする「我が家ランキング」を収録