菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ホンジャマカライブ“成人” ~20周年すぎてました~』

ホンジャマカ“成人”~20周年すぎてました~ [DVD]ホンジャマカ“成人”~20周年すぎてました~ [DVD]
(2010/10/27)
ホンジャマカにしおかすみこ

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ある時期、コンビとして活動するホンジャマカの姿を、テレビで頻繁に見かけた。ホンジャマカといえば、恵俊彰石塚英彦から成るお笑いコンビだ。しかし、ここ数年はそれぞれのピンによる仕事が殆どで、一部レギュラー番組を除けば、彼らがコンビとしてテレビに出演することはまったく稀であった。それなのに何故、彼らは再びコンビとして自らを主張するようになったのか。その理由が、今作に収録されているライブ『成人』である。彼らはこのライブを宣伝するために、数々のバラエティ番組にコンビとして出演し、多くのかつてを知っている人たち、或いはかつてを知らない人たちに向けて、コント師としてのホンジャマカが復活したことを伝えたのだ。

『成人』は2010年3月、ホンジャマカ結成二十周年を記念して行ったライブだ。ただ彼ら曰く、このライブが行われた2010年の時点で、ホンジャマカは既に結成二十周年を超過していたらしい。その為、ライブのサブタイトルには「20周年すぎてました」とある。こういうノリが許されるところに、芸人ならではのユルさを感じずにはいられない。なお、このライブには彼らの事務所の後輩芸人である「にしおかすみこ」「山本高広」「我が家」「フォーリンラブ」も出演。これは、そもそも“ホンジャマカ”がコンビではなく、11人のお笑い芸人集団としてスタートを切ったことを意識しているのだそうだ。……少し人数が足りない気がしないでもないが、あまり気にすることでもないだろう。

本編を再生すると、大きめのステージに二人きりで繰り広げられるコントが始まった。今が旬の若手芸人が多数ゲストとして出演しているので、てっきりオープニングから大人数で騒がしいコントで始まるものだと思っていたから、些か拍子抜けだ。だが、冷静になって考えてみると、結成二十周年を記念して行うライブなのだから、二人きりでオープニングコントを行うことは、非常に利に適っている。ネタは『おさえのきかない田中君』。あっさりとしたショートコントだが、それぞれピンで見せている芸人としての姿とはまったく違った、れっきとしたコント師としての雰囲気を漂わせており、一時的とはいえ、ホンジャマカは今でもコント師として現役であることが伝わってくる演技だった。

コントは続く。なんでもかんでも決めつける男に戸惑いを隠せない『決めつける男』。デパートの館内放送が止め処無い妄想を膨らませる『お呼び出し』。単なる退屈しのぎのような“ギリギリ”を心の底から楽しむ二人のバカさが楽しい『ギリギリボーイズ』。いずれのコントも面白いのだが、その発想は些か古臭い。まあ、過去のネタを再演しているので、仕方がないと考えるべきか。それに、結成二十周年を記念して行ったライブに、発想の斬新さを求めている人もきっと少ないだろう。これはこれで、いいのである。きちんとゲスト参加の若手たちに見どころが用意されている点も、評価できる。我が家の“くるくる漫才”フォーマットが自然にコントの中で行われるくだりには、感動すら覚えた。ただ、後半の『ほめ合い倶楽部』はちょっと期待外れ。シティボーイズを彷彿とさせるタイトルに、さぞかし味のあるコントが披露されるのだと思っていたのだが、特に奥行きのない上滑り気味なネタだった。もうちょっと設定を掘り下げていたら、味わい深いコントになっていたと思うのだが……。惜しい。

メインであるホンジャマカは勿論のこと、ゲストとして出演している芸人たちの特色もきちんと引き出されていた今作。全体的にソツが無く、きちんと安定して面白かった。ただ、一方で「ゲストを迎えているからこそ起こる化学反応」がまったく見られず、単にホンジャマカ+若手芸人」という加算以上でも以下でもない出来だった、という見方も出来るかもしれない。それが求められているかどうかは分からないが。


・本編(115分)

「おさえのきかない田中君 パート1」「決めつける男」「お呼び出し」「ギリギリボーイズ」「神様見てますよ」「遅れツッコミの会」「先ツッコミの会」「ほめ合い倶楽部」「出張お父さん」「おさえのきかない田中君 パート2」

・特典映像(29分)

「メイキング映像」「ラジオドラマ(擬音擬態語教室/娘さんを僕にください/手紙)」