菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『JUNGLE BEST POCKET』

JUNGLE BEST POCKET [DVD]JUNGLE BEST POCKET [DVD]
(2011/09/07)
ジャングルポケット

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熱帯雨林の様な情熱的パッション。

ジャングルポケットのコントといえば『コンビニ』、という印象が強い。ごく当たり前なコンビニの日常風景に飛び込んできて、並んでいる客を押しのけて「助けて下さい!」と絶叫する一人の男。何が起こったのかと尋ねてみると、「トイレ、貸して頂きたいんですが!」。しかし、このコンビニではトイレを貸すことが出来ない。「ルールですから!」。そこから、二人のやり取りはより激しさを増していく。「いつまでルールに縛られてるんだ!」「オレは貴方の様に強い人間じゃない!」……。

その根底にあるのは、ただコンビニにトイレを借りに来た男と、それを断ろうとするコンビニ店員による日常茶飯事のやりとりなのだが、二人の感情の激しさが、その日常を非日常的なコント世界へと変えてしまう。こういうコントは台詞回しも大事だが、なによりも状況を演じている二人の演技力が重要だ。中でも、身体全体から妙なオーラを発散している、斉藤の存在は大きい。『コンビニ』が面白いのは確かだが、もし斉藤がいなければ、ジャングルポケットは記憶に残るトリオにはならなかったかもしれない。

ジャングルポケットのコントは往々にして、斉藤の存在感を中心に展開する。修学旅行最後の夜に女子部屋へと入り込もうとする斉藤が、教師の前で本気を見せる『修学旅行』も、成績が落ちた優等生の前にライバル然とした斉藤が現れ、自身の成績の伸び率を自慢する『放課後』も、完全犯罪を成し遂げてきた斉藤が、名探偵のあまりに的外れの推理に翻弄される『名探偵』も、斉藤の存在感がいなければ成立していないだろう。だが、それは逆にいえば、彼らが斉藤の存在感を正しく認識し、受け入れているということを意味している。芸人を志した以上、自分が目立ちたいという気持ちは誰もが持っている筈なのに、それを抑えて、斉藤をアピールする。まさに、「楽な仕事じゃないよ!」。

ただ、本作を見てみると、斉藤ばかりが独特の存在感を放っているわけではないようだ。特典映像に収録されている「今さら聞けない誰でも出来る一本の取り方~初級編~」を見て、僕は初めて太田の存在感に気付かされた。ジャングルポケットのコントにおいて、太田は斉藤の相手をする立場にあることが多い。それ故に、太田がどんなにボケたとしても、斉藤のキャラクターを引き出す導入になってしまいがちだ。しかし、この特典映像において、様々な人物を相手に次々と柔道技をかけていく太田の姿は、なんか変だ。本来の面白さ以上の何か、変な存在感を主張している。それを言葉にするならば、ダチョウ倶楽部におけるネイチャージモンの様な、そんな野性味を醸し出している。もしかしたら、斉藤よりも末恐ろしい何かを隠し持っているのかもしれない。今後、彼が斉藤の陰で何を見せていくのか、注目していきたいところである。(聞いたところによると、以前に彼らがレギュラーを務めていた番組「コンバット」では、彼のそういった側面が披露されていたらしいが……) こうなると、もしかしたらツッコミの武山にも、何か隠された面白さがあるのではないかという気もしてくるのだが……どうだろう。

湿度の高い情熱を放ちながら、無意味な笑いを全力で放ち続けているジャングルポケット。現在、彼らは同じ事務所に属するパンサー・ジューシーズとともに、深夜バラエティ番組『333 トリオさん』にレギュラー出演中だ。その番組で、果たして斉藤は、太田は、武山は、どんな存在感を発散しているのだろうか。彼らほどの実力と了見があるならば、いずれゴールデンタイムでお目にかかる日も来るだろう。今はとりあえず、その日が楽しみだ。


・本編(76分)

「漫才 BBQ」「修学旅行」「試合の後」「花子」「オフィス」「コンビニ」「放課後」「名探偵」「初めてのゲーム」「告白」「狩り」「スナック」

・特典映像(71分)

「先輩襲撃シリーズ 下剋上!ジャングルポケット天下統一への道 ~ジャマな先輩を襲撃せよ~」(出演:トータルテンボス、ライセンス、NON STYLE、しずる+?)

「今さら聞けない誰でも出来る一本の取り方 ~初級編~」

「ジャンポケ斉藤の絶対負けられない戦い ~斉藤慎二vs富士急ハイランド~」