菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『シティボーイズ ファイナル Part.1「燃えるゴミ」』

2015年6月19日から29日にかけて東京グローブ座で開催されたシティボーイズライより、27日の模様を収録。

 

1979年の結成以降、時代の流行に流されることなく、普遍的でナンセンスな笑いを生み出し続けてきた彼ら。客演に若手を採用したり、舞台の責任者である演出家を入れ替えたりして、常に古くない舞台を作り上げるように心掛けてきた。しかし、メンバー全員が還暦を迎え、肉体的な衰えを感じ始めたからなのか、今回の公演で遂に“ファイナル”とライブの終了を示唆するタイトルを掲げた。作・演出には五反田を中心に活動している劇団“五反田団”の主宰・前田司郎、音楽監督には大竹まことの実子でミュージシャンとしても活動している大竹涼太を迎えている。

 

物語の舞台はとある団地の一角にあるゴミ収集所。不法投棄されたゴミが溜まりに溜まって、とうとう業者にも見放されてしまった場所に、三人の男たちは毎日のように集まっていた。その日も彼らはゴミ収集所にやってきた。ふと、一人の男(きたろう)が、一枚の紙切れを二人に見せびらかし始める。その紙には電話番号が書かれていた。男はその紙を、道ですれ違った凄い美人の女性が、自分に拾わせるように落としたものだという。二人に促され、男はその番号に電話をかけてみるのだが……。

 

本作では、このゴミ収集所の三人を中心に、彼らを取り巻く様々なシチュエーションがコントとして描かれている。基本的に、それぞれ独立したコントが演じられていた過去のシティボーイズライブと比べて、かなり大胆な構成になっているといえるだろう(三木聡が演出を務めていた『愚者の代弁者、うっかり東へ』『丈夫な足場』はその趣があったが)。個人的には、『キングオブコント2013』王者・かもめんたるの単独公演を彷彿とさせられた。舞台という表現方法に固執する人の趣向は、どうしても似てきてしまうものなのかもしれない。

 

とはいえ、演じられているコントは、それぞれまったく違った笑いを生み出している。事実、先のゴミ収集所のシーンが終わると、続いて始まるのは忍者コントである。現代を舞台とした台詞回しの面白さが滲み出たコントから、黒装束の忍者(きたろう)とピンク装束の忍者(大竹まこと)が某高橋英樹を彷彿とさせる派手な衣装のお侍(斉木しげる)とぐっずぐずに立ち回る古き良き時代の喜劇へと変わるギャップの激しさが、彼らの表現の幅広さを物語っている。その後も、某美術館の警備員が某モナリザの絵と愛を語り合うなど、奔放な表現が繰り広げられている。

 

しかし、物語が進むにつれて、それらの出来事は彼らにとっての走馬灯であると気付かされる。もう仕事に行かなくても良い身分となった彼らは、まるで自らがいずれ火葬場で燃やされる運命にある“燃えるゴミ”であるかのように、またゴミ収集所へと足を運ぶ。でも、それは決して、絶望的なことではない。三人の燃えるゴミたちには、それまでに過ごしてきた人生の道程がある。燃えて尽きるまでは、何が起こるか分からない。それはそのまま、シティボーイズ自身の現状を意味している。最後の最後に大竹まことが「じゃあ、また!」と言ってのけたように、彼らはまだ燃えるゴミのまま。これから先、何が起こるかなんて、分からないじゃないか……。

 

特典映像には、斉木しげるが完全にネタを飛ばしてしまったハプニング映像と、三人に対して様々な質問をぶつけるスペシャルインタビューを収録。「今回、何故“ファイナル”なのか?」「今、気になる俳優・コメディアンは誰ですか?」「コントの舞台で一番大切なことはなんですか?」「今回の舞台で一番困ったシーンは?」などの、ちょっと気になる質問に対して真摯に応えている。大竹まことが『極北ラプソディ』の瑛太と高橋昌也を称賛していたのは、ちょっと興味深かった。

 


■本編【約99分】

 

■特典映像【約23分】

「舞台特別映像「家族コント ~斉木しげる大失態~」」

スペシャルインタビュー(大竹まこと・きたろう・斉木しげる)」