混沌ナンセンス『セプテンバー・ホール 〜9月の散らかった穴〜』
O.N.アベックホームラン「セプテンバー・ホール~9月の散らかった穴~」 [DVD]
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2008/01/16
- メディア: DVD
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ライブのオープニング。黄色の背景に、三つの穴。その穴の一つから、温水が首だけ出している。その隣の穴からは、大堀が顔を出している。大堀はどうして自分がこんな状況になっているのか、分からない。温水は、どうも詳しく語ろうとせず、大堀はどんどん不安になっていく。と、そこで急にフランス的な音楽が流れ始める。奥から演出の細川扮する料理人が現れる。手には、なんだかよく分からない白い物体。その白い物体を温水の口に入れる細川。すぐにお腹がいっぱいになり、もう食べられないという顔をする温水。すると、その残りを全て大堀に食べさせる細川。ウンザリした顔になる大堀に、「実は僕はお腹が空いてるんですよ……」と語り始める温水。
「……凄いぞ! 何か知らないけど、凄いぞ!」というのが、最初の感想だった。「シティボーイズミックス」や「男子はだまってなさいよ!」を初めて見たときと同じような、妙な衝撃を覚えた。安定感を感じさせつつも、とんでもなく不安定であるような一面も見せている、大堀こういちの演技。様々なキャラクターを演じて見せるも、金太郎飴の様にどれを取っても同じな温水洋一の演技。この二つの演技を上手く融合し、なんだか混沌とした世界を作り上げる、細川徹の演出。そうだ、これは混沌だ。舞台の上に、我々が生活している世界とは違う、似て非なる別の混沌とした世界が生まれているのだ。お見合い相手の女性が、何故か肩からネジを生やしたオッサンという『お見合い』。タレントの温水洋一が、様々な民家に泊めてもらう番組ロケを描いた『田舎に十泊』。子供が作った、巨大なタイムカプセルに父親が詰め込まれる『タイムカプセル』。これら全てのコントが、まったくもって混沌なのだ。
テレビなどで見られるコントを楽しんでいる人が、彼らの舞台を見ると、恐らく拒否反応を起こしてしまうだろう。人によっては、この舞台を“幼稚”に感じてしまうかもしれない。事実、そう思えても仕方ないような場面も幾つかあった。でも、その幼稚さに徹底的にこだわったとき、そこにはとてつもない混沌が生まれる。そんなことを、至極感じさせられたライブだった。やっぱりこの三人は凄いよ、うん。
・本編(83分) 「ちょっと食べる」「お見合い」「田舎に十泊」「笑いながら死ぬ」「タイムカプセル」「熱と温泉」「二人の節子さん」「セプテンバー・ホール」 ・特典 「8月と9月の散らかる前の穴」(80分) 「11月の散らかった穴で座談会」
「8月と9月の散らかる前の穴」は、ライブドキュメンタリー。公演直前にカットされた演目『地獄キャンプ』をさりげなく収録。個人的には面白かったと思う。「11月の散らかった穴で座談会」は細川徹・大堀こういち・温水洋一による副音声。ライブに関係あること・関係ないことを、ダダ喋り。