『爆笑レッドカーペット~花も嵐も高橋克実~』『爆笑レッドカーペット~克実より愛をこめて~』
爆笑レッドカーペット ~花も嵐も高橋克実~ [DVD] (2010/03/30) 今田耕司高橋克実 商品詳細を見る |
爆笑レッドカーペット~克実より愛をこめて~ [DVD] (2010/03/30) 今田耕司高橋克実 商品詳細を見る |
バラエティ番組のDVDを購入するということは、是即ち、その番組が放送されていた時代の空気を買うことと同義である、と考えている。これは、ウケのいいフォーマットに時代の要素を散りばめるだけであることの多いテレビドラマに対し、その瞬間の視聴率を意識しているバラエティ番組は、結果的にその時代の空気を取り込んでしまっているのではないか、という考えによるものだ。勿論、全てのバラエティ番組がそうだというではない。中には、ソフト化することを前提とし、普遍的な面白さを狙っているバラエティ番組も、少なからず存在している。が、バラエティ番組の姿勢としては、前者の方が正しいように思う。テレビ番組は、あくまでもテレビの中でリアルタイムに評価されるべきだからだ。
「爆笑レッドカーペット」がまだ特別番組として放送されていた頃のネタを収録している今作にも、同様の期待をしていた。要するに、特番時代の「爆笑レッドカーペット」が放送されていた頃の、時代の空気を感じることが出来るのではないか、という期待である。ただ、この特番が放送されていたのは、今からたった三年前のことなので、時代の空気もへったくれもないのではないか、という意見もあるかもしれない。しかし、三年という月日の経過は、決して短いものではない。それが例え一年前であったとしても、そこには確実に時代の変化が生じている筈である。その時代の変化を、どれだけソフトの中に収めることが出来ているか、それが今作に対する評価の決め手になっているといっても過言ではない。
今回リリースされた「爆笑レッドカーペット」のDVDは、二つの作品に分かれている。収録されている映像は、どちらも過去の特別番組で放送されたものだが、発売元の違いにより、その傾向は少なからず異なっている。そのため、今回はそれぞれを違った作品として、取り上げた。
まずは『爆笑レッドカーペット ~花も嵐も高橋克実~』を見る。発売元は、ワタナベ、サンミュージック、タイタン、松竹芸能、マセキ芸能社、人力舎、太田プロの以上七社に所属する芸人のDVDを専門的に取り扱っている販売レーベル、コンテンツリーグだ。だが、今回はその七社以外の芸能事務所に属している芸人のネタも収録(オードリー、タイムマシーン3号、バナナマン等)。つまり今作は、特番時代の「爆笑レッドカーペット」で披露された、吉本興業に所属していない芸人のネタを収めた作品といえるだろう。
結論からいうと、今作からは時代の空気があまり感じられなかった。その原因として、二つの理由が考えられる。一つ目の理由は、当時の出演芸人の多くが、既に芸風を完成させていたために、今とそれほど変化を感じさせなかったから。二つ目の理由は、ナイツ、U字工事、いとうあさこ等といったレギュラー放送時にメイン出演者となった面々が、特番時代にまったく出演していなかったから。この二つの理由が合わさった結果、今作はスタイルが完成されたベテラン若手芸人によるネタばかりが収録された、時代性を感じさせない単なるネタベストDVDと化してしまったのである。これは当時の状況を反映した結果ではない。初期の番組を代表する存在だった柳原可奈子や、一発屋からの再起をかけようとしていた波田陽区らのネタを編集で削ってしまったが故の結果である。なんとも勿体ない。ただ、今となってはあまり見ることがないだろう、自信満々にネタを披露する狩野英孝の姿を見ることが出来た点は、評価したい。
・非吉本興業所属芸人出演リスト
(※カッコ内に名前がある芸人のネタは未収録)
■第一回
パッション屋良、超新塾、ザ・たっち、TKO、バカリズム、ホリ、春田和幸、クールポコ、安田大サーカス、ますだおかだ、猫ひろし、にしおかすみこ、柳原可奈子
■第二回
超新塾、(パッション屋良)、TKO、クールポコ、EE男、(にしおかすみこ)、ドラハッパー、ハレルヤ大野、春田和幸、狩野英孝、キャン×キャン、やまもとまさみ、(波田陽区)、バカリズム、アントキの猪木、(柳原可奈子)
■第三回
流れ星、クールポコ、ヤポンスキー、波田陽区、小島よしお、超新塾、TKO、パッション屋良、バカリズム、キャン×キャン、狩野英孝、アントキの猪木、タイムマシーン3号、花香芳秋、マシンガンズ、(柳原可奈子)、我が家
■第四回
超新塾、ヤポンスキー、くじら、春田和幸、クールポコ、小島よしお、チョップリン、ジジ・ぶぅ、キャン×キャン、マシンガンズ、バカリズム、狩野英孝、TKO、オジンオズボーン、我が家、アントキの猪木
■第五回
超新塾、キャン×キャン、TKO、髭男爵、ザブングル、(にしおかすみこ)、クールポコ、ヤポンスキー、トップリード、狩野英孝、我が家、(こまつ)、(モエヤン)、鳥居みゆき、こばやしけん太、バカリズム、アントキの猪木、マシンガンズ
■第六回
(山本高広)、髭男爵、まえだまえだ、ザブングル、ヒデヨシ、TKO、オードリー、こまつ、ななめ45°、慶、クールポコ、我が家、狩野英孝、(モエヤン)、アントキの猪木、マシンガンズ、こばやしけん太、なすなかにし、(松原タニシ)、超新塾、ロッチ、バカリズム、バナナマン、(さだ陽区)、小島よしお、(柳原可奈子)、キャン×キャン、鳥居みゆき
続いて『爆笑レッドカーペット ~克実より愛をこめて~』を見る。発売元は、吉本興業関連の作品を取り扱っている専門レーベル、YOSHIMOTO R and C CO.,LTD.だ。もちろん、今作でネタを披露している芸人は、全て吉本興業に所属している。今回、吉本興業が自身のレーベルからDVDをリリースすると聞いたときは、所属芸人のブランド性を高めるためにやっている戦略的なことだと思っていたのだが、こうして見ると納得だ。所属している芸人の数が、あまりにも多すぎる。
コンテンツリーグ版とは違い、こちらは明確に時代の空気を感じさせていた。ショートネタブームをまったく感じさせない第一回放送の出演陣から、番組で注目されていた芸人たちが残されていき、ショートネタブームの訪れを確信的なものにした第六回放送に至るまでの流れが、実に面白い。ムーディ勝山→藤崎マーケット→なだぎ武(ディラン)→エド・はるみと、旬となる芸人が上手い具合に入れ替わっていく一方で、しずる、ジャルジャル、フルーツポンチ、くまだまさし、ハイキングウォーキングなど、番組の常連となる芸人が着実にその存在感を示していく、そのバランス感! とにかく素晴らしいの一言だ。
・吉本興業所属芸人出演リスト
(※カッコ内に名前がある芸人のネタは未収録)
■第一回
笑い飯、ストリーク、オオカミ少年、鎌鼬、たむらけんじ、天津、アイパー滝沢、ハイキングウォーキング、若井おさむ、ギャロップ、くまだまさし、あべこうじ、FUJIWARA、とろサーモン、博多華丸・大吉、ダイノジ、ムーディ勝山、品川庄司、チュートリアル
■第二回
ストリーク、カナリア、若井おさむ、藤崎マーケット、ジャルジャル、ダイアン、タカダ・コーポレーション、ハイキングウォーキング、チャド・マレーン、トータルテンボス、ダイノジ、ムーディ勝山、鎌鼬、ブラックマヨネーズ、笑い飯、博多華丸・大吉、チュートリアル
■第三回
藤崎マーケット、ハイキングウォーキング、浅越ゴエ、ガリバートンネル、スマイル、ブラックマヨネーズ、ふくろとじ、COWCOW、チャド・マレーン、ジャルジャル、ダイアン、永井佑一郎、ムーディ勝山、フルーツポンチ、カナリア、サカイスト、くまだまさし、しずる、友近、えんにち、(ダイノジ)、鎌鼬、なだぎ武
■第四回
ギャロップ、永井佑一郎、サカイスト、NON STYLE、男と女、スマイル、藤崎マーケット、鈴木つかさ、エド・はるみ、もう中学生、ムーディ勝山、たむらけんじ、カナリア、とろサーモン、しずる、(平成ノブシコブシ)、タカダ・コーポレーション、(中川家礼二)、くまだまさし、ジャルジャル、フルーツポンチ、ハイキングウォーキング、(ダイノジ)、村上ショージ、FUJIWARA、フットボールアワー
■第五回
藤崎マーケット、NON STYLE、2丁拳銃、ジョイマン、なかやまきんに君、(ブラックマヨネーズ)、カナリア、(ムーディ勝山)、チョコレートプラネット、永井佑一郎、はんにゃ、FUJIWARA、スマイル、しずる、ジャルジャル、チーモンチョーチュウ、世界のナベアツ、ストリーク、(ピース)、ハイキングウォーキング、(なだぎ武)、フルーツポンチ、くまだまさし
■第六回
NON STYLE、永井佑一郎、天津木村、若月、上原チョー、ムーディ勝山、ハリセンボン、エド・はるみ、ギャロップ、ジョイマン、中山功太、渡辺直美、ザ・パンチ、もう中学生、アームストロング、くまだまさし、ニブンノゴ!、ものいい、なだぎ武、しずる、FUJIWARA、(2丁拳銃)、ジャルジャル、フルーツポンチ、はんにゃ、世界のナベアツ、藤崎マーケット
最後に余談だが、今作には2008年1月に放送された「新春ゴールデンレッドカーペット」が収録されていない。幾つかのネタが被ってしまっているからなのだろうが、チュートリアルの“ヨギータ”や東京ダイナマイトのショートコント、博多華丸・大吉のコントは、ちょっと観たかった気もする。恐らく今後、レギュラー放送を収めたDVDもリリースされるだろうから、その時に特典映像でもなんでもいいから、収録してもらえないものだろうか。ダメかな。ダメだろうな。うーん。
『爆笑レッドカーペット ~花も嵐も高橋克実~』
・本編(151分)
・特典映像(18分)「カムバックレッドカーペット」
『爆笑レッドカーペット ~克実より愛をこめて~』
・本編(202分)
・特典映像(42分)「カムバックレッドカーペット」