菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

カンニング竹山単独ライブ『放送禁止 Vol.2』

カンニング竹山単独ライブ「放送禁止 Vol.2」 [DVD]カンニング竹山単独ライブ「放送禁止 Vol.2」 [DVD]
(2010/03/25)
カンニング竹山

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まさかまさかの、第二弾である。前作がそれほど良い出来ではなかったので、一回コッキリで終了するものだと思っていたのだが。こちらが思っていた以上にDVDが売れていた、ということなのだろうか。ジャケット裏に書かれた“ストレスのたまった大人たちに贈る”という言葉の通り、ストレスのたまった大人たちが買ったのだと。……もう少し有効的なお金の使い道について、考えるべきではないかと思う。前作も今作も自腹で買っている人間が言うことではないか。まあ、僕はそんなにストレスがたまっていないので、別のいいのである。ストレスがたまっていない大人にも贈られるぞ。うん。

前回のライブでは「金融会社から多額の金を受け取る方法」「TENGA制作ドキュメンタリー」「どう考えてもカタギじゃなかった父親の話」など、まさに“放送禁止”な漫談を披露していた竹山さん。これらのネタ、確かに面白かった。面白かったのだが、どうも竹山さんらしさが出ていなかったような気もした。金融会社の話も、TENGAの話も、父親の話も、間違いなく竹山さん絡みの話ではあるのだけれども、どうも自身による話ならではの生々しさ、リアリティが無かったというか。これは竹山さんの話術が足りないとか、そういうことではないように思う。おそらく、構成・演出の鈴木おさむが出しゃばり過ぎて、竹山さんの味を殺したせいだろう。まったく、これだから売れっ子は困る。

それから一年を経て、再び行われた単独ライブ『放送禁止』。前回と同様、やはりテレビでは放送できないようなアウトローなネタが披露されるのだろうと思っていたが、これが随分と様子が違っていた。そもそも、今回のライブの発端となっているのは、ライブから六ヶ月前に起こったというカンニング竹山の浮気発覚”事件だったという。……そんな事件があったことすら知らなかった僕は、この時点で完全に置いてきぼりだ。まあ、特に問題はないのだが。今回のライブは、その“カンニング竹山の浮気発覚”における全ての出来事を再現した、いわばドキュメンタリー的な内容になっていた。要するに「浮気しちゃったけれど、それにはちゃんと理由があったんですよ」ライブである。言い訳だけで二時間もやってしまうんだから、スゴいね。

今回のライブは三部構成になっている。第一部は「真実」。どうして浮気をしてしまったのか、その真実について一時間近く説明するというものである。……そう。一時間ずっと、竹山さんが一人で喋る。これははっきり言って、辛い。竹山さんの喋りは漫談家の喋りではないから、こういう長丁場のトークにはあまり適していないのに、どうしてこういうことをするのか。しかも、途中にチャプターもついてないから、一度停止してしまったら、話の初めからその場面までひたすら早送りしなくてはならない。ああ、面倒臭い。面倒臭いが、話の内容はなかなか興味深い。芸能界と週刊誌業界の間に蠢く有象無象の世界が、ほんの少しだけ垣間見えたような、そういう話だった。そっち方面の話が好きな人は、観るべきなのかもしれない。まあ、それほど深い話ではないのかもしれないが。

続く第二部は「俺と薄毛のブルース」。これは現在、竹山さんがイメージキャラクターを務めている育毛剤“リアルラゾン”に関するエピソードを、何故かブルース調で歌いあげるというものだ。先にも書いた様に、今回のライブはあくまでも“カンニング竹山の浮気発覚”を中心に作られているため、このネタはいわば閑話休題の様なもの。しかし、今回のライブで、最も“放送禁止”な内容だったのは、このネタだった。正直、浮気の話とか聞いている場合じゃない。一言で説明するならば、このネタ、鮮烈なスポンサー批判である。衝撃。

最後の第三部は「裁判」。第一部の「真実」を受けた竹山さんの奥さんが、竹山さんにどういうリアクションを取ったのかを完全に再現した、ちょっとしたコントの様なものを披露している。はっきり言ってしまうと、とりたてて面白い展開はここにはない。ここで演じられているのは、ダメ芸人の夫とそれを温かく見守る妻という、古典落語に出てくる夫婦の姿そのものでしかない。いや、探したら多分、こういう噺あるんじゃないだろうか、本当に。

なお、今作には、そんな美談で終わらせたくない人に配慮したのだろうか、特典として有吉弘行とすぎ(インスタントジョンソン)による副音声コメンタリーを収録している。悪口に定評のある有吉さんと、プライベートでもよく竹山さんと飲んでいるというすぎさんによるコメンタリーは、非常に客観的に芸人・カンニング竹山のダメな部分を指摘しており、実に合点がいった。感動してる場合じゃないよ、まったく。


・本編(122分)

「act.1 真実」「act.2 俺と薄毛のブルース」「act.3 裁判」

・特典

有吉弘行・すぎ(インスタントジョンソン)による副音声コメンタリー