菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

インスタントジョンソン単独ライブ『文殊の知恵』

単独ライブ「文殊の知恵」 [DVD]単独ライブ「文殊の知恵」 [DVD]
(2012/02/22)
インスタントジョンソン

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太田プロダクションに所属するお笑いトリオ、インスタントジョンソンが2011年9月に行った第三回単独ライブ「文殊の知恵」の模様を収録したDVDが、先日リリースされた。彼らの単独ライブがDVD化されるのは、これで三回目。つまり、第一回単独ライブから、欠かすことなくソフト化され続けているということになる。そういった例は非常に少なく、僕の知っている限りではアンガールズしか該当する芸人はいない。「爆笑オンエアバトル」「エンタの神様」「爆笑レッドカーペット」などの時代を牽引するネタ番組に出演していながら、大ヒットに恵まれず、いつまで経っても売れそびれているイメージの強い彼ら。しかし、単独ライブがソフト化され続けているという事実は、そんな彼らが凡百の芸人にはない魅力を持っていることを意味している。……なんで売れないのかなあ。

インスタントジョンソンといえば、「おつかれちゃ~ん!」などに代表されるゆうぞうのギャグや、キテレツな発想で生み出されるじゃいのオリジナルソングなどが印象的だが、単独ライブではそれらの要素は控えめになり、トリオとしての持ち味をきちんと活かしたコントが演じられている。例えば、『落とし前』というコントでは、子供が出来たので組から抜けてカタギになろうとしているチンピラ(じゃい)が、若頭(すぎ。)にいわれて組長(ゆうぞう)のところへ落とし前として切断した親指を持ってくる。ヤクザ映画などでよく目にする光景だ。それを目にした組長は、渋い表情のまま口を開く。

組長「いいよ……いらないよ……」

チンピラ「いや、そんなことをいわずに、受け取ってください!」

組長「いいよ……恐いよ……指とか貰っても困るし……それに、そんなことしなくても、普通にやめてよかったよ……」

チンピラ「早まったー!早まったー!無駄に指、無くなっちゃったー!最悪だよ!なんだよ、これ!ちょっと兄貴!兄貴が指落とせって指落として、なんかいらないとかいわれてるじゃないすか!」

若頭「まあ、ケジメだからなあ」

チンピラが切り落とした指を恐がる組長というギャップも面白いが、そのことに慌てふためくチンピラと他人事のように平然とする若頭のギャップも、これまた面白い。この後も、子供が生まれるというチンピラに「小指無かったら不利じゃない?」と心配する組長や、指だけだと味気ないからと指に様々な要素を備え付けたという妙な遊び心を発揮したチンピラなど、三者三様のキャラクターが絶妙な塩梅で絡み合っていく。

この後も、痴漢が出たと駅長室に飛び込んできた男女のやりとりが意外な真実を露わにしていく『痴漢』、友達の兄貴が話す雑学が全て嘘だということを知って、それが逆に面白いからと嘘をどんどん引き出していく『雑学王』、ちょっと売れ始めた役者が、マネージャーとともに色んな芸能人のサインが貼られている有名レストランでサインをねだられるんじゃないかと期待する『サイン』など、トリオだからこそ成立するコントばかり。中でも、交通事故で死亡した男が訪れた死後の世界が、話に聞いていた場所とはまったく違うことに戸惑いを隠せない『死後の世界』は必見の一本。インスタントジョンソンらしからぬ、かなり挑戦的なコントに仕上がっている。勿論、『応援団』の様に、テレビでお馴染みのネタもある。彼らの関係性と同様、本作も全体のバランスが絶妙の一品といえるだろう。

ちなみに、特典映像には、ライブで上映された幕間映像と思われるVTRが収録されている。じゃいが歌うやけにクールなオリジナルソング「サンドイッチ大統領」を初めとして、三人の画力が確認できる「インジョン美術館」、ゆうぞうが様々な物体に愚痴をこぼす「愚っ痴ゆうぞう」など、ここでも彼らの面白さを体感することができる。中でも、すぎ。が某有名コマーシャルを真似て、様々な場所で奇妙なダンスを披露する「踊るすぎ。」は面白い……というより、なんだか楽しい映像に仕上がっている。太田プロ芸人のファンなら、必見。


・本編(62分)

「表彰台」「応援団」「落とし前」「痴漢」「雑学王」「死後の世界」「サイン」「探します」「エンディング」

・特典映像(25分)

「サンドイッチ大統領」「シガニーを探せ!」「インジョン美術館」「愚っ痴ゆうぞう」「試合の実況」「踊るすぎ。」