菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『グランジ BEST NETA LIVE』

グランジ BEST NETA LIVE [DVD]グランジ BEST NETA LIVE [DVD]
(2013/11/13)
グランジ

商品詳細を見る

グランジ BEST NETA LIVE』を観た。

グランジよしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属する三人組だ。メンバーは、ガラ声のツッコミ担当・佐藤大、三人の中では一番イケメンなボケ担当・遠山大輔、長身で不穏な気配を漂わせている最年少のボケ担当・五明拓弥。当初、彼らは佐藤と遠山のコンビとして活動していたが(当時からユニット名は“グランジ”だったらしい)、2005年に五明が加入、現在のトリオになったのだそうな。確か、ネプチューンインスタントジョンソン東京03もコンビからトリオになった筈。彼らもいつかそんな人気者になっていくのかしらん。

この作品は、グランジが2013年8月24日にルミネtheよしもとで開催した、ベストライブの模様を収録したDVDだ。聞いたところによると、本作が1万枚売れないと、彼らはよしもとを解雇されるのだという。なんだかとっても理不尽な話だけれど、電波少年をリアルタイムで熱心に見ていた者としては、そんな状況をついついニヤニヤしながら見てしまっている。売上1万枚を達成したアカツキには、きっとその過程を撮影したドキュメンタリーDVDをリリースしてくれるだろうから、今から楽しみだ。……まったくカメラに収めていないなんてことないよね? だとしたら、とってももったいないぞ。

そんなことを思ったりなんかしちゃったりしながら、本編をポチッと再生。

いきなり映し出されたのは、ステージの真ん中に配置された巨大な日めくりカレンダー。日付は“平成25年8月24日”。このライブが開催された当日だ。しばし、それを見させられていると、舞台袖からメンバーの一人である遠山さんが静かに姿を表す。そして、その巨大日めくりカレンダーに手をかけ、一気に引き裂く。すると、そこにはでかでかと書かれた“本日はご来場いただきありがとうございます”の一言、そして途端に鳴り出す激しいロックミュージック! その後も日めくりカレンダーは次々に引き裂かれ、その度に新しい言葉を提示していく。とっても刺激的なオープニングアクトだ。それが終わると、今度はライブでも上映されただろうオープニング映像が流れ始める。三人の警官に追われているグランジの三人。路地裏を駆け抜け、波止場まで辿り着くも、そこで……。その洗練された美しい映像は、まるで映画のワンシーンの様だった。……あれ? これ本当にお笑いライブのDVD? なんだかカッコイイにも程があるぞ。思わずパッケージを確認してみたりして。でも、この最高にクールな演出で飾られたオープニングが終わると、ちゃんとネタが始まったので一安心。

本編で披露されているネタは全部で12本。そのうち1本が漫才で、残りの11本は全てコントだ。『我慢できない症候群』『THE MONSTER』『漫才(※じゃんけん)』は「オンバト+」で観たことがあったけれど、無視せずにしっかりと楽しめた。以前と同じボケでも、佐藤さんのミリョク的なツッコミが、また違った印象を与えてくれたからだろうか。これまで、佐藤さんといえば二人のボケにただただ振り回されているイメージがあったけれど、実は凄い人なのかもしれない。むむむ。初見のコントも面白いネタがてんこ盛り。二人のお坊さんが独特の盛り上げ方で合コンを引っかき回す『僧コン』、三人のヤクザがとある遊びで大いに盛り上がっている様を描いた『初代五明組』、観客に危害が及ぶ可能性を考慮して特殊な設備が用意された『THEヤクザ』など、どれも分かりやすいけれどアウトローな香りがぷんぷんしていてたまらない。……彼らがこういう粗削りで男臭い笑いをやっていることは、もうちょっとアピールされるべきなのかもしれない。東京ダイナマイトサンドウィッチマンの笑いが好きな人は、一度試してみては。個人的なお気に入りは、ラーメン屋のオヤジとチンピラの客が意地を張り合って巻き起こる惨劇を描いた『GANKO』。どっからどう見ても惨劇なのに、独特のテンションと映像を駆使した演出で大笑いしてしまった。ここでも、現場に居合わせてしまった常連客を演じている佐藤さんがとにかく映えまくっている。やっぱりタダモノではない!

これらの本編に加えて、ライブ終了後に彼らがDVDを1万枚売らなければ事務所を解雇されるという旨が客前で告げられる「緊急発表記者会見の模様」を収めた特典映像と、本編のVTRやコントについて「グランジが自ら振り返る副音声」を収録。かゆいところにしっかりと手が届いた、とっても充実している内容にもかかわらず、お値段はなんと1,905円(税抜)! あまりの安さに涙が出そうになるけれど、この低すぎる価格設定こそ、今回の企画が本気であることの証明になっている気がする。とはいえ、もしよしもとを解雇になったとしても、これだけのネタが出来るのであれば、何処に行ったとしても通用する様な気もするけれど。まあ、そこは足掻いてもらった方が面白いので、とことん足掻いてもらいたい。目指せ、よしもと残留! ……って、なんか昔、どっかでこんなこと言ってたコンビがいたっけな。誰だっけ。思い出せないや。うーん、閉店ガラガラ!

まあ、企画のことを抜きにしても、一度チェックしてみるだけの価値はある一枚ですよ。


■本編(88分)

「オープニング」「我慢できない症候群」「THE MONSTER」「僧コン」「初代五明組」「漫才」「secret base」「爆弾」「「昔のことですから…」」「THEヤクザ」「弟子にしてください」「GANKO」「隣のおばさん」

■特典

「緊急発表記者会見の模様」(12分)

グランジが自ら振り返る副音声」