円熟近き『中年』
- 出版社/メーカー: Blowout Japan
- 発売日: 2008/05/14
- メディア: DVD
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さて、今回のライブはタイトルが『中年』と書かれているように、中年をテーマにしたコントが多く収録されている……ということはない。今までのチョップリンの延長線上に位置するようなコントが収録されている。特に西野氏のツッコミは、前作『ULTRA SIMPLE』での激しさが色を潜め、それなりに小林氏のボケ世界に付き合うカタチのツッコミになっている。ある意味、人間として熟したということなのだろうか。だから『中年』なのだろうか? ジャケット裏には“三十路を迎え、弱冠加齢臭も漂い始めた2人が見せる濃厚な笑いの世界”と書かれているが、その芸自体からも加齢臭が漂い始めたようである。む。
その中でも特に、チョップリンの独特の味を感じさせられたコントが「パーキング」である。「パーキング」は、小林演じるおっさんが駐車場に部屋を作り、それを西野演じる警備員が止めに来る……というコントである。そしてこのコント、察しの良い人なら既に気付かれていると思うが、設定がインパルスのコント「駐車場」*2に非常に似ている。しかし、この二つのコントは明らかに違うものだ。では、何が違うのか。インパルスの「駐車場」は、あくまでもホームレスの人間が駐車場を借りて住もうと試みているところ、言ってみればホームレスの妙な足掻きが笑いになっている。一方のチョップリンの「パーキング」は、既に駐車場におっさんが住んでいるところから始まる。ここまでは、まだ「駐車場」の進化系であるように思える。ただ、このおっさんが非常にオカシイ。実はおっさんはホームレスではないのである。だけども、何故かおっさんは駐車場で生活をしている。板倉演じるホームレスは自らが非現実的なことを言っていることを自覚しているが、小林演じるおっさんは自らの行為をまったく当たり前のことだと考えているのである。この違いこそが、チョップリンの味であるように思う。この他にも、火を点けられる前の煙草たちの緊迫した会話を描いた「タバコ」、囚人たちがネタを披露して出所を目指す「爆笑出所バトル」、寮の同じ部屋で生活をしている男の口から心臓が飛び出した「寮生活」など……いずれも、彼ららしいコントばかりが収録されている。ゆっくりとだが、確実にチョップリンのコントは進化している。喜ばしい。
・本編 「パーキング」「タバコ」「捨て象」「爆笑出所バトル」「中年マン」「寮生活」「葬式」「アサガオ」「検問」 ・特典 「コント「郵便局員」」「小林宅侵入」「短編映画「突然の客」」(西野恭之介 初監督作品) ・収録時間:約120分