菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ』(吹越満)

シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ 今夜の出演:吹越満シモキタ・コメディ・ナイト・クラブ 今夜の出演:吹越満
(2008/11/19)
吹越満

商品詳細を見る

ニコニコ動画というサイトがありまして、僕はそこを頻繁に利用しているんですが。先日、ちょっとした思い付きで、「吹越満」というキーワードをそこの動画検索にかけてみたんですね。そしたら、過去に吹越氏がテレビで披露したネタの動画が二本ほど見つかりまして。早速、観てみたわけです。

そこで披露されていたネタというのが、これまた凄いネタで。一本が『ロボコップ演芸』で、もう一本が『日本一のせんずり男』というネタ。名前だけを見ると、もう後者の方が危なっかしく感じられるわけですが、実際問題、前者も後者もヤバい内容なんですね。今のテレビでは絶対に流せないくらい、過激な下ネタが披露されているので。

どういうネタなのかと言いますと。まず『ロボコップ演芸』ですが、これは文字通り吹越氏がロボコップに扮装して、ロボ的な動きと効果音で様々な行動を起こすというものなんですね。で、これの一発目に披露されているのが、<ロボコップAV男優>という、ちょっとコメントに困る内容のもので。簡単に説明すると、前戯から後始末までの流れをロボコップで演じるという……うーん。一方の『日本一のせんずり男』というのは、もうそのまんまで、毎日がつまらないと感じている中年男が、思いつきでオナニーしながら一日を過ごしてみることを決意するという……もう、モロな内容なんですね。でもまあ、そのネタ自体はまったく意外ではなかったんですけど。最近のライブでも、似たようなことはやっていますし。

ただ、やっぱり「こういう人だったのか!」という感じのリアクションがあるわけですよ、動画に対するコメントの中には。今の吹越氏って、芸人さんというよりは、俳優さんのイメージが強いですからね。小柳トムとか、竹中直人とか、松尾貴史みたいな感じですか。特に吹越氏は下ネタ度が高いネタが少なくないので、リアクションも過剰です。「下品」とか、「低レベル」とか、「これはひどい」とか。中には、吹越氏がワハハ本舗出身だからって、大きな字幕で「創○芸人氏ね」とか書いてあったり。もはや芸とは関係ない、単なる中傷コメントです。自重してもらいたいですね。

でも、それよりも気になったのは、この動画に対して「黒歴史」とコメントしている人がいた、ということなんですね。いやいや、確かに今の吹越氏は、ちょっと良い味を出している俳優のイメージが強いですけど、別にこの頃のことを隠したいとは思っていないでしょう。第一、定期的にライブだってやってるわけですから。それを無視して、なんか世間のイメージとは違うことを過去にやっていたからって理由で、短絡的に「黒歴史」と決め付けるのは、どうなんでしょうかね。

……で、今作。今回、吹越氏がリリースした新作DVDは、この当時のネタばかりを披露している、いわば傑作選的な内容になっています。上で名前を出した『ロボコップ演芸』も『日本一のせんずり男』は勿論のこと(黒歴史どころか、今もやってる!)、服だけじゃなく皮膚や内臓まで脱ぎ出しちゃう『超脱衣』や、左手が自我を持って行動する『おててちゃん』の様なネタを多数収録。これを観れば、もうハッキリと分かります。「ああ、吹越は昔も今も、バカなんだなあ」ということが。

ちなみに。今作には特典映像として、今回の公演で披露されたネタの、初演時の映像がコメンタリーとともに収録されているんですが、そこで吹越氏が上記の『日本一のせんずり男』をテレビで披露したという話を、ちょっとだけしているんです。なんたる偶然! なんでも当時、吹越氏も『日本一のせんずり男』をテレビで披露することを躊躇していたらしいのですが、スタッフの一人がどうしてもということで披露したのだそうです。なお、そのスタッフは後で、プロデューサーにこってり説教されたとか。

テレビ出演を夢見るポップスな芸人が増えている今の時代に、かつてナンセンスかつダウナーな笑いがあったことを伝えている今作。今のテレビに過激さが足りないと思う人・テレビに飽きてきている人に、是非お薦めしたい。これを観て、感じてもらいたいですね。「ああ、テレビで我慢しておけば良かった」と。……あ、冗談ですからね。


・本編(約76分)

『プロローグ』『白から始まる作品』『イントロダクション』『超脱衣』『超SEX』『白から始まる作品 2』『おててちゃん』『忘れられていたネタコーナー』『ロボコップ演芸』『現代音楽をあなたに 2』『日本一のせんずり男』『声色家族』『白から始まる作品 3』『エピローグ』

・特典映像(約38分)

「今回収録作品の初演時の蔵出し映像」※本人コメンタリー付