菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

エレキコミック第16回発表会『Garlic』

エレキコミック第16回発表会『Garlic』エレキコミック第16回発表会『Garlic』
(2008/11/19)
エレキコミック

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去年のエレキコミックは、とにかく凄かった。公演のタイトル通り、彼ら自身がコントと真摯に向き合っていることがひっしと伝わってきた『エレキコミック第14回発表会「This is コント」』も、サブカルチャー感を滲み出しつつも一般ウケするバカバカしさに満ち溢れていた『エレキコミック第15回発表会「Bette XX」』も、笑いのクオリティに長けた、素晴らしいライブだった。

……だからなのだろうか。無意識のうちに比較してしまっているからなのかもしれないが、今年の六月に行われたという『エレキコミック第16回発表会「Garlic」』は、なんとも物足りないライブに仕上がっていた。いや、物足りないというよりも、らしくないというべきか。

エレキコミックコントの魅力は、そのウェットさを感じさせない、尋常じゃないほどのドライっぷりにあった。やついがどんなにブラックなボケを吐き出そうと、今立がどんなに冷たいツッコミを投げ出しても、まったく揺るぐことのないコント観。それこそ、エレキコミックが若手だった頃から守り続けてきた、一つの鉄則だった。

しかし今回、エレキコミックはその鉄則を崩した。今回のライブでやついが演じているキャラクターは、なんともいえない悲哀を帯びていることが多かったのである。例えば、オープニングコント『誕生日パーティー』では、誕生日の当日に友達が誰も来てくれない孤独な青年を演じていたし、『small man』では、自身の人間の小ささを棚に上げ続ける男を演じていた(ちょっと東京03と被ってた気がする)。『都会の女』では、都会に染まってイイ女ぶっているブサイクな女を演じていた。それらコントから滲み出る、なんともいえない悲哀。ライブでお馴染みの『やっつんだっつん』ですら、妙な悲哀を匂わせていた(違いモノも臭わせていたが)。

そういえば以前、エレキコミックの二人が「シティボーイズに憧れていた」とコメントしている記事を見かけたことがあった。シティボーイズのコントから滲み出ているペーソス感を、エレキコミックも目指し始めたということなのかもしれない(実際問題、コント師としての腕は決して落ちていなかったわけだし)。まだまだだけど、その心意気や良し!(エラソー)


・本編(約70分)

『誕生日パーティー』『オープニング』『やっつん探偵事務所』『A・DA・CHI』『陸上部』『small man』『コール&…』『都会の女』『やっつんだっつん』『エンディング』

・特典映像(約11分)

『エロ川淳二~真夜中にドアを叩く女』

『サウナ』