菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

笑魂『とんだりはねたりダブルダッチ ~漫才したりコントしたりラジバンダリ~』

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(2008/12/03)
ダブルダッチ

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どんな芸人に対しても、平等な視点を持つということを信条にしているつもりなんだけれど、自我が存在している以上、それを完璧に実行するということは、まず不可能だ。人には必ず好き嫌いというものがあって、それは芸人を見る目においても変わらない。むしろ、笑える・笑えないの二分論のみで語られがちな芸人は、他の事物よりもその視点に好き嫌いが入り込む率が高いと言えるだろう。

ダブルダッチは、好き嫌いで言うところの「嫌い」に分類されやすい芸人なのではないか、と思う。そう思うだけの理由もある。現時点では、彼らはラジバンダリという外国人女性のキャラクターが活躍するコントのみが世間に知れ渡っているため、それ以外に芸が存在しないのではないか、或いは、それ以外に大した芸が出来ないのではないか、と思い込まれているからだ。仕方が無いといえば、仕方が無い話である。実際問題、彼らはその出演している殆どの番組において、ラジバンダリを取り上げたコント以外のネタを披露していない。これでは、芸の幅が広くないと思われても、文句は言えない。実際のところ、僕もダブルダッチのことを過小評価していた。

ところが、ダブルダッチは僕が思っている以上の芸達者だった。考えてもみれば、ボケ役の西井隆詞は「ラブミーテンダー」「ラインバック」というコンビを、ツッコミ役の田中穀は「アップスタート」「スクラッチ」というコンビを経由して、現在に至っているのである。既に十年以上のキャリアを持つ二人が結成したコンビが、外国人キャラ以外の武器を持っていないわけがないのだ。

僕も驚いたのだが、そもそもダブルダッチコント師ではない。少なくとも、今作に収録されているコント二本は、二本ともラジバンダリを主人公としたキャラクターコントだった。もしも彼らがコント師だとしたら、これ以外のコントも収録しているはずである。しかし、今作でラジバンダリコント以外に披露されているネタは、全て漫才だ。元来のダブルダッチは、漫才師だったのである。

そんなダブルダッチの漫才は、軽快さと分かりやすい下らなさを重視したもの。同じ事務所のオジンオズボーンとちょっと芸風が被るのが気になるが、オジオズの様な若さは無く、その長い芸歴を礎とした中堅的な味わいが、なんともいえない匂いを醸し出している。また、西井はモノマネ師としてもなかなかの手腕をふるっており、特典映像には、彼の多彩なモノマネ芸が収録されている。特に、フットボールアワー岩尾のモノマネ芸は必見だ。

これから先も、しばらくダブルダッチはラジバンダリを主人公としたショートネタを、テレビで披露し続けていくだろう。少なくとも、『爆笑レッドカーペット』が終わる日が来るまでは。それはそれで、良いのかもしれない。ただ、せっかくテレビに出られる機会があるのだから、せめて一度くらい、漫才ネタでテレビ番組に出演してもらいたいなあ、とか思ったりする。それが通用するかどうかは分からないけれど、今の間違った印象だけで彼らが語られていくのは、ちょっとだけ勿体無い気がする。


・本編(39分)

『コント:お見合いセンターに来る外国人女性』『漫才:カップル』『漫才:心理テスト』『コント:すし屋』『漫才:遊園地』『漫才:クレーム処理』

・特典映像(6分)

『ものまねショートコント』