菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『エレ片 コントの人6』

エレ片コントライブ ~コントの人6~ [DVD]エレ片コントライブ ~コントの人6~ [DVD]
(2013/01/09)
片桐仁エレキコミック

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エレ片『コントの人6』を観る。

エレ片とは、関東を代表するバカコント職人“エレキコミック”のやついいちろう今立進と、これまた関東を代表するナンセンスコント職人“ラーメンズ”のメンバーである片桐仁の三名で構成された、お笑い混合ユニットだ。同じ事務所に所属している彼らは、それ以前から付き合いを持っていたのだが、2005年5月に福岡西鉄ホールにおいてエレ片名義でのライブを行って以降、明確にユニットとしての活動を開始する。2006年には冠番組『エレ片のコント太郎』(TBSラジオ)の放送を開始、2007年からはコントライブ『コントの人』を年に一度のペースで開催するなど、その活動範囲はもはや単なる混合ユニットの粋を超越している。『コントの人6』は、2012年3月に東京・大阪・名古屋で行われており、本作には東京前進座での公演が収録されている。

エレキコミックのバカバカしい世界観に片桐が参入する形式のコントを多く演じているエレ片は、その活動範囲と同様、コントのクオリティもまた単なる混合ユニットとは一線を画している。単なるバカのようでいて実はクレバーに笑いを取りに行くやつい、独特の存在感を発揮しつつも天然素材のヘタレっぷりを隠しきれない片桐、そんな二人の言動にうっかりツッコミとしての本分を忘れがちな今立、とにかく三人のバランスが絶妙で、どんなコントでも常に新鮮な印象を与えていた。とはいえ、ここ数年の『コントの人』は、些かマンネリ感が漂っていた。過去のコントで見たことのあるキャラクターが何度も再利用されていたり、似たような展開のノリが見られたり、はっきりいってコントユニットとして成長が頭打ちになっているようにすら思えた。そんな近年の彼らに対するイメージを、本作はモノの見事に覆してくれた。どのコントも一つ一つがきちんと独立しているし、なによりクオリティが高い。

例えば、オープニングムービーの後に披露されているコント『お魚』。漁師町にやってきた今立が、ふと立ち寄った魚料理の店で新鮮なマグロ丼を注文するのだが、店員のやついと片桐の挙動がどうもおかしい……というシチュエーションコントである。『ヤッツンバーガー』『ヤッツン新聞』などに代表されるエレキコミックのシチュエーションコントのスタイルをそのまま踏襲したネタで、バカバカしくも勢いのある一作だ。ちょっとマニアックな小ネタが使われている点も、ニクい。この他にも、仲良し女子大生のグループがふとしたきっかけで距離を置き始める『卒業旅行の女たち』、やつい・片桐演じる二人のバカ生徒に作文を書かせようとする今立先生の奮闘ぶりを描いた『文集』、オバケを飼うために与えられた数々の試練に立ち向かう今立がコミカルな『トップブリーダー』など、どれもこれも面白い。

その中でも、とりわけ印象に残るのが『自己防衛SHOW』というコント。失敗しても傷つかないように保険をかける様子を対戦形式のSHOWとして描いたネタで、ここでは王者・片桐と挑戦者・やついの戦いが繰り広げられている。ただひたすらネガティブに自己防衛する王者・片桐と自己防衛の中に攻撃性を秘めている挑戦者・やついの違いがなんとも面白く、それぞれの芸風(性格?)の違いが上手く反映されている。が、ここで見るべきは、今立の傍若無人な司会ぶりだ。『シルシルミシル』などの番組でイラスト化されている“ワルな上田晋也”をそのまま実体化したようなビジュアルの今立が、オープニングでラッパを吹いたり、シンキングタイムで踊り狂ったり、とにもかくにもやりたい放題。コントの構成上、ツッコミという立場から解放された今立の一大パフォーマンスは、本作の中で最もバカだったといっても過言ではない……かもしれない。


■本編(82分)

「視点」「オープニング」「お魚」「卒業旅行の女たち」「文集」「自己防衛SHOW」「トップブリーダー」「前略」「栄麗片村の春」「エンディング」

■特典映像(9分)

「こぶし1」「こぶし2」

■副音声:エレ片3人によるコメンタリー