菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『1回やらせて!』(オテンキ)※追記アリ

1回やらせて! [DVD]1回やらせて! [DVD]
(2013/12/25)
オテンキ(GO、のり、江波戸 邦昌)

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「お笑いブームは終わった」と言われて久しい昨今。それでも、若手芸人がリリースするDVDといえば、まだまだ漫才・コントなどのネタがメインの作品だ。とはいえ、実力派芸人のネタを見せつけられて目が肥えている視聴者に若手が挑むのは容易なことではない。他の長所をアピールした方がいいのではないか……と思う一方で、ではネタ以外の長所をアピールした作品が人目に付くかというと、これも難しい。ネタがメインの作品なら、視聴者もある程度は内容の予測が出来るので安心して手に取ることが出来るが、それ以外だと、内容を推測し辛いから手に取りにくい。その結果として、このネタDVD中心の現状があるのだろう。

『1回やらせて!』は、“小ボケ先生”で知られるトリオ、オテンキのコントを収録した作品だ。といっても、スタジオやライブ会場で撮影されたものではない。本作には、彼らが自身の持ちネタに適した場所を一般の施設から探し出し、そこで直に収録の交渉をして撮影に臨んでいる姿が映し出されている。つまり、この作品はネタDVDであると同時にロケDVD……いや、むしろ、ネタDVDを装ったロケDVDなのである。これなら、ネタが観たい人の需要に応えているし、ロケ芸人としての魅力もアピールできる。一挙両得、無駄のない発想だ。加えて、本作では身体を張ったリアクションや、ちょっとしたゲームを面白くする順応性も如何なく見せつけている。この貪欲な姿勢、見習わなくてはなるまい。


■本編【75分】

【コント1回やらせて!】

「旅館」「マンデーGO」「コンビニ」「カツアゲ」「寿司屋」「小ボケ先生」「小ボケ父さん」「ショートコント かぐや姫

【スーパースローっぽくやってみよう!】

■特典映像【30分】

「ぞうのティンコ」

泣ける小ボケ「タクシー」

 

追記。

コメントで「販売会社の商品紹介と変わらない」というツッコミを受けたので、もうちょっと細かい感想を書こう……と思い立ったのだが、正直なところ、本作に関してはあまり追記するようなことがない。というのも、本作の最も興味深い点は、本文でも触れている通り「オテンキが自力で撮影場所を探し出す」という企画コンセプトそのものであるからだ。そこに、あえて何か付け加えるとするならば、「屋外で撮影されているので画に新鮮味がある」くらいだろうか。個人的には、『爆笑オンエアバトル』のスペシャル版で放送されていた屋外ロケコントを思い出した。

オテンキのコントに関しては、特に感想はない。……というと、なんだか完全に否定しているように捉えられかねないので、念のためにフォローを入れるが、オテンキのコントは“高く評価されるタイプのコント”ではない。彼らのコントは、とあるシチュエーションにおいて、のり演じるユーモアな人が江波戸演じる普通の人を翻弄する(たまにGOがピンポイントで現れ、のりと一緒にさらりとボケを放り込む)スタイルで、そこには圧倒的な個性も演出もない。ただ、三者三様の魅力を的確に反映したコントは抜群の安定性を誇り、誰もが安心して笑うことが出来る。

特に『小ボケ先生』に代表される“小ボケシリーズ”は、そのボケの下らなさが故に老若男女に通じるコントとなっているといっていいだろう。ちょっと人情噺の趣が強い『タクシー』の様なネタもあり、これはもはやコントというよりも喜劇という表現の方が適切なのではないかという気もする。確かに笑えるけれど、語りたくなることはない。それがオテンキのコントなのである(そういうコントだからこそ、こういう企画が成り立つともいえるだろう。こういう企画は、例えばかもめんたる東京03の様に、コントとがっぷり四つに組んでいるユニットでは難しい)。

せっかくなので、残り二つのコーナーにも触れておこう。

「スーパースローっぽくやってみよう!」は、オテンキの三人が「熱湯」「わさび」を使ったリアクション芸に挑戦する企画だ。とはいえ、ただリアクションを取るだけではなく、タイトルにもあるように、リアクションをスーパースローっぽく見せなくてはならない。とどのつまり、「熱湯」「わさび」の強烈な刺激を我慢しながら、ゆっくりとリアクションを取ろうという企画なのである。……誰が思い付くんだろうな、こんなバカバカしいこと。しかし、このシンプルに下らない企画が、とてつもなく面白い。小さな部屋の中でドタバタと苦悶する三人の姿は、実になんとも滑稽である。

「象のティンコ」は、暗闇に押し込められた象のティンコを、三人の勇者が外へと解放してあげるゲームである。……という説明では伝わらないと思うので、もう少し具体的に説明する。「象のティンコ」は、三人の股間に設置された象のティンコを、他の二人にバレないようにボロリと外へ解放してあげるゲームである(バレると罰ゲーム)。……文章で説明すると、とんでもなく品が無いな! しかし、この品の無いゲームが、またしこたま面白い。他の二人にバレないように象のティンコを救出しなくてはならないために、そこにはお互いの考えを読み解く心理戦が繰り広げられるのである。相手は出したか、出していないか。こっちは出そうか、まだ出さざるべきか……イイ年こいた大人が何やってんだかってな話だが、本当に面白かった。心底笑った。個人的には、NON STYLE『催眠術』、とろサーモン『72時間寝させません!!こんなやったら芸人辞めたいくライアーゲーム』以来の特典映像の名作だったと思う。……ちょっと持ち上げ過ぎかもしれない。

こちらからは以上です。