菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

リサイクル大歓迎『イッセー尾形 一人芝居 蔵出し2005〜2006』

至極当然のことだが、世の中には星の数ほどの人が存在する。良い人もいるし、悪い人もいる。お金持ちもいれば、貧乏人もいる。器用な生き方をしている人もいれば、不器用な生き方をしている人もいる。そういった人たちを、区別することなく演じ続けている男こそ、イッセー尾形である。
これまで「イッセー尾形・ら株式会社」レーベルから、様々なDVD作品を発表し続けてきた彼の新作は、2005年から2006年の間に舞台で発表してきた演目の蔵出し作品集だ。
そのためか、子離れが出来ない母親を相手する親離れの出来ない中年男性を描いた『少年の庭』、プロレスのリングに乱入した青年の傍若無人な態度が腹立たしくも笑える『リングに登った男』、中華料理屋の必要以上に笑顔を振りまく常連客の真実を見せた『中華屋』など……これまでにイッセーがDVDに収録してきた人物たちの中でも、地味目の人たちが取り上げられている印象がある。少なくとも、『大家族』や『バーテン』の様なメジャーな演目ではない、何処か二次的な雰囲気のものばかりだ。特に、先に紹介した『リングに登った男』は、『ピザ屋』『イベント屋』の流れを汲んだ作品で、二次的な雰囲気を強く醸し出されている。
しかし、だからといって、作品の面白さが落ちているわけではない。むしろ、華のある作品よりも笑いやキャラクターにこだわっていないためか、演目自体に味が沁みこんでいる。言ってみれば、玄人向けの傑作選と言えるのかもしれない。流石、蔵出し。

・本編(約73分)
『少年の庭』『リングに登った男』『ウェイトレス'05』『逃走』『中華屋』『テーラー』