菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『COWCOW CONTE LIVE 3』

COWCOW CONTE LIVE 3COWCOW CONTE LIVE 3
(2010/08/18)
COWCOW

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COWCOW CONTE LIVE3』を観た。文字通り、伊勢丹の紙袋こと多田健二R-1ぐらんぷり三度の決勝進出を果たした山田興志によるコンビ、COWCOWがそのコントを存分に披露しているライブを収録した作品だ。COWCOWコントライブがDVD化されるのは今回で三度目になる。

彼らが初めてDVDをリリースしたのは2008年のことで、これは山田がR-1ぐらんぷり決勝に進出した年と重なる。つまり、彼らがDVDをリリースするようになったのは、山田の活躍があったからだといえるだろう。事実、これまでにリリースされてきたコントライブDVDには、必ず山田のピン芸も収録されていた。当然、今回も収録されている。COWCOWが漫才師としてそれなりに評価されるようになったのも、山田の活躍が先にあったためだ。だからといって、彼らの人気は決して山田のピン芸人としての実力に乗っかっているわけではない。きちんと漫才師としての実力もあるからこそ、現在の評価がある。

COWCOWの最大の特徴、それはアットホームな空気感だ。漫才に限った話ではなく、彼らのネタはいつもほんわかとしていて、優しい空気に包まれている。その舞台からは、緊張感がまったく感じられない。「しぼんだビニールボールを頭に被るヤツ」「手提げ袋を背負うヤツ」など、幼稚な欲望を満たしている人たちを探し続けるあるあるネタ『こういう人知りませんか?』。忍者同士の合い言葉が言葉遊びになったり小芝居になったりする『合い言葉』。日用品の名称の殆どは実は偉人の名前から来ているという体の言葉遊びコント『世界の偉人』。どれもこれも、その優しくて温かくてほのぼのとした空気を発した、とても緩やかなコントばかりだ。

しかし、冷静になって考えてみると、それらのネタはあまりにも他愛がない。なさすぎる。幼稚とまでは言わないにしても、まるで子供が「ごっこ遊び」をしているかのようだ。もし、他の芸人がこれらのネタを演じていたとしたら、どうなっていただろうか。ネタについつい力が入り過ぎて、とても笑える代物にはなっていなかったかもしれない。これらのネタはCOWCOWが演じるからこそ、きちんと笑いとして昇華されているのである。そして、それは彼らがきちんとネタの見せ方を必死になって練っているからこそ、出来る所業である。生半可な態度では、とても出来ることではないだろう。

ハイセンスで新しい笑いを求めている人にとって、COWCOWの笑いは少し邪道に見えるかもしれない。だが、彼らの笑いには、観客を温かい空気に包み込む優しさがある。老若男女を区別しない、あまりにも優しい笑いが。今作にも沢山の子どもたちの声が聞こえてきた。子どもにも安心して見せられる笑いを生み出している芸人が、現在どれだけ存在しているか。ブラックな笑い、マニアックな笑いに頼ることなく、これからも彼らは温かな舞台を目指し続けることだろう。

最後に余談だが、今作の特典映像には前作の特典にあったメイキングを彷彿とさせるロケバスでの移動風景が収録されている。前作では山田とロケスタッフのみによる移動だったが、今作では“ネタ宅配”(抽選で選ばれた人のところへCOWCOWがネタを届ける企画)での移動のため、二人が揃っている。比較してみると、ちょっと面白いかもしれない。


・本編(83分)

「こういう人知りませんか?」「合い言葉」「オーディション」「鼻眼鏡」「世界の偉人」「漫才」「DJボブ」「アンダー・ザ・ボーリングアリィ」「多田選手」「UNO」「研究室」「就職」「漫才2」

・特典映像(145分)

「ショート漫才」「親子漫才」「ブリッジ映像」

COWCOW LIVE 2010東京・大阪メイキング」「ネタ宅配」

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 ・『COWCOW CONTE LIVE1』

 ・『COWCOW CONTE LIVE2』