『江頭2:50のピーピーピーするぞ！ 始末書覚悟の逆修正バージョン』
 | 江頭2:50のピーピーピーするぞ!始末書覚悟の逆修正バージョン (2008/08/22) 江頭2:50早川亜希 商品詳細を見る |
天才、神業、奇跡……その事物の素晴らしさを称賛するために使われるべきこれらの言葉が、単なる煽り文句になって久しい今日この頃。これらの言葉と同様に、その本来の意味よりもずっと軽率に使われている言葉がある。“伝説”だ。
“伝説”という言葉を新明解国語辞典第五版で引くと、「歴史上の人物や、具体的な事物・事件などに関する言い伝え」という意味だと書かれている。それはつまり、「人々が伝えていってしまうほどに強烈な事物・事件」という意味でもあると言える。しかし、近年に起きた“伝説”と称されている事物・事件の殆どは、その言葉の持つ意味ほどに強烈な印象を与えてはくれない。それらは結局、便宜的に“伝説”と言われているだけに過ぎないからだ。
そういう“伝説過多”な時代において、現在進行形で伝説を残し続けている男がいる。芸人、江頭2:50その人だ。退屈なバラエティ番組に投与されるカンフル剤としてのイメージが強いエガちゃんだが、その実像は我々が見知っている姿よりもずっと濃厚で、かつ危険だ。その本性は浅草キッド著『お笑い 男の星座2』で、幾らか確認することが出来る。「オウム真理教の信者と真っ向から対決し、最終的に二万円を借りることに成功」「その巧みな身体の動きを活かしたヨガで、達人を唸らせる」「バラエティ番組の潜水企画で、失神するまで息を止め続ける」などなど……彼が残してきた伝説は、数多い。
『江頭2:50のピーピーピーするぞ！』は、そんな“歩く伝説”江頭2:50がパーソナリティを務めるブロードバンド番組だ。女優の早川亜希をアシスタント（もとい暴走ストッパー）に迎え、地上波では放送できないような話を次から次へと繰り出している。番組は2006年8月に配信が開始され、2008年9月現在も好評配信中である。本作『江頭2:50のピーピーピーするぞ！ 始末書覚悟の逆修正バージョン』は、この番組におけるエガちゃんのベストパフォーマンスを収録したDVD作品だ。
ここからは本作についての感想だが、結論を先に書いてしまうと……ちょっと期待外れだったかもしれない。うーん。そもそも、地上波の番組におけるエガちゃんの伝説的パフォーマンスを期待していたコッチが悪いと言えるのだろうが、それを置いたとしても、やっぱりちょっと期待外れだった。むう。
もちろん、まったくつまらなかったワケではない。ネットでも話題になっていた「パナウェーブ潜入！」の話や、「北朝鮮に行ってきた！」話みたいに、日頃から芸人然とした生き様を世に知らしめているエガちゃんならではのトークは、神がかり的に面白かった。やっぱりこういった話は、実際に行った人だからこそ生々しくて面白いのだ。それ以外の話も（下ネタが混じりつつも）キッチリと面白く、エガちゃんは何気に弁が立つということを改めて確認できた。
ただ……本作の後半に収録されている「心男女」のコーナーが、やたらテンションだけで乗り切ろうとしている感じがあって、ちょっとついていけなかった。これは思うに、エガちゃんよりもアシスタントの早川の責任が大きい。彼女がストッパーとして、あまり機能してないのだ。エガちゃんが下ネタを叫んで奇怪な動きを取っても、ただ笛を吹いて注意するばかりで。もうちょっと余裕を持ってもらえると、こっちも笑えるのだが……まあ、番組初期の映像を収録しているみたいなので、この辺りは仕方ないと考えるべきなのかもしれない。ただ、僕個人はこの辺でちょっと冷めてしまった。冷めちゃダメだな。うん。
あ、でもオマケみたいに収録されている「エィガ一刀両断！」は、素晴らしい出来だった！ エガちゃんが映画の魅力について温かく厳しい目を持って、全身で作品を語り、全力で批評している。この表現が、もう本当に素晴らしいの一言。本作では『オールド・ボーイ』『硫黄島からの手紙』の二作品について語っているのだが、僕はどちらも観たいと思ってしまった（『オールド・ボーイ』は観たことあるけど）。
この番組、実は通常配信のヤツを観たことがないんだけれど、そっちの方を実際に通しで観たら、もうちょっと印象が変わっていたのではないだろうか。……だから、この作品がイマイチな感じになってしまったのは編集の問題だと思うのである。前半にトーク映像を持ってきて、後半にハイテンションな映像を持ってきたから、バランスが悪くなってしまったんじゃないか、と。うーん……惜しかった。
・本編（約122分）
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