『劇団ひとり 夢空間 1DK ~One Dream Keeper~』
劇団ひとり 夢空間 1DK ~One Dream Keeper~ [DVD] (2008/10/01) 劇団ひとり津田寛治 商品詳細を見る |
テレビ業界にさりげなく紛れ込んでいる一人コント師、劇団ひとり。イッセー尾形を継承するキャラクター憑依型コント師でありながら、職人としてライブ至上主義になることなく、ごく当たり前にテレビタレントとして番組に出演している。一方で小説家としての一面もあり、その構成力が高く評価されている。職人・作家としての一面を守りつつ、無難なテレビタレントとしてもきちんと仕事をこなす。そんな彼のことを“テレビ業界の異物”と称しても、何の問題もないだろう。
『劇団ひとりの夢空間 1DK~One Dream Keeper~』は、そんな劇団ひとりの構成力を堪能できる一作だ。今作は関根勤やU字工事らが出演していた“5ミニッツ・パフォーマンス”枠で放送されていた、劇団ひとりをメインとした番組をDVD化した作品だ。この枠では常に、5分という時間を使って一組の芸人が自らのスタイルを見せることがテーマとなっている。しかし、この枠を使って劇団ひとりが始めたのは、トーク番組だった。自らがメインになるべき番組で、劇団ひとりは必然的にゲストを中心にしなくてはならない番組を始めたのである。とはいえ、もちろん作・演出を劇団ひとり自身が務めていることからも分かるように、これは単なるトーク番組ではなく、疑似トーク番組。一筋縄ではいかないトークが、そこでは展開するのである。
ゲストとして登場するのは、津田寛治、星野真里、 船木誠勝の三人。彼らはそれぞれ、劇団ひとりがリアクションに困るようなトークを展開する。津田は劇団に無礼な言葉を投げかけ、星野は空気の読まない我が道を行くコメントを続け、 船木は典型的なバカ発言を繰り返す。それらのトークに対し、劇団は決して大袈裟にツッコミを入れることなく、まるで本当のトーク番組で見せているような柔らかなリアクションを見せ続ける。スタッフ笑いも一切無いため、そこには徹底的にリアルな空気だけが流れ続ける。
今作で劇団ひとりが笑わせようとしているもの、それは“テレビタレントとしての自身の脆弱さ”だ。先にも書いた様に、コント職人としては圧倒的な才能を見せられる劇団は、しかしテレビタレントとしては些か無難である。その無難な自らの弱さを、職人としての劇団が笑っているのだ。この複雑な構造を、劇団は今作でごく自然に見せている。実に恐ろしい才能だといえるだろう。今作をリリースした後も、劇団のポジションは以前とまったく変わっていない。これから先もおそらく、そのポジションを変わることなく劇団ひとりは続いていく。もしそれが変わったとしたら……その時また、劇団は変わった自らを笑いに変える術を探ることだろう。その二面性の狭間で。
・本編(63分)
・特典映像(25分)
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