菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『ザ・ギース コントセレクション「ニューオールド」』

ザ・ギース コントセレクション「ニューオールド」 [DVD]ザ・ギース コントセレクション「ニューオールド」 [DVD]
(2014/09/24)
ザ・ギース

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大竹まこと、きたろう、斉木しげるの三人によるコントユニット“シティボーイズ”。時にアダルトに、時にアグレッシブに、さりげなく社会を切り取っていく彼らのコントは、にも関わらず普遍的な魅力に満ち溢れている。1979年の結成当初から現在に至るまで東京コントの最先端を歩き続けている彼らの笑いを、私はこよなく愛していた。

そんなシティボーイズに憧れている若手コンビがいる、という噂を耳にしたのは2005年のこと。なんでも、彼らは無所属ながら深夜のバラエティ番組に出演、そこで「シティボーイズの事務所に入りたい!」と語っていたという。その後、二人は本当にシティボーイズが所属する“ASH&Dコーポレーション”に入社、若手芸人の登龍門『爆笑オンエアバトル』に出場し、コント『手は口ほどに物を』で初出場初オンエアを決める。これは全て、2005年の出来事である。そのコンビの名はTHE GEESE。本作は、そんな二人が過去に生み出してきたコントを収めた、結成10周年記念ベスト盤だ。

収録されているコントは全12本。『爆笑オンエアバトル』『オンバト+』で観たことのあるコントが多いため、鑑賞中は「面白い!」というよりも「懐かしい!」という気持ちになった。例えば、手で触ったものの名前を口にせずにはいられない『手は口ほどに物を』、歩き方を教えてくれる教習所の風景を描いた『歩行者教習所』、唐突に父親が始めたクイズの内容は自らの知らなかった出生の秘密に関するもので……『出生の秘密クイズ』などは、番組で観て以来だったこともあって、とても懐かしかった。その一方で、観たことのないコントも。自殺しようとしている男とそれを止めようとしている男にしか見えない二人が、本当にやろうとしていることは……『自殺』、二人の学生がインモラルな会話を繰り広げる『長谷川』、デリバリー女王様の攻め文句は地球規模!『SMの世界』の三本がそれ。どのネタも面白かったが、その中でも『SMの世界』は秀逸の出来だった。

THE GEESEのコントにおいて、最も重視されているのは世界観だ。他に類を見ない独自の世界をイチから構築し、それを安易にツッコミで処理しようとはせずに、生み出された世界そのものの面白さで笑いを得る。彼らのコントが“シュール”と称されることが多いのも、この手法によるところが大きいのだろう。だが、それ故にTHE GEESEのコントは、起爆性に欠ける。コント世界の真実が明らかになって以降のやり取りは、その世界を咀嚼する状態に留まってしまうからだ。しかし、『SMの世界』は、その咀嚼状態がとてつもなく面白い。具体的な内容は実際に観てもらいたいので書かないが、このネタならばキングオブコントでも評価されるのではないだろうか。……まあ、そのままだと、テレビでオンエアされるのは難しいだろうけど。

というわけで、『爆笑オンエアバトル』『オンバト+』の熱心な視聴者だった私にとって、非常に有難い作品だった本作。これで好きなコントをいつでも観ることが出来る。嬉しいな。ただ、幕間映像やフリートークの様な、コントじゃないTHE GEESEの魅力が垣間見られるような要素が無かったことが、少しだけ残念。ストイックといえば聞こえはいいけれど、そういうサービス精神も彼らには必要なのではないか……とか言っている一方で、そんな彼らのことも好きだったりするから、難しいよなあ。


■本編【65分】

「手は口ほどに物を」「歩行者教習所」「アダモくん」「タクシー」「自殺」「コールセンター」「長谷川」「出生の秘密クイズ」「レッスン」「インタビュー喫茶」「SMの世界」「卒業式」