菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

『インパルス単独ライブ 丘の上の木の下で』

インパルス単独ライブ 丘の上の木の下で [DVD]インパルス単独ライブ 丘の上の木の下で [DVD]
(2013/09/04)
インパルス

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2012年8月8日・9日に俳優座劇場にて開催された単独ライブの模様を収録。ライブ全体に漂うダウナーな空気が人間の陰湿な部分を笑いに変えるスペシャリスト・板倉の作風と見事に合致していた前作『地下室』(2011年5月開催)と比べると、少し物足りなさを覚える。とはいえ、コントとしてのクオリティそのものが落ちているわけではなく、いつものインパルスを楽しめる一枚になっている。

木で首をくくろうとしている男を止めたホームレスだったが、実は男はブランコを設置しようとしているだけで……『オープニングコント』、悪霊に憑りつかれた少女を救うために派遣されたエクソシストが思わぬ真実と向き合う『悪魔祓い』、ピクニックに出かけるというクラスメートたちをバカにしていた男が、メンバーの中に意中の女性がいることを知って態度を一変させる『ピクニック』などは、いかにもインパルスらしい厭らしさがつきまとっていて、面白かった(※褒めています) 『ピクニック』のオチが、ちょっとイイんだよなあ……。

個人的に好きだったのは『かくしごと』。未成年の息子の部屋でタバコを見つけてしまった母親に頼まれて、帰宅した息子に父親が「隠していることはないか?」と訊ねる……そんな、どこの家庭でも起こり得るシチュエーションを、実にドラマチックに描いている。そのギャップが面白いし、なにより、ありきたりな説教で物事を収めようとしていた堤下演じる父親が激しく戸惑う姿がたまらない。町工場の面接風景を描いた『居たい場所、居るべき場所』(『地下室』収録)を彷彿とさせつつも、まったく違った見せ方をしてみせた秀作といえるだろう。

……と、ここからまとめに入る予定だったのだが、なんとなくパッケージを眺めていると、本編には収められていないVTRがあることに気が付いたので、慌ててチェック。……メニュー画面に「本編再生」と「チャプター」しか表示されなかったら、そりゃ特典映像があるなんて気が付くわけないだろ!(「チャプター」をクリックすると、本編のコントタイトルとともにVTRのタイトルが表示される) 肝心の映像は、堤下扮する幻の昆虫“ツツムシ”を捕獲する様子を追いかけたドキュメンタリー。ライブの幕間に使用された映像をまとめたもので、股間にモザイクが入りっぱなしの堤下が子どもにイジメられている姿を堪能することが出来る。……そのスジの人にはたまらないだろうなあ。

2010年の『村雨~むらさめ~』、2011年の『地下室』からの流れを汲む“3部作完結編”を銘打っている本作(実際は特に繋がりがあるわけではなく、板倉曰く「マネージャーの勘違い」らしい)。次に彼らの新作コントが観られるのは、果たしていつの日か……。


■本編【109分】

「オープニングコント」「エナジーゴールド」「悪魔祓い」「ピクニック」「かくしごと」「特殊能力」「丘の上の木の下で」「VTR 幻の昆虫を探して~森はぼくらのたからもの~」