菅家アーカイブ

過去のブログで書いてきたお笑いDVDレビューをまとめました。

まあ、明日雨だけどね

マイナスターズライブ ~その日雨だけどね~ [DVD]

マイナスターズライブ ~その日雨だけどね~ [DVD]

さまぁ〜ずのライブに初めて彼らが登場したのは、『さまぁ〜ずライブ2』でのことだった。さまぁ〜ずにとっては、文字通り二度目の単独ライブだった『さまぁ〜ずライブ2』の冒頭コントに、彼らは登場した。当時、彼らは二人組で活動しており、ユニットの名前も今とは違った「ダキョウ倶楽部」というものだった。その当時から彼らはネガティブな発想を念頭に置いた楽曲を制作していたが、まだコントの中のキャラクター以上の存在感は見出せていなかった。彼らが自身の持ち味をアピールし始めるのは、その次のライブである『さまぁ〜ずライブ3』からのことになる。そこで初めて、彼らは現在のバンド名であるマイナスターズを名乗った。時、2002年12月。マイナスターズの歴史は、ここから動き始めたのである。マイナスターズはその後、さまぁ〜ずライブには欠かせない存在となる。また、その活動はさまぁ〜ずライブに留まらず、2005年1月19日にはアルバム『ネガティブハート』をリリースし、同年7月27日にはシングル『俺なんでもいいし/カバ』をリリースした。妙にキャッチーな曲と、大竹一樹扮するヘローが芸風のままに書いたような歌詞が高く評価された。このDVDは、そんな彼らが2005年10月29日に行ったワンマンライブの様子を収録したDVDである。ライブ自体は、かなりさまぁ〜ずのコント色の強いモノであり、アドリブも多く見受けられ、非常に面白いものだった。しかし、ここではヘローの歌詞世界について触れておこうと思う。
ヘローの書く詞は、非常に多種多様である。何をやるにもネガティブな先読みをしてしまう男の心境を描いた『心配性』、歌詞に登場する単語が何度も重複してしまうだけの『夜の夜霧』、海水浴に行こうと予定していた男の悲劇を歌った『海水浴へ行こう』など……歌詞の世界観は各種まったく違う。しかし、ただ一つだけ言えることがある。それは、ヘローの作詞には「客を笑わせる」という前提のみによって成立しており、歌詞としての構成は殆ど無視しているということである。先に紹介した『心配性』も、そういった性質の歌詞になっている。最初は「枕がいるなあ」「狸轢かなきゃいいなあ」などのような、あくまでも心配性であるということを前提とした歌詞作りになっているのだが、最後には「ぬいぐるみが無いと眠れない」という性分を「ぬいぐる症」と称し、語ってしまう。元々、コント内で結成されたバンドであるということが、そういった歌詞世界を作り上げてしまったのだろう。ただ、他人から提供された曲に関しては、ちょっと様相が違うように思う。恐らく、コントの世界を飛び出して、バンドとして活動するという意識がそういう世界を作り上げてしまったのだろう。元Something ELseの今井千尋が作曲をしている『トイレこの先左なの』『俺なんでもいいし』、元チューリップの財津和夫が作曲をしている『待ちわびて』などは、その傾向が強く見られる。日常に起こりうる事象を、ヘローの観点で見事に表現している。僕はこの三曲を聴いて、ふと全盛期の所ジョージを彷彿とした。なんでもない日常を、面白く切り出す。これから先、マイナスターズは所的な世界観を継承する唯一無二のバンドになりうるのではないか……とまで思った。しかし現在、マイナスターズはその活動を休止し続けている。もうCDを発売するようなことはないのだろうか。このまま消えゆくには、あまりにも惜しい。是非、またマイナスターズを復活させてもらいたいものだ……つっといて! 復活しなくて良いよー♪ ……いやいや、そんなことはない。復活、熱く希望する。その時は、『俺なんでもいいし』のプロモも欲しいナ。

・本編(LIVE)
『心配性』『自由』『CMソング1』『CMソング2』『ネガティブハート』『夜の夜霧』『ふたり』『海水浴へ行こう』『お前じゃないさ』『風』『You美容室』『クイズ好き』『前を向いて』『当たり前の歌』『デジタル時代』『トイレこの先左なの』『動物メドレー(エレファント〜キャメル〜バッファロー)』『待ちわびて』『しまうま』『俺なんでもいいし』〜アンコール〜『ジャララ』『ハト』『心配性』
・特典
MUSIC CLIP『心配性』『ジラフ』『バッファロー』『カバ』